蓋をするほど吹きこぼれる従軍慰安婦問題 -先の世代に謝罪の運命を背負わす安倍首相- | 野良猫の目

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時事通信によれば、10月17日に米国のアナンデールで従軍慰安婦像の設置に向けた起工式が行われたそうです。

 

このようなニュースを聞くたびに、アベ首相が戦後70年の談話で言った「……その先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」は、全くの口から出任せであり、実際には何も実行されてはいないのではないかと、腹立たしさが募るばかりです。

 

 

○ 「水に流す」は日本だけ、「Remember~」、「Never Forget」が世界標準?

身近でも、日韓問題について「ことあるごとに蒸し返されて……」とうんざりした口調で話すのを聞きます。

日本人の場合は、「過去のことは水に流してゼロから将来に向けて友好関係を作って行きましょう」というのを“未来志向”と呼んでいるように思いますが、このような“過去を水に流す”考え方は、日本人特有のものではないかと感じています。

 

Remember Pearl Harbor.」という言葉があるように、受けた屈辱は子孫まで語り継ぐのが、日本以外では当たり前のように思います。子供のころ、中国の蒋介石について「以徳報怨」とか、「蒋介石恩義論」というような話を大人同士(私の親の世代)の話で聞いていましたが、今、考えてみれば、対共産党政府の戦略的視点から出てきたものであり、決して日本政府(と当時の財界)がやった罪を赦免するものではなかったように思えます。

この考え方からすれば、過去のことは水に流して(忘れたことにして)、ということでは、 日本の国民とその政府は、“未来志向に向けたスタートライン”には永遠に立てないように思います。

 

 

○ では、何をどうするのか

未来志向へのスタートラインには立つには、次の三つが必要だと考えます。こうして日本政府が、過去の事実を正しく認識し、それを適切に評価し、その反省を元に未来に向けた行動を取るということがなければ、国際社会では信用されないでしょう。

 

① 過去の事実を客観的、網羅的に把握する

余計な評価を交えずに、いつ、どこで、誰によって、何が行われたのかを“可能性(仮説)”と相手方の主張を含めて、網羅的に記録する。その上で、それぞれについてエビデンス(相手方が提示するものを含める。)に基づき検証を行う。エビデンスには「一方当事者が主張する事実を否定するのに十分なエビデンス」を含む。エビデンスがない場合はエビデンスを探した範囲と見つからないことの原因と思われることを付記する。

 

② 事実について、国際的に通じる概念で評価する

  ①の事実について、日本国民として、日本政府として、どのような評価をするのかを明らかにする。この際、国際的な基準で評価し、通常の社会生活で使用される表現をもちいること。国内あるいは政府機関内でしか通用しない言葉への置き換えはしてはならない。

 

③ ①と②を可視化して、後世に引き継ぐための措置を講じること

仮に、日本政府、日本国民の行為に非人道的なものがあった場合には、それについて 日本国民がそれらの事実を容易に知りうる施設を作り、これを恒久的に維持する。例えるならば、第二次世界大戦の資料館を国が設置者となって作るなどし、そのなかで、第二次世界大戦に関連して行われた非人道的な行為についても展示するなど、誰もがアクセスできるようにする。

 

広島の原爆死没者慰霊碑と長崎の平和祈念像そして全国に散らばる追悼施設、また総務省が委託しているとされる平和祈念展示資料館などは、いずれも国民を被害者の立場で捕らえているように思います。もし、日本政府、日本国民(法人を含め)の行為に加害者としてのものがあったのであれば、これらと対等に資料館を作るなど、可視化して後世に引き継ぐ施設をつくらなければ、外国から信頼されることはないと思います。

 

従軍慰安婦の問題を例に取れば、いわゆる河野談話が外務省のウェブサイトで公表されていますが、その後、これを撤回ないしは矮小化しようとする動きがあるとして、2007年年7月の米国下院の決議(決議No.121)(※)の中でも非難されています。また最近の外務省が公表している資料(※※)からも同じ動きが読み取れます。そして、このような日本政府の姿勢は、「日本は反省しない国、信用ならない国」という外国の評価を招くと同時に、だからこそ、継続的にその責任を追及し続けなければならない。」という相手国の人々の行動を生むのでしょう。

※:ここでは、アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(wam)のサイトのページ(日本語に翻訳)にリンクしています。原文は米国政府のサイトでご覧いただけます。

※※:ここでは、アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(wam)のサイトのページにリンクを張ってあります。外務省でも関係する資料は公開していますが質問は記載されておらず、杉山外務審議官の発言概要だけが記載されています(要は、政府にとって不都合な部分は出していないのです。興味のある方は、上の「杉山外務審議官の発言概要」のところをクリックしてください。)。

 

上の③のような施設を作り、これを後世に引き継ぐことは、国民にとっても辛いことでが、敢えてこれを行わなければ、後世に禍根を引き継ぐだけのこととなると思います。

 

 現在のアベ政権の姿勢が引き継がれていけば、私たちの子の世代、孫の世代、そしてその先の世代も、永遠に謝罪を続けなければならないでしょう。その宿命を背負わせているのは、アベ首相、あなたなのです