其の9 島の働き方  沖 道成 | さすらいの風来簿

其の9 島の働き方  沖 道成

琉球新報の「落ち穂」に寄稿したエッセイを、筆者のご厚意により、紹介させていただきます。
 
              「落ち穂」 掲載日:2017年5月11日
 
 
5月2日に今期の与論島の製糖が終了した。
 
搬入量は昨年比21・9%増、8期ぶり三万㌧台。
 
今期は大きな台風が直撃しなかったことも影響し、量・糖度もそろった豊作になったそうだ。
 
 
 
毎年3月末~4月中頃までで終わる製糖も、今年は5月まで製糖工場が稼働していて、私が記憶している中でもGW直前までキビを積んだ車が走っているのを見たのは初めてのことだった。

与論島でもキビ刈りの時期になると、家族や親戚はもちろん近所の人総出で畑仕事に取り組む。
 
 
 
いつもは会社勤めをしている人、主婦の人、それぞれ別々の顔を持つ人たちが、ひとつの畑で作業を行うのだ。

本業を行うかたわら、別の仕事を行ったり団体に所属したり複数のキャリアを並列してもつことを「パラレルワーク」というそうだ。
 
パラレルワークはピーター・ドラッカーが著書『明日を支配するもの』等にて提唱しているこれからの社会での生き方のひとつであり、注目を集めている概念である。

これまで日本社会での当たり前だった「終身雇用」から考えるとパラレルワークは新しい概念のように感じられるが、与論島の人たちにとっては、終身雇用よりもパラレルワークのほうが身近な概念なのではないだろうか。
 
 
 
与論の人たちの中には、出勤前や本職が終わった後に畑で一仕事している人、牛のお世話をしている人、商工会や各種団体の活動を行っている人も多い。

高物価・低所得という離島のハンディがあり、ひとつの仕事だけでは生活が安定しないという側面があるのは事実だが、そういった金銭的な面だけでなく、こういった働き方によって、ひとつの立場に捉われない視野を持つことができたり、広い視野や心のゆとりがうまれたりしているように思う。
 
与論島特有の人間味や、人との距離感はこのように育まれているのかもしれない。

島だから仕方ない生活スタイルではなく、こういった働き方を通して、精神的な充実や自己成長につながっていることに私たちが自信を持っていければ、さらに与論島の人間力があがり、多くの人たちに羨まれる島になっていくのではないだろうか。

 
 
 

沖 道成 (おき みちなり)
昭和59年、与論生まれ。ヤーナーは、『マチ』。
与論高校卒業(18歳)まで与論で過ごす。
大学・社会人を経て、平成23年に帰郷。
家業である与論の地主・琴平神社に神職として奉職する。
地域活動に参加しながら、生まれ島の魅力を再発見中?!
 
 
 
 

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