与論島の野鳥 No64 サシバ | さすらいの風来簿

与論島の野鳥 No64 サシバ

「広報よろん」 平成6年(1994年)11月5日発行 第200号

 

 

 

・サシバ

     ワシタカ科

        方言名:ター  :方言名は風来坊が記入しました。

 

             * 写真のコピー、ダウンロードを禁じます。

 

 

今年のサシバの渡りはすごかった。
初認は10月6日。例年より一週間程遅かった。


その後悪天候のため目立った動きはなかった。


台風の影響が無くなった13日、天気図を見ていて必ず渡ると思った。


佐多岬を早朝飛び立ったとして追い風に乗れば夕方には第一陣が到着する。


そう予想して、島の北側が見渡せる場所へ見に行った。


渡りの時期によく観察に行く所で、いつだったか三脚を担いで歩いていたら、唐突に「海にですか」と、お婆さんに声をかけられてびっくりしたことがある思い出(?)の場所でもある。


あの頃はまだバードウォッチングは市民権を得ていなかった。
農作業中の人に、よくうさん臭い目で見られた。


カメラと双眼鏡をぶら下げて、畑や薮のまわりをうろついているのだから、変に思われても仕方がない。


たまに目が合うと「どーか」などと、なにがどーかなのか分らないが、島人(しまんちゅ)的暖昧さの象徴のような言語を発して、そそくさと逃げるように退散した。


奇人変人の類いに思われていたかも知れない。


友達ができない原因も、そのへんにあるのかなあ。
なんてことを考えながら待ったが、その日は渡って来なかった。


翌14日は、低い雲が空を覆いつくしていて今にも降りだしそうな天気だった。


予想は一日ずれていた。
昼過ぎから群れがぽつぽつと見えだした。


台風で足留めをくっていたのが一気に渡って来たのだろう。
群れは次々に渡って来た。


が、天気が思わしくなく視界も悪かったせいか先へは渡って行かない。


上昇気流に乗って鷹柱ができても、しばらくするとばらけて降りて来てしまう。

   :鷹柱は下の映像を参照してください。


あちこちでそれを繰り返していた。


北からは群れが次々にやって来る。
結果、どんどん溜まっていく。


夕方には、島中サシバだらけといった状態になってしまった。
これほど大量のサシバを見たのは初めてである。


後日、沖縄の伊良部島で8000羽を超える渡りがあって、一日の記録としては過去最高とのコメントがあった。


先日、怪我をしたサシバを見せてもらった。
一見してこれはもうだめだと思った。


「死んでいくのを見るのは辛いから引き取ってほしい」と言っていたが「たぶん明日の朝はもう死んでいるから、どこかに埋めてやって」と、お願いして断った。


何度か経験しているので気持ちはよく分かる。


数か月間リハビリを試みたアカショウビンが死んだ時は本当に辛かった。


二度とああいう思いはしたくないという気持ちもあったから。
                                              

                                                (ヨロン野鳥友の会)

 

【参考】  鷹柱

 

 

 

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