古楽器演奏によるフンメルのピアノ協奏曲集第二弾という記事で、リリースについて触れさせていただきましたが、今回はこのアルバムの紹介です。
フンメル:ピアノ協奏曲集 第2集
1. ピアノ協奏曲イ長調 WoO24a, S.5
2. ヴァイオリンとピアノのための協奏曲ト長調 Op.17
アレッサンドロ・コッメッラート(フォルテピアノ)
ステファノ・バルネスキ(ヴァイオリン:2)
ラ・ガランテ(1)、 ミラノ・クラシカ(2)/ディディア・タルパイン(指揮)
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今回収録されているピアノ協奏曲イ長調,WoO.24a(S.5)は、初期の習作作品の2曲のうちの一曲です。もう一曲は同じイ長調でWoO.24(S.4)で、今回の収録されている曲のさらに前のバージョンともいえる曲です。S.4とS.5では楽器編成が異なり、S.4のオーボエ、ホルンが二管ずつに弦楽合奏という編成にフルートとファゴットが加わります。また、第二楽章は全く同じ楽曲ですが、第1、第3楽章は別の曲です。
どちらも師匠のモーツァルトの作品をベースにしており、優雅で華麗な楽曲ですが、S.4がモーツァルトのピアノ協奏曲第6~8番にある雰囲気を持ち、S.5は第15番の雰囲気を持っていると感じられます。特にS.5のロンドはモーツァルトの15番のロンドは同じような主題なため、非常に酷似しています。
S.4は、Chandosからリリースされているハワード・シェリー/ロンドン・モーツァルトプレイヤーズの録音(CHAN9886) で聴けるのみですが、S.5は同じくChandos盤(CHAN10374)の他に、Deutsche Schallplatten盤がありますが、オリジナル楽器での録音は今回のものが初となります。
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さて、この曲は未出版ですが作曲家の子孫の1人であるマリア・フローレンスの所蔵コレクションにありました。作曲年代は判定しがたく研究家のジョエル・ザックスが12歳から20歳の初めころの間に作曲されたとしています。
まぁ聴くと、ちょっとメロディと展開があいまいなモーツァルト といった感じです。しかし第二楽章のロマンスなどのピアノ装飾はモーツァルトよりさらに発展し、これから流行りだすブリリアント協奏曲の走りと言えます。
さて、もう一方の収録曲はピアノとヴァイオリンのための二重協奏曲ト長調,Op.17ですが、これはフンメルの作品の中でも古くは1970年代からこれまでに数多くの録音が出ています。
楽曲関しては何度も言及されてているので省きます。演奏はオリジナル楽器ということでピアノもヴァイオリンも音量は少なめですが、ヴァイオリンの奏法がノンビブラートの為か、ややキンキンした音に聞こえます。ピアノはチェンバロからピアノフォルテ、現代のピアノに至るまでに音色も大きさもあらゆる面で進化してきましたが、ヴァイオリンは現代でも200年や300年前の楽器に名器が多くて、それらを使って録音されているので、そもそも弦楽器に古楽器使用、とか言わないのではないか? と思うんですが、弦や弓の素材などが違うんでしょうか? 演奏法だけでは片づけられないほどの音の違いがあります。
これは個人によっても好みがわかれるでしょう。
オーケストラは前作のみならず沢山の録音で聞くことができますが、統制が取れて、音もバランスよく鳴っています。とても上手いオーケストラだなと思います。
フンメルの初期のピアノ協奏曲、ウィーン古典派の典型がここにあります。