日本は「核兵器の共有」が実現する前に○○国軍に侵攻されるだろう | 野良猫の目

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アベ元首相が「核兵器の共有」を言いだし、高市早苗議員がこれに乗って浮かれている。さもありなんという光景なのですが、「核兵器の共有」と一言で言っても、具体的に誰はどのようなことをやるのかが政府によって説明されていません。むしろ外務省のサイトでは核兵器の不拡散での努力を強調しています。

 

それにも関わらず、ツイーターや新聞の記事で、核兵器の共有の中身について何も考えずに核兵器の共有が防衛のための決め手であるかのような発言を目にすると、なんとも不思議な気持ちになります。

 

直感的に「何か違うんだよな~」と思うので、私なりに妄想を膨らませ、何が違うの整理して見ました。正直なところ、私はこのことについて今まで考えたことがなかったので、どこまで的確な「絵」が描けているのか分かりません。

 

 

1.日本は核兵器を共有する前に侵攻される

核兵器の共有は、近隣の核保有国はとっては脅威以外の何ものでもありません。であれば、日本が米軍の核兵器を配備するのを指を咥えて見ていることはないでしょう。核兵器の共有を実現する前にこれを阻止する動きに出ると思います。核を保有する隣国が、まず日本の原発を爆撃し、ついで米軍が直接管理する基地のない北海道みたいなところに軍隊が上陸し○○共和国をデッチ上げて承認する。ウクライナのNATO加盟以前にロシアがウクライナに侵攻したケースから充分に考えられるシナリオです。

既にこのブログで何度も触れたことですが、日米安保条約や米国の憲法に照らし合わせてみれば、そんなときに米軍が前面に出て日本の国民とその国土を守る為に戦うなどと言う保証はありません。彼らが守るのは日本にある米軍の基地です。その為に必要な範囲でしか動かないと思います。日本に上陸した軍はそれを見越してこう言うでしょう。

我々が撤退するのは、日本から全ての米軍が撤退したときだけである

 

 

2.「核兵器の共有」と聞いた人達は、この言葉から何を想像したのだろうか。

まずは「共有」という言葉から想像される要素を具体的な項目に分解して比較してみました。

 

(1)戦略核か戦術核か?

とかく「核兵器」というと弾道ミサイルなどの戦略核をイメージする人が多いのではないかと思いますが、「敵の先制攻撃を抑止する。」という目的の戦略核を日本が独自に保有することは米国が許すことは決してないでしょう。日本が独自に管理する戦略核を持つことは、同時に米国にとっても“脅威”になるからです。

そのことを考えれば、アメリカが日本と“共有”することを許せるのは戦術核の範囲に止まると考えます。実際にNATOで“共有”されているB61は、航空機に搭載する戦術核兵器だそうです。

 

(2)核兵器の調達費用は誰が持つ

敢えて日本からの申し出によって核兵器を共有するとなれば、その費用は日本が持つことになるでしょう。仮に実際はアメリカが自国の経費節減のために日本に費用を負担させることが真の目的であったとしても、米国は、「日本の強い希望によって……」と、日本が共有を申し入れた形に繕うでしょう

 

(3)調達した核兵器は誰のもの?

share」という言葉の意味が日本語の「共有」という単語の意味とどの程度重なるのか分かりませんが、「共有」という日本語からすれば、少なくともその維持及び使用、負の分担、処分について対等な関係にある共有者の同意の下に対等に行われるべきものと考えていいのではないかと思います。

しかし、NATOの例からみても、日本語の「共有」のイメージからは「チョット違うんではないの?」という気がします。ちなみにニィーズウィーク日本版の記事では見出しに「共有(シェアリング)」という言葉を使ってはいるものの、本文中では共有という言葉を使わずに「シェアリング」という言葉を使っています。

日経の記事の安倍晋三が「欧州の一部が米国の核兵器を自国管理下に置いている『核シェアリング(共有)』政策に言及した。」という文が日経の記者の理解なのか、アベ元首相がそう言ったのか分かりませんが、「自国管理下に置いている」といえるレベルのものではないように思います。 

 

(4)核兵器の配置場所を誰が決めるのか、配備費用は誰が持つのか。

軍事関係において、日本は現在も米国の言いなりであることから、結局は米国が日本国内での配備場所を決めて、その費用は日本が負担することになるように思います。

 

(5)核兵器はだれが維持管理するのか。

現在の在日米軍がらみの事故処理の様子(小川原湖への燃料タンク投棄)などを見れば、核兵器の維持管理に関しては米軍が意思決定し、実際の作業は米軍の指揮の下に日本の費用負担で自衛隊が行うことが考えられます。

これは核兵器を使用するとなった場合にも言えることでしょう。自衛隊機に搭載した戦術核の発射を命令するのは米軍です。実際に発射するのは自衛隊員です。日本と核兵器を共有したお陰で、米軍は危険な仕事、汚れ仕事はみんな自衛隊に押し付けることができます。

 

(6)核が敵地のみで使われるとは限らない

「敵基地攻撃能力」などという言葉が喧しく言われている中で、シェアされた戦術核兵器が専ら敵地のみで使われるようなイメージが自然に浮かんで来ますが、戦術核の使い方を考えれば、日本国内で使用する場合も否定できません。例えば、日本の島嶼や沿岸に上陸した敵の部隊を目標に戦術核を使用することです。

 

(7)報復を受けるのも日本

外国を攻撃したら反撃(報復)されるとの前提で考える必要があります。

共有を謳って核兵器を使用すれば、相手国が日本を報復の対象とすることを正当化することになるでしょう。理屈の上では日本とアメリカの両国となりますが、極東で軍事衝突がおきれば、地理的な条件を考えたときには最初に日本を叩くというのが常道でしょう。

 

(8)水面下の持ち込みと何が違うのか

「既に核兵器は暗黙の了解の下に日本に持ち込まれているのだから何も変わらない」という人がいて呆れています。そこで、上の表に「現在の水面下での持ち込み」という項目をいれてみました。

実際に水面下で核兵器が持ち込まれているのかどうかは確かめようがないのですが、例え既に水面下で核兵器が持ち込まれていたとしても、いままで「秘密だったことが公のことになる」ことによって、周辺国の日本に対する姿勢が変わることは間違いありません。国内政治の面でも、核兵器の配置、維持管理に係る負担についても、米国は“堂々と”日本政府にその負担を要求するでしょう。

 

「核兵器の共有」は、結局は、米軍が日本国内で核装備をすることを正当化し、今まで以上に日本国民の負担を増やし、日本本土が周辺国から核攻撃の対象となる危険性を拡大するだけのものでしかないようです。

 

 

3.アベ元首相の真意はどこにある。

首相の地位にあった者が、上のようなことについて何も考えないことはないと思うのですが、であれば、次の疑問は、何故アベ元首相はこの期に及んで核兵器の共有などという日本側にメリットがあるとは思えないことをほざいたのかということになります。

私の頭では、

①兎に角目立って注目を浴びたいという幼児的思考から、

根っこからの米国信者でウクライナ/ロシアの紛争を奇貨として米軍軍備の日本配置を拡大させて、より強固な米国のための防波堤(不沈空母)としたいから

岸信介以来の密約の血脈故に裏で米軍筋から要求(命令)されて断れないから

④親戚、縁者が所属している軍事関連産業を儲けさせたいから

……など、不謹慎な出まかせしか思い付きませんが、仮に、アベ元首相が本当に何が目的なのでしょう。少なくとも、日本国民の利益を真に考えているようには思えません