仏教における悟りを開く方法を解説していきます。いくつか種類がありますが、菩薩五十二位と言うものを解説していきます。
十信
- 願心(がんしん)
- 十方諸仏の浄土に往生せんと願う心。戒に住して自在なるがゆえに、よく十方に遊戯し、その所作がことごとく願に随うこと。
- 戒心(かいしん)
- 戒を遵守する心。三学の一である戒学。心、光密に廻すれば無為に安住して失うことがないこと。
- 廻向心(えこうしん)
- 仏果を得んとして修行に全力を尽す心。覚明保持すれば、よく妙なる力を以って、仏光廻照を観じ、また仏に向かい安住すること。
- 護法心(ごほうしん)
- 仏法を守らんとする心。心進安寧なれば一切仏法を保持して失わず、十方如来と気分(けぶん)交渉すること。
- 不退心(ふたいしん)
- 三学の定学と慧学を以って退堕しない心。定光発明すれば明性深く入り、ただ進むのみを知り、退かないこと。
- 定心(じょうしん)
- 静かで動揺しない心。三学の一である定学。智明を執持して周囲を遍く寂湛し、つねに心を一境に凝らすこと。
- 慧心(えしん)
- 智慧を研く心。三学の一である慧学。心精が現前すれば純真の智慧が自然に発起すること。
- 精進心(しょうじんしん)
- 煩悩を雑えず、精明に仏界に進趣する心。妙円純真なる精明を以って真浄に進むこと。
- 念心(ねんしん)
- 教法を憶念する心。真信明了にして一切に円通し、あまたの生死を経過するとも、現前の習気を遺失忘失しないこと。
- 信心(しんしん)
- 教法を信じる心。一切の妄迷を滅尽し、中道を了知し純真なること。
十住
- 灌頂住(かんじょうじゅう)
- 空・無相の理を観じ、無生智を得る。菩薩が既に仏子(仏の弟子)となり、仏の事業を為すに堪えうれば、仏は智水をもってその頂に灌(そそ)ぎ給うこと。インドの国で皇子が成長し国王たらしめる時に海水を頭頂部に灌ぐ如くであることに由来する。
- 法王子住(ほうおうじじゅう)
- 仏の教えに遵い、智解を生じて未来に仏位を受ける位。
- 童真住(どうしんじゅう)
- 迷い、謬見(びゅうけん、誤った考え)を起こさず、菩提心を破らざることが、童子が無欲真正なるに等しくして、仏の十身の霊相を一時的に備える。
- 不退住(ふたいじゅう)
- 心身ともに合成して、日々益々増長し退堕することがない。空無性の理を証して空・無相・無願の3つの三昧より心が退かない位。
- 正心住(しょうしんじゅう)
- 相貌のみならず、心相も仏と同じくする。般若の空智を成就する位。
- 具足方便住(ぐそくほうべんじゅう)
- 無量の善根を具えて空観を助ける方便とする。仏と同じく自利・利他の方便力を具備し、相貌において欠くることがない位。
- 生貴住(しょうきぞくじゅう)
- 正しく仏の気分(けぶんと読む)を受けて、彼此冥通して如来種に入る。法無我の理に安住して種性清浄なる位。
- 修行住(しゅぎょうじゅう)
- 前に地を渉知し、倶に明了なるがゆえに、十方に遊履して留礙なく、万善万行を修する位。
- 治地住(じちじゅう)
- 瑠璃の中に精金が現れるように、心の明浄が前の妙心を以って履修治して地となることをいう。常に空観を修し、心地を清め治める位。
- 発心住(ほっしんじゅう)
- 真方便を以って十住心を発起し、十信の位の従仮入空観の観法を完成し、真無濡智を発(ほっ)し、心が真諦の理に安住する位。
十行
十行(じゅうぎょう)は、菩薩が修行して得られる菩薩五十二位の中、下位から数えて第21番目から第30番目の位をいいます。
真実行(しんじつぎょう) 智慧波羅蜜を修行し、諸仏の真実の教えを学び、前の円融の徳相がすべて清浄無漏にして、一真無為の性が本来は恒常なるを観じ、衆生を済度する行。
善法行(ぜんぽうぎょう) 力波羅蜜を修行し、円融の徳相が十方諸仏の軌則を成じ、十種の身となって一切の衆生を利益する行。
尊重行(そんちょうぎょう) 願波羅蜜を修行し、前の種々現前はすべて般若観照の力であることから、六波羅蜜の中でも特に般若を尊重して一切衆生を度し、無上の菩提を成就させる行。難得行ともいう。
無著行(むじゃくぎょう) 方便波羅蜜を修行し、十方虚空に微塵を満足し、そのすべてに十方界を現じ、一切の執着を離れ、しかも一切の世間に随順する行。
善現行(ぜんげんぎょう) 般若波羅蜜を修行し、前の離癡乱をして、よく同類の中に異相を現じ、また一々の異相にそれぞれ同相を現じ、同異円融なるを観じ、一切が無相であることを智慧で観じる行。
離癡乱行(りちらんぎょう) 禅定波羅蜜を修行し、種々の法門が不同なりといっても、一切合同して差別誤解なきことを観じる行。
無尽行(むじんぎょう) 精進波羅蜜を修行し、衆生の機根に合わせてその身を現じ、三世(過去現在未来)が平等にして十方に通達し利他行が無尽なるを観じる行。
無瞋根行(むしんこんぎょう) 忍辱波羅蜜を修行し、たとえ刀杖で身に危害を加えられようとも耐え忍び、自覚覚他すれば違逆せんとする行。
饒益行(にょうやくぎょう) 戒波羅蜜を修行し、衆生と共に無上の学道を成就して、一切衆生を利益し潤す行。
観喜行(かんぎ、かんき・ぎょう) 布施波羅蜜を修行し、仏子となった菩薩が、仏如来の功徳を以って十方に随順せんとする行。
十廻向
- 入法界無量廻向(にゅうほうかい・むりょう・えこう)
- 法界に等しい無量の仏を見(まみ)えて、無量の衆生を調伏し、この善根を以って一切の衆生に廻向する菩薩。
- 無縛無著解脱廻向(むばく・むじゃく・げだつ・えこう)
- 一切の善根を軽んぜず、相に縛せられず、見に執着しない解脱の心を以って善根を回向する菩薩。
- 真如相廻向(しんにょそう・えこう)
- 修するところの善根を真如に合わせて廻向を完成する。真如相に如(かな)うて真如の如く廻向の行を修する菩薩。
- 等心随順一切衆生廻向(とうしんずいじゅん・いっさいしゅじょう・えこう)
- 無量の善根を修習し、衆生のために無上の福田となり、衆生を清浄ならしめ廻向する菩薩。
- 随順一切堅固善根廻向(じゅうじゅん・いっさいけんご・ぜんこん・えこう)
- 入一切平等善根廻向ともいう。一切の施行を説き、清浄の布施を詳説し回向する菩薩。
- 無尽功徳蔵廻向(むじんくどくぞう・えこう)
- 一切の善根を廻向して、この廻向によって十種の無尽功徳の蔵を得て、一切の仏刹を荘厳する菩薩。
- 至一切処廻向(しいっさいしょ・えこう)
- 善根を修し、その善根の功徳の力を一切処に至らしめ廻向する菩薩。
- 等一切諸仏廻向(とういっさい・しょぶつ・えこう)
- 三世(過去現在未来)の諸仏の所作を学し、その通りに衆生を廻向する菩薩。
- 不壊廻向(ふえ・えこう)
- 三宝において不壊の信心を得て、この善根を以って廻向を成する菩薩。
- 救護一切衆生離衆生相廻向(くごいっさいしゅじょう・りしゅじょうそう・えこう)
- 十廻向の初地・始位。一切衆生を救護しながら、しかも衆生を救護する執着を離れる菩薩。
十地
十地(じっち、じゅうじ)は、菩薩が修行して得られる菩薩五十二位の中、下位から数えて第41番目から第50番目の位をいいます。
- 法雲地(ほううんじ)
- 智慧波羅蜜を成就して修惑を断じ、無辺の功徳を具足して無辺の功徳水を出生して虚空を大雲で覆い清浄の衆水を出だすためにいう。平等の原理と差別の人間とが一体となった、平等即差別、差別即平等の真如の世界。
- 善想地(ぜんそうじ)
- 力波羅蜜を成就して修惑を断じ、十力を具足し一切処において可度不可度を知り、よく説法する位。一切の修行を完成した大慈大悲の菩薩が、真理の世界から具体的な事実の世界に働きかけ個々差別の衆生を救済する。
- 不動地(ふどうじ)
- 願波羅蜜を成就して修惑を断じ、無相観を作(な)し、任運無功用に相続する位。大慈大悲の心を起す。
- 遠行地(おんぎょうじ)
- 方便波羅蜜を成就して修惑を断じ、大慈悲心を発し二乗の自度を遠離する位。十十無尽の境地に入る。この位は第二阿僧祇劫の行を終えたとする。
- 現前地(げんぜんじ)
- 智慧波羅蜜を成就して修惑を断じ、最勝智慧を発し染浄の差別なきを現前せしめる位。不退転の位で決して後戻りせず、必ず仏になる確信を得る。
- 難勝地(なんしょうじ)
- 極難勝地ともいい、禅定波羅蜜を成就して修惑を断じ、真俗二智の行相互いに違異なるを和合せしめる位。四諦の法門の外に大乗の法門を学び、利他行に取り組む。
- 焔光地(えんこうじ)
- 焔慧地ともいい、精進波羅蜜を成就して修惑を断じ、智慧を熾盛に光らしめる位。個々の物に対する執着心を離れ、その功徳として四方を照らす。
- 発光地(はっこうじ)
- 忍辱波羅蜜を成就して修惑を断じ、諦察法忍を得て智慧を顕発する位。精進の結果、その功徳として光を放ち十種の法明門を行う。
- 離垢地(りくじ)
- 戒波羅蜜を成就して修惑を断じ、毀犯の垢を除き清浄ならしめる位。十の善を行い、心の垢を離れる。
- 歓喜地(かんぎじ)
- 菩薩が既に初阿僧祇劫の行を満足して、聖性を得て見惑を破し、二空の理を証し大いに歓喜する位。仏法を信じ、一切衆生を救済しようとの立願を起こし、ついには自らも仏になるという希望を持ち歓んで修行する。
等覚
等覚、等覺(とうかく、とうがく)とは、菩薩が修行して到達する階位(菩薩五十二位)の52位の中、下位から51番目に位置する菩薩の極位をいいます。その智徳が略万徳円満の仏である妙覚とほぼ等しく、一如になったという意味で等覚といいます。
三祇百劫の修行を満足し、まさに妙覚の果実を得ようとする位。一生補処、有上士、金剛心の位といわれます。
