与論島の野鳥 No47 エリグロアジサシ
「広報よろん」 平成4年(1992年)9月21日発行 第180号
・エリグロアジサシ
カモメ科
方言名:
* 写真のコピー、ダウンロードを禁じます。
台風が近づくと、胃のあたりに不快感が生じる反面、非日常への期待感も少なからずあったりする。
規模やタイプ次第では、台風の日のバードウォッチングもまたけっこうおもしろいものがある。
ふだん島ではみられないような外洋性の鳥や珍しい水鳥等が、避難して来たり流されて来ることがよくある。
先の15号台風は、島を大きくそれてくれたおかげで、それなりに風はあるものの、雨が少なく時々薄日がさすような、まさに絶好のバードウォッチング日和だった。
そんなわけで、当然のごとく、Kさんを誘って出かけることとなった。
風上側の海岸沿いは時折10メートルを越える強風で、鳥影はほとんどなかった。
内陸部へ入ると、キビ畑に囲まれた小さな田んぽに、シギの群れが風を避けて餌を漁っていた。
アオアシシギ、イソシギ、キアシシギ、タカブシギ、それに最近では珍しいコアオアシシギ等、5種、15羽ものシギがひしめき合っていた。
風下側の海岸へ出てみた。
アジサシ類の群れが盛んにダイビングを繰り返していた。
海岸の近くでそんな行動が見られるのも、台風ならではの光景である。
その群れを突っ切るようにして、大型のアジサシが一羽通りすぎていった。
双眼鏡で捕らえたときには小さくなっていたが、セグロアジサシ若鳥の特徴をはっきりと確認することができた。
過去たった一度しか見たことのない珍しい鳥である。
隣の海岸にはベニアジサシ数羽と50羽程のエリグロアジサシの群れが風を避けて休んでいた。
エリグロアジサシは、7月頃渡ってきて島で繁殖する夏鳥である。
今年は台風の影響がほとんどなかったから、順調に巣立ちできたはずだ。
数年前、繁殖期間中に2度も台風に見舞われたことがあったが、その時巣立ったのはわずかに7羽で、巣立率16パーセント弱という悲惨な結果だった。
台風も、時期を選んで尚且つ被害が出ない程度に来てくれると、それなりに楽しめるのだが。
なんていうのは、ちょっと虫が良すぎるか。
今秋は天候にも恵まれ、シギチドリやサギ類も早々に渡ってきているようだし、そろそろタカの渡りも始まる。
バードウォッチャーには一年中で最も楽しみな季節になった。
(ヨロン野鳥友の会)
星の写真は、こちら に掲載しています。