与論島の野鳥 No48 アオサギ
「広報よろん」 平成4年(1992年)10月19日発行 第181号
・アオサギ
サギ科
方言名:
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十数年ぶりでアオサギを観察する機会があった。
与論島で見られる鳥の中では最大級で、かつて増木名池が健在だったころ、渡りの時期になると毎年きまって一羽か二羽やってきた。
増木名(ましきな)池:那間小学校の南東、図示したあたりにありました
ちょうど野鳥に興味を持ち始めた頃で、その大きさ優雅さに心を引かれ、滞在している間バートウォッチング仲間と、ほとんど通い詰めで見に行った。
周りにいるアマサギやチュウサギの群れを、睥睨(へいげい)するかのように佇む姿は、畏敬の念を覚えたほどで、それまで風景写真の引き立て役に甘んじていた野鳥を主役の座に押し上げたばかりか、益々バードウォッチングにのめり込んでいく原因ともなった鳥である。
近年は、自然の池が無くなったせいもあってか、滞在する様子は無かった。
今年も10月の初め頃から二、三度姿を見かけていたのだが、滞在場所を特定できずにいた。
そのうち何度か同じ場所で見かけるようになり、もしやと思い、振られ覚悟で入り江沿いの薮に潜んで待つことにした。
そして30分後、望遠レンズの視野の中で羽繕いをしていたクロサギが、突然緊張して身を縮めた。
と、同時にフワーっと大きな影が舞い降りてきた。
アオサギだ。しかもすぐ先の枯れ木にいる。
カメラを向ければおそらく迫力のある大アップ写真が撮れる距離なのだが、動けない。
ちょっとでも異常を感じたら、すぐにでも飛び立とうかという体制で、辺りを窺っている。
ここは我慢のしどころ。なにしろ十数年ぶりのチャンスなのだ。
不自然な姿勢のまま薮に同化する。
腰が痛くなる。
足が痺れる。
やぶ蚊がまとわりつく。
指先からでっかいアリが這い上がってくる。
緊張感が漂う中、永遠とも思えた20分程が過ぎて、ようやく安心したらしく、波打ち際に降りた。
ろくに鳥の名前も知らないまま、MさんやKさん等と増木名通いをした頃のことを思い出しながら、その優雅な仕草を堪能させてもらった。
すぐ近くでは耕地改良の工事が進んでいる。
薮が払われ、見通しがきくようになれば、ここもアオサギにとっては居心地の良くない場所になることは必至で、こうしてじっくり観察できるのも、これが最後かもしれない。
そんなことも考えながら、フィルム2本を使いきった。
(ヨロン野鳥友の会)
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