あみは週に1回30分、放課後等デイサービスでピアノを習っています。

といっても、今までは、好きな曲をいくつも楽譜にしてもらうも身が入らず、先生とおしゃべりしたりふざけたりして時間が過ぎてしまっていました。

曲目はたいていアニメ『名探偵コナン』のオープニング、エンディング、映画の主題歌です。

最近、そのコナンのエンディングが灰原哀ちゃんをモチーフにした『Sissy  Sky』という、曲も詞もアニメの中の哀ちゃんの心情をよく表している素敵な曲で、あみは瞬時に気に入ってしまい、次のレッスンで楽譜をお願いしました。

そして、楽譜ができてからというもの、レッスンはやっと普通のピアノのレッスンのようになりました。それも両手で。更に、なんと家でも練習しています。『Sissy Sky』はとても切ないけどカッコいい曲です。先生が作ったピアノだけのアレンジはもっとカッコいいものです。

頑張って練習しているので、あみもだんだんサマになって来ています。これからが楽しみです。

ピアノのレッスンは30分。前と後にそれぞれ別の子がお母さんと一緒に来ています。前の男の子のお母さんはとても社交的でグイグイ来るタイプなので、すぐ話をするようになったのですが、後の女の子Rちゃんのお母さんは控えめな感じで、私も自分から積極的に行くタイプではないのでなかなか話をすることもありませんでした。

ごく最近になって、たわいのない天気の話(そのくらいの話は振ります)か何かから、一歩踏み込んだ話になったことがありました。

そこから、Rちゃんのお母さんと、いろいろな話をするようになりました。お互いの子供の障害のことや小さい頃、障害がわかったときのこと、困っていること、などなど。

もっとも、話をしているのは主にRちゃんのお母さん。一つ話題があると、それについてどんどん話し続けます。私は自分が自分の話をするのが大好きすぎるので、つい自分の話になってしまわないよう気をつけて、聞き役に回るようにしています。

年齢は違うけど同じ発達障害の子の親同士、同じような道を通り同じような経験をしてきたわけで、自分が話さなくても相手が話すことは自分のことのようだし、違う経験の話でも共感することができます。

あみのレッスンが終わってRちゃんがピアノの前に座っても、お母さんの話は終わらなかったりします。そんなとき、あみは黙って私たちの視界に入らないところで待っています。少し前なら、割って入って、
「早く帰ろう」と私を引っ張っていくところだったと思います。

教室を出て、
「ごめんねー、待たせちゃったね」
と言ったのですが、遅いよーとか言われると思ったら、
「ランチ、行ったら?」
と言います。

もう待たされたくないから、というわけでもなさそうです。

確かに、Rちゃんのお母さんとランチに行くのは楽しそうです。まだ連絡先も知らないので、ここからどうすればいいのか、社交下手の私にはよくわからないのですが。

それにしても、あみがこんなふうに言われなくても大人同士の話が終わるまで大人しく待つことができるようになるなんて、本当に驚きです。