与論島の野鳥 No55 サンコウチョウ | さすらいの風来簿

与論島の野鳥 No55 サンコウチョウ

「広報よろん」 平成5年(1993年)6月21日発行 第188号

 

 

 

・サンコウチョウ

     カササギビタキ亜科

        方言名:

 

             * 写真のコピー、ダウンロードを禁じます。

 

 

6月4日は皆既月食があった。


月が地球の影を通り抜ける現象で、食の最大が午前4時だった前回に比べ、今回は9時過ぎには皆既食が始まる絶好の観察日だった。


明るいうちから撮影機材の手入れをして待っていたのだが、なんやかやあって結局見に出たのは9時少し前、セットして撮影を始めた時はすでに皆既食が始まっていた。


望遠鏡を出す余裕が無くて双眼鏡を使ったのだが、充分堪能できた。


双眼鏡の広い視野で見る赤茶けた皆既食中の月は、暗い宇宙にぽっかり浮かんだ未知の惑星を発見した時のC級SF映画のワンカットのような、幻想的で不思議な光景だった。


皆既月食の観望には8倍から10倍程度の双眼鏡でも、おもしろい。


9時半を少し回った頃、聞き覚えのあるするどい声が頭上を通過していった。


キャキャキャキャ、キャキャキャキャ。


夜中に何度も聞いている声だが姿は一度も見たことが無い。


声を聞いた次の日に、トッキョキョカキョクというホトトギスの囀りを聞いたことがあって、あの声の主もホトトギスではなかったかと思っているのだが、未だに確認できずにいる。


声はすれども姿は見えず、そんな鳥は他にもいる。


サンコウチョウもそのひとつだ。


夏鳥として5、6月頃渡ってきて子育てをする。


雄の尾は30センチにもなり、長い尾をひらひらさせて飛び回る姿はじつに優雅で、パラダイスフライキャッチャーという英名も頷ける。


バードウォッチャーにとっても、常に見たい鳥の上位にランクされる鳥なのだが、暗い林を好み生活のほとんどを薮の中で過ごすので人目に付きにくい。


昔、ヒィーツーフィホイホイホイと聞こえる囀りを、日月星ホイホイホイと聞いた粋な人があったそうで、三光鳥という名が付いたというのだが、島に来るサンコウチョウは、イーギー・ヒーチョオイホイホイホイと私には聞こえる。


訛っているのか耳がおかしいのか、どうしても日月星などとは聞こえない。


感性が欠乏しているのかもしれない。


サンコウチョウが子育てをするには広い薮が必要で、今年、声を確認できたのは2ケ所だけ。


数年前は4ケ所で声を聞き2ケ所で営巣を確認した。


年配の方に聞くと、昔は梅雨時にはどこででも声が聞けたという。


薮の減少に比例して、渡来数も確実に減少している。

                                               (ヨロン野鳥友の会)

  

【参考】

サンコウチョウのさえずり。

「日月星」と聞こえますか はてなマーク

 

 

 

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