与論島の野鳥 No76 霊長目ヒト科ムシ屋 (^o^)
「広報よろん」 平成8年(1996年)5月17日発行 第214号
・ヤツガシラ
科
方言名:
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異常と思えるほど低調だった冬鳥シーズン。
その埋め合わせをするかのように、春の渡りは賑わっている。
3月の末、ハヤブサが目の前を高速で横切っていった。
足で獲物を掴んでいた。
リュウキュウツバメがすぐ後を同じぐらいのスピードで追っていった。
ハヤブサの獲物は、そのリユウキュウツバメの片割れだったのかも知れない。
3月から4月にかけてはヤツガシラが各所で見られた。
立長の草地では3羽が一緒に虫をほじくり出して食べていた。
このようにまとまって見られるのは珍しい。
本土に住むベテランのバードウォッチャーの中にも、まだ見たことがないという方はざらで、羨望のメールが入ってきた。
数百羽規模のコムクドリの群れや、島での確認は2度目となるオオチドリも同じ頃見られた。
4月の末にはアマサギの大群がやってきた。
ダイゼンやセイタカシギといった中型のシギチドリ類、そして数年ぶりとなるヒドリガモの雄の姿も見られた。
もうすぐサンコウチョウやアカショウビンといった夏鳥もやってくる。
冬鳥が低調だっただけに、バードウオッチャーには待ち遠しかったシーズンの到来である。
昆虫の方でも今シーズンはすばらしい発見があった。
Tさんによってツマムラサキマダラの産卵が確認された(幼虫やサナギもその後確認された)。
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ツマムラサキマダラは南方系の美しい蝶で、ここ数年島でも数が増えつつある。
産卵が確認されたことで土着の可能性が出てきた。
まだ生息地域が限定されてはいるが、最もよく見かける場所で昨年の秋カウントしたところ全体の8パーセントを占めた。
本土の昆虫愛好家にも人気の高い蝶で、観光資源としても一役かってもらえるかも知れない。
土着が確実になり頭数が安定するまで、採集を控えることを提案したい。
霊長目ヒト科ムシ屋。
昆虫愛好家はたまに自らをこう呼ぶ。
普通の人とは人種が違うという自覚があるようだ。
たしかに昆虫愛好家にはマニアックな方が多い。
そんなムシ屋とトリ屋(バードウォッチャー)が遭遇すると決まって出るのが殺生論争。
ともに自然志向で最終的には保護が目的であるのは同じだが、アプローチの仕方に違いがある。
観察を主たる手段とするトリ屋と採集して標本を作ることを主たる手段とするムシ屋。
採集の是非から害虫駆除、果てはゴキブリ撲殺論争(とひとしきり展開したあと、一緒に路傍観察をしたりする。
なにはともあれ、トリ屋にもムシ屋にもいい季節の到来ではある。
(ヨロン野鳥友の会)
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