与論島の野鳥 No70 ブタは考えるか
「広報よろん」 平成7年(1995年)8月25日発行 第207号
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方言名:
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「ブタは考えるか」という話がある。
動物は本能だけで生きているわけではなく、さまざまな学習能力によって適応していることはすでに知られている。
ここで言う考えるとは意識があるかということである。
人間以外の動物も、意識経験を持っているのか。
思考や感情や情緒はあるのか。
自分をとりまく世界を自覚しているのか。
痛みの原因を意識する能力があるのか。
ドーキンズは、さまざまな実例をあげて他の動物にも意識があると説いている。
注 ドーキンズはおそらくリチャード・ドーキンス。
危険にあったことのあるスズメは、餌を見つけると仲間を呼び集めてから一勢に舞いおりて食べ始める。
餌を一人占めすることより危険を回避する方を選んだのだという。
群れが多いほど侵略者を事前に察知する確率が高くなる。
一方、見つけた餌が一羽分しかないならば、ある程度の危険を冒しても他の鳥を待たずに一人占めにしてしまう。
周囲のあらゆる要素を取捨選択し、いくつかの選択肢のどれを選ぶかという意味で、明らかに「意思決定」を行っているという。
ブチハイエナを研究しているクルークは、ガゼルやシマウマなどが、捕食者であるハイエナがすぐそばを通っても平然としていることに、非常に驚いたという。
しかし時によっては、はるか遠くにいるハイエナにもきわめて神経質になって、パニック状態で逃げ走ることがある。
単にハイエナがいるかいないかではなく、明らかに自分たちが危険にさらされているか、さらにどの種が狙われているかさえ、ハイエナの微妙な行動から読み取っているのだという。
こういった例は野鳥でも観察できる。
ツミとキジバトやヒヨドリが同じ電線に止っている光景はそう珍しいことではない。
ツミは与論島では生態系の頂点にありキジバトやヒヨドリにとっては捕食者である。
この時キジバトやヒヨドリは、ツミが彼等を襲う意志がないことをすでに察知しているように見える。
そして狙われていることを感じ取るとやはりパニック状態になる。
ドーキンズは、研究が次々と報告されるにつれて、大部分の人が想像していたよりも動物の行動は、はるかに「賢い」ものであることが証明されるという。
ところで、植えたばかりの苗を食い抜き、咲きかけた蕾を食いちぎり、挿し芽を引っ掻き出し、種を蒔いたプランターでは砂浴びをし、どんなに叱っても叩いても追い払っても、決して学習しない我が家のニワトリはいったい何なんだろう。
こいつらは絶対に賢くないと私は断言する。
(ヨロン野鳥友の会)
【参考】
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