16歳の天才が描く大オペラ『ルーチオ・シッラ』K.135について
1. 概要と作曲の背景
『ルーチオ・シッラ』は、1772年に作曲された全3幕からなる「オペラ・セリア(正歌劇)」です。台本はジョヴァンニ・デ・ガメッラが執筆し、有名な台本作家ピエトロ・メタスタージオが改訂を加えました。
本作はモーツァルトがイタリアのミラノ向けに作曲した3番目のオペラ(『ポントの王ミトリダーテ』『アルバのアスカーニオ』に続く作品)であり、彼にとって「最後のイタリア向けオペラ」となりました。1772年12月26日にミラノのテアトロ・レージョ・ドゥカーレで初演され、中程度の成功を収めました。*前二作ほどではなかった模様
2. 登場人物
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ルーチオ・シッラ(テノール):ローマの独裁官(ルキウス・コルネリウス・スッラがモデル)。
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ジューニア(ソプラノ):シッラの政敵マリウスの娘。チェチーリオの婚約者。
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チェチーリオ(ソプラノ/初演時はカストラート):追放されたローマの元老院議員。ジューニアの婚約者。
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ルーチオ・チンナ(ソプラノ):ローマの貴族でチェチーリオの友人。シッラ暗殺を企てる。
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チェーリア(ソプラノ):シッラの妹。チンナに恋している。
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アウフィーディオ(テノール):護民官でシッラの友人。
3. あらすじ
舞台は紀元前1世紀のローマ。
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第1幕:独裁官シッラによって追放された元老院議員のチェチーリオが、密かにローマへ戻ってきます。親友のチンナから「シッラがチェチーリオは死んだと嘘をつき、君の婚約者ジューニアに求婚している」と知らされます。チェチーリオは英雄たちの墓所でジューニアと感動的な再会を果たし、二人は愛を確かめ合います。
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第2幕:シッラはジューニアに結婚を迫りますが、彼女は頑なに拒絶します。怒ったシッラは彼女を力ずくで妻にし、チェチーリオを処刑しようとします。チンナとチェチーリオはシッラの暗殺を企てますが失敗し、チェチーリオは捕らえられて投獄されます。
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第3幕:死を覚悟するチェチーリオと、彼に殉じようとするジューニア。しかし、結末でシッラは突如として心変わり(寛大さの顕現)を見せます。彼は自らの罪を悔いて独裁官の座を退き、すべての政敵を赦免し、チェチーリオとジューニア、そしてチンナと妹チェーリアの結婚を認めて、物語は大団円を迎えます。
4. 音楽的特徴と聴きどころ
本作は、16歳の若きモーツァルトが当時の最高の歌手たちのために書いた、高度な技巧を要するアリアの宝庫です。
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名歌手のためのアリア:チェチーリオ役は、後にモーツァルトが名作モテット『踊れ、喜べ、幸いなる魂よ(エクスルターテ・ユビラーテ)』を捧げることになる名カストラート、ヴェナンツィオ・ラウッツィーニが歌いました。また、ジューニア役は当時最高峰のプリマドンナ、アンナ・ルチーア・デ・アミーチスが務め、彼女のために書かれたアリアは非常に劇的でコロラトゥーラの技巧が極まっています。
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墓所のシーン(第1幕後半):本作最大の聴きどころです。管弦楽伴奏付きレチタティーヴォと合唱を交えたこのシーンは、後の『イドメネオ』や『ドン・ジョヴァンニ』を彷彿とさせる、暗く劇的で緊迫感に満ちた音楽となっており、モーツァルトの天才的なドラマ構築力がすでに開花していることを示しています。
『ルーチオ・シッラ』序曲
1. 概要と楽曲の位置づけ
『ルーチオ・シッラ』の序曲は、オペラの開幕前に演奏される器楽曲ですが、単独の管弦楽曲(シンフォニア)としても頻繁に演奏・録音される非常に人気の高い作品です。
形式としては、当時の典型的な「イタリア風序曲(急・緩・急の3楽章構成)」を踏襲しています。独立した交響曲のような構造を持っているため、演奏会では単体の交響曲のように扱われることもあります。
2. 楽器編成
オーボエ2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦五部という、当時の祝祭的なオペラにふさわしい華やかな編成です。トランペットとティンパニが加わることで、ローマの独裁官という威圧的で壮大なテーマにふさわしい響きを生み出しています。
3. 各楽章の解説
全3楽章からなり、演奏時間は通して約8分程度です。
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第1楽章:モルト・アレグロ(Molto allegro)
ニ長調、4/4拍子。輝かしくエネルギッシュな楽章です。ティンパニとトランペットを伴う力強い和音で幕を開け、弦楽器が駆け上がるような躍動感あふれる第1主題を奏でます。オペラの始まりにふさわしい、劇的な高揚感と祝祭的な雰囲気に満ちた堂々たる音楽です。 -
第2楽章:アンダンテ(Andante)
イ長調、2/4拍子。第1楽章の熱狂から一転し、弦楽器とオーボエが中心となる優美で抒情的な楽章です。トリルやスタッカートを交えた繊細な旋律が特徴で、オペラ本編における登場人物たちの愛や悲哀、心の機微を前もって暗示しているかのようなしっとりとした美しさを持っています。 -
第3楽章:モルト・アレグロ(Molto allegro)
ニ長調、3/8拍子。非常に軽快で風通しの良い、舞曲風のフィナーレです。弦楽器の細やかなパッセージと管楽器の相の手が心地よく交錯し、オペラのハッピーエンド(シッラの寛大さによる大団円)を予告するかのように、喜びに満ちた明るいエネルギーのまま一気に駆け抜けます。
【補足:交響曲としての『ルーチオ・シッラ』】
この序曲は「交響曲 ニ長調 K. 135+61h」として知られる異稿が存在します。これは、急・緩・急の3楽章からなるこの序曲の第2楽章と第3楽章の間に、別のメヌエット(K. 61hの第3曲)を挿入して、伝統的な交響曲と同じ「4楽章構成」にしたものです。モーツァルト自身、あるいは近しい人物が演奏会用の交響曲として転用するために手を加えたと推測されています。
DTM制作ノート
この序曲はシンフォニーとして成り立つ三楽章制になっています。いろんな演奏を聴いてきましたが、私の好みははっきりしていて、速めのテンポで溌溂とした疾走感を出しつつ、アクセントは強めの演奏です。モッタリした演奏を聴くとつまらない曲に聞こえてしまっていました。
私が制作するにあたってあえて参考にした演奏はなく、自分の好みの感覚を重視しました。
【DTM】モーツァルト/歌劇『ルーチオ・シッラ』,K.135-序曲
Programming Music:
W.A.Mozart : Overture to “Lucio Silla”, K.135
Programed by: Hummel Note
DAW & Sequencer: Dorico Pro
Sounds: NotePerformer
Thumbnail images: Generated by Google AI
