英雄の悲劇と勝利のファンファーレ~ベートーヴェン「エグモント序曲」 | クラシック音楽とお散歩写真のブログ

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クラシック音楽の中でも、特にドラマティックで心を揺さぶる一曲を挙げるとすれば、多くの人がベートーヴェンの「エグモント序曲」を思い浮かべるのではないでしょうか。私の大好きな曲です。前回の「コリオラン序曲」に続いてベートーヴェンのDTMに取り組みました。

Programming Music
Programed by Hummel NoteL.v.Beethoven/Egmont Overture,Op.84
Daw&Sequencer:Dorico5
Sounds:NotePerformer5

わずか8分ほどの短い時間に、重苦しい絶望から輝かしい希望へと駆け上がる、壮大な物語が凝縮されています。今回は、この不朽の名作が、どのような背景から生まれ、何を表現しようとしているのかを紐解いていきましょう。


ゲーテの悲劇とベートーヴェンの魂が共鳴した時代

この序曲が作曲されたのは1810年。当時、ヨーロッパはナポレオン戦争の真っ只中にあり、ウィーンもフランス軍に占領されていました。そんな息苦しい時代に、ベートーヴェンは宮廷劇場から一つの依頼を受けます。それは、文豪ゲーテの戯曲「エグモント」のための付随音楽の作曲でした。

ベートーヴェンが深く尊敬してやまないゲーテ。「彼の詩は私を幸福にしてくれる」とまで語った文豪の作品に、彼は燃えるような情熱で取り組みます。

戯曲「エグモント」が描くのは、16世紀のネーデルラント(現在のオランダ・ベルギー)。スペインの圧政に苦しむ民衆のため、自由を掲げて立ち上がった英雄エグモント伯の悲劇です。自らの信念を貫き、死刑に処されるエグモントの姿は、ナポレオンという強大な力に支配されていた当時のウィーン市民の姿、そして何よりも自由を愛するベートーヴェン自身の精神と強く重なりました。

圧政への抵抗、そして自由への渇望。時代と物語が、ベートーヴェンの創作意欲を最高潮にまで掻き立てたのです。


音楽で描かれる「抑圧」「闘争」「勝利」の物語

「エグモント序曲」は、戯曲全体のテーマを鮮やかに描き出しています。音楽の流れを、物語の展開と共に追ってみましょう。

序奏 (Sostenuto ma non troppo) :重くのしかかる圧政

曲は、ヘ短調の重々しい和音で幕を開けます。これは、スペインによる冷酷な支配と、民衆の呻き声そのもの。ゆっくりと刻まれるリズムは、スペイン舞曲「サラバンド」に由来すると言われ、逃れられない運命と抑圧された絶望的な雰囲気を描き出します。

自由を求める闘争

突如テンポは速まり、弦楽器が切迫感に満ちた旋律を奏で始めます。これはまさに、英雄エグモントの闘争の始まりです。手に汗握る闘争の場面を鮮烈に描き出します。

激しい闘争の末、音楽は一度静けさを取り戻します。エグモントの処刑という、悲劇的な結末の暗示です。

静寂を打ち破り、壮麗なファンファーレが高らかに鳴り響きます。 これは、肉体的には敗北したエグモントが、その精神において勝利した瞬間です。彼の死は無駄ではなく、未来のネーデルラント独立へと繋がる希望の狼煙(のろし)となりました。戯曲のラストで、自由の女神となった恋人クレールヒェンが幻として現れエグモントを祝福する場面にインスパイアされた、まばゆいばかりの「勝利の音楽」で、この序曲は堂々と締めくくられます。

時代を超えて心を打つ、希望のメッセージ

「エグモント序曲」は、単なる劇の始まりを告げる音楽ではありません。それは、絶望的な状況にあっても信念を貫き通す人間の尊厳と、いかなる苦難の先にも必ず希望はあるという、ベートーヴェンの力強いメッセージです。

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