フェミニスト労働組合を労働組合と呼んで良いのだろうか? | 野良猫の目

野良猫の目

~本当は寝ていたい~

 

【青色の文字にはリンクが貼ってあります。】

 

フェミニスト労働組合」なる名前が目に飛び込んできました。

 

労働組合といえば労働組合法に規定する労働組合しか考えたことのない私には、このバナーの意図するところが理解できません。また、記事を読んだところ、「#主婦休みの日」、「#女よ休もう」、「#女を分けるな」というハッシュタグがあり、また支援者と思しき人が「その日は私たち休もう! 有給取って、家事も仕事も男への笑顔やセックスからも撤退しようよ。女たちは分断されないぞ!」と返信しています。

 

労働組合は職場におけるジェンダー問題に目を向けて運動すると同時に、家庭や社会に対する労働者の責任にも注意を払うべきだと私は考えてきました。女子差別撤廃条約で謳っているとおり、「両親が一方の天秤皿に家庭に対する責任を置き、他方の天秤皿に職業上の責務と社会的活動への参加との二つを置いて、この天秤を平衡させることができるよう政府が支援する(同条約第11条第2項()の趣旨)」ことが必要と考えていたからです(参考欄参照)。しかしフェミニスト労働組合のツイートへの返信にある「家事も仕事も男への笑顔やセックスからも」のように、別々の皿に乗せるべき家庭に対する責任(家事はその一つ)と職業上の責務(仕事)を一緒くたにしてストライキの対象として扱っているのを見ると、“比喩”の範囲を超えて不見識というしかありません。

 

このようなツイートの内容を見ると、この団体が本当に労働組合法第2条の労働組合にあたるのだろうか、むしろ同法第2条但し書きの第4号に掲げる“労働組合とはならないもの”である「主として政治運動又は社会運動を目的とするもの」ではないのかという疑問が湧いてきます。

 

 

過去に、国鉄関係の一部の労働組合が労働運動の矩を超えて行動したために国鉄の労働者の間に分裂と対立を引き起こし、当時の自民党政権によって労働運動全体に対する敵対的な、かつ、労働運動全体が社会悪であるかのようなプロパガンダが行われて、やがては労働運動全体の沈下を引き起こした歴史を目の当たりにした私には、もしかすると、「フェミニスト労働組合」が“労働組合”を名乗ることは、かえって女性たちの分断を呼び、男女を問わず地道に職場でのジェンダー平等の実現を目指してきた労働組合員の人たちの足を引っ張ることになるのではないかと心配になります。

 

 

 

【参考】女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約 (略称:女子差別撤廃条約) 

第11条第2項(c)

2  婚姻又は母性を理由とする女子に対する差別を防止し、かつ、女子の労働の実質的な権利を確保するため、締結国は、次の措置を適切にとらなければならない。

(c)両親が、家族への責任と、職業上の責務及び社会的活動への参加とを両立させることを可能とすることを支援するのに必要な社会的サ-ビスの提供を、特に保育施設網の設置及び拡充を促進することにより、奨励すること。 

(翻訳:当サイトの管理人による。外務省の翻訳と異なるところがあります。)