与論島の野鳥 No63 リュウキュウツバメ | さすらいの風来簿

与論島の野鳥 No63 リュウキュウツバメ

「広報よろん」 平成6年(1994年)8月1日発行 第197号

 

 

 

・リュウキュウツバメ

     ツバメ科

        方言名:

 

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4月の末、偶然巣作り中のセッカに出会った。


ススキかチガヤの穂らしい白い物をくわえ、茎の先で辺りを見回していた。


眺めていると、果たせるかな近くの草むらへ飛び込んで行った。


数分後に出て行ったあとを覗くと、イネ科の植物の葉を蜘妹の糸で編んだ作りかけの巣があった。


長居は無用と、その場を離れようとした時だった。


いきなりピィーッ、という鋭い声と同時に耳元で風を切る気配がして見上げると、リュウキュウツバメが飛び去って行くところだった。


そしてまたすぐにターンして猛烈な勢いで突っ込んできた。
それは鬼気迫るものがあった。


真正面から、突っ込んで来る奴と目があった時は恐怖すら感じた。


何度も何度も繰り返し攻撃してくる。


営巣中に観察していて威嚇されたことは何度かあったが、これほど執拗かつ猛烈に攻撃を受けたのは初めてだった。
 

近くに巣立ち雛がいたのかも知れない。


私の経験では、総じて野鳥の親は、巣に雛がいる時よりも巣立ち直後に最も神経質になっているように思う。


「おいおいそれは誤解だよ」と話して通じるような相手でもなさそうなので、早々に退散することにしたが、そこであることに気が付いた。


一定の距離を過ぎるとピタッと攻撃を止めて電線に止まるのだ。


このまま黙って引き下がったんじゃあバードウォッチャーの名がすたる。
奴らの警戒範囲を探ってみようと思った。


道具の持ち合わせがないので歩数から概算することにした。


雛は見つからなかったので推測で中心を決め、そこから歩数を数えながら攻撃の頻度と度合いを確かめつつゆっくり離れた。


およそ10メートル離れたところで攻撃はしなくなった。
さらに数メートル遠ざかると警戒の声も出さなくなった。


ツミやエリグロアジサシにも攻撃されたことがある。
野鳥に攻撃されるとバードウォッチャーは鳥肌がたつ。


いつどの方向から襲ってくるか分からない恐怖感とマゾヒスティックな期待感が入り混じった複雑な感情が、いつしか快感となり無意識にまた襲われたい、などと思ったりするのである。


そしてその欲求が満たされると鳥肌がたつ。


クマタカに襲われたという某ベテランバードウォッチャーが「あの時は殺(や)られるかと思ったよ」などと、背中の傷跡を見せながら淡々とした口調で喋ったという話は、今や伝説としてバードウォッチャーの憧れなのである。

                                               (ヨロン野鳥友の会)

 

【参考】

 

 

 

 

 

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