与論島の野鳥 No46 クロサギ | さすらいの風来簿

与論島の野鳥 No46 クロサギ

「広報よろん」 平成4年(1992年)8月17日発行 第179号

 

 

 

・クロサギ

     サギ科

        方言名:

 

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クロサギは本州以南の海岸で普通に見られる黒いサギだが、南西諸島以南には白色タイプのクロサギが多くいる。


白いクロサギで、「まさしくさぎ(詐欺)だ」と言った人がいるが、元より人間がかってに付けた名前、詐欺よばわりは心外に違いない。


日本鳥学会の方の依頼で、クロサギの繁殖調査を手伝ったことがある。


クロサギは海岸の岩棚や岩穴、周囲が草で覆われた岩の窪地を利用して巣を作る。
そのため、外から巣内の様子を観察するのは難しい。


しかもボートで渡るか、干潮時に浅瀬を伝って歩いて行かなければたどり着けないような場所に営巣することが多く、そう頻繁に見に行くわけにもいかない。


そこで、あれこれ話し合った末、一度現地で巣の場所と巣内の状態を確認して、後は離れた場所から双眼鏡やフィールドスコープで出入りする親の様子を観察して、営巣の進行状態を判断しよう、ということになった。


現地調査は、かなりハードな作業だった。


調査の対象となった営巣へはボートで渡ったのだが、元々船は苦手であるにもかかわらず、揺られながら双眼鏡を使ったのがまずかった。


案の定強度の船酔に見舞われ、吐き気と頭痛に悩まされながらの調査となった。


さらに、不慣れなボート漕ぎと暑さで調査が終わる頃は全員ダウン寸前だった。


バード・ウオッチングは時にハードウオッチングにばけることを悟った。


時期が遅かったせいもあって、調査した8巣の内6巣は巣立った後だったが、進行中の2巣ではいくつかの興味深い観察があった。


ひとつの巣は、雛が黒1羽白2羽で、もうひとつの巣は、予備調査で確認していた4個の卵の内、黒1羽白2羽が孵化し、その内の白1羽は巣の外で死んでいた。


両巣とも親は黒と白の番(つがい)だった。
親の組み合わせとともに、雛の色比も興味深い。

 

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調査を依頼された医学博士でサギの生態研究家でもあった伊藤氏は、南西諸島からオーストラリアまで調査され、特に遺伝的な面から、黒白の比に焦点をしぼって研究されていた。


論文としてまとまったら送っていただく約束をしていたのだが、一昨年病気のため亡くなられたそうで現在助手の方が残されたデータを整理して発表する準備をしていると聞いている。


クロサギの生態は未知の部分が多く、専門家の間でも論文の発表が待たれている。
                                               (ヨロン野鳥友の会)

 

 

 

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