与論島の野鳥 No52 キジ
「広報よろん」 平成5年(1993年)2月26日発行 第185号
・キジ
キジ科
方言名:
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最近よく、キジのことを尋ねられる。
「どこそこでキジを見た。」
「キジみたいな鳥がいた。」
「島にキジがいるのか。」といった内容だ。
詳しいことはわからないが、何年か前、バッタなどの害虫駆除が目的で、糖業振興会によって放鳥されたと聞いている。
先日、道路脇の草地で偶然2羽の雄キジにでくわした。
キジは縄張り性が強く、繁殖期には一羽の雄が数羽の雌を従えて、一定の縄張りを保持して生活する。
非繁殖期でも単独で行動するのが普通で、このように2羽の雄が一緒にいるのはきわめて珍しい。
2羽の雄キジは横に並んで歩いていたが、動きが異常にゆっくりしているうえ、どことなく不自然で、ただごとでないことはすぐに察しがついた。
50センチ程の距離を保ったままゆっくり歩いていたが、数メートル程行ったあたりから少しずつ接近していって、体が触れそうな距離になったとたん向き合って、そのまま動かなくなった。
双眼鏡で覗くと、嘴が触れそうな距離で、にらみあったままじっとしている。
張りつめた緊張感が、レンズを通して伝わってくる。
縄張り争いでもしているのか、どうも敵対しているらしい。
「こいつはいいや」と、見学させてもらうことにした。
しばらくにらみ合った後、今度は逆の方へ、やはりゆっくり歩き始めた。
このゆっくりとした動作は、すきあらば飛び掛かろうという体勢と、迎え討とうという気構えが均衡して、こういう動きになったと推察される。
数メートル平行移動すると、近づいて、またにらみ合う。
見学サイドとしては、激しい蹴り合いを期待したが、接触したのは一度だけ、それもちょっと飛び上がって、かるくぶつかっただけだった。
キジの争いは激しいと聞いていたが、こちらは静かな戦いだった。
放鳥鳥としての遠慮が有ったのかもしれない。
どう決着をつけるのか気になったが、いつ終わるとも知れない行ったり来たりに、いつまでも付き合っているわけにもいかず、見届けられなかったのは、いまもって残念だ。
自然界では、こういった同種間の縄張り争いはしょっちゅうあるが、それによって致命的なダメージを受けることは、ほとんど無いという。
万物の霊長を豪語する人間が、なぜそういった自然界の最低限のルールすら守れないのか、不思議でならない。
(ヨロン野鳥友の会)
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