春の柔らかな日差しが、アスファルトをじんわりと温めている。

住宅街に入ると、静かで落ち着いた空気が流れていた。

 

「静かだな…いいところだ」

 

時折、庭先の花が風に揺れ、甘い香りを運んでくる。

 

「花の香り…春だな」

 

こんな場所で暮らすのか、と少しばかりの実感が湧いてきた。

 

「これから、どんな生活が始まるんだろう…」

 

アプリの示す通りに進むと、視界が開けた。

こぢんまりとした、けれど緑豊かな公園が目の前に現れた。

ブランコに乗った子供たちのはしゃぐ声、ベンチで談笑する老夫婦の穏やかな笑い声生活の匂いが、確かにそこにあった。

 

「ここで、これから僕も生活していくんだ…」

 

公園の脇を通り過ぎる。木々の間から、ちらちらと陽光が漏れ、木漏れ日が地面に踊っている。ふと顔を上げると、公園の向こうに、見慣れた形の屋根が見えた。

 

ああ、あれだ。

 

少し褪せたベージュの外壁。

二階の窓辺には、前の住人が植えたのだろうか、小さなプランターが置かれている。

 

「植物…手入れされていたんだな」

 

写真で見た通りだ。いや、写真で見るよりも、ずっと温かみがある。

足早に公園を抜け、家の前に立つ。

僕は、手に握りしめた鍵を何度も見つめ直した。

そして鍵を差し込み、ゆっくりと回す。

 

カチャリ、と小さな音がして、ドアが開いた。

 

玄関に入ると、かすかに古い木の香りがした。

誰もいないはずなのに、どこか懐かしいような、安心するような、不思議な感覚に包まれた。

 

窓を開けると、公園の緑が目に飛び込んできた。

 

子供たちの声は、少し遠くなったけれど、まだ聞こえる。この公園が、僕の家の庭の一部のような存在になるのだろうか。

 

これから、この家で、どんな日々を過ごすのだろう。

 

どんな思い出を刻んでいくのだろう。まだ何もわからないけれど、確かなのは、この家と、この公園と、この街で、僕は新しい生活を始めるのだということ。

 

「よし、頑張ろう!」

 

夕焼けが公園の木々を赤く染め始めた頃、僕は部屋の片付けを始めた。

 

「まずはどこから片付けようかな…」

 

窓から見える公園の景色は、昼間とはまた違った表情を見せている。

 

「夕焼け…綺麗だな」

 

子供たちの姿はなく、代わりに、犬の散歩をする人や、ジョギングをする人の姿が見える。

 

「みんな、それぞれの生活を送っているんだな…」

 

この家を選んで、本当に良かった。公園の見えるこの家で、僕はきっと、穏やかで、そして、かけがえのない日々を送るだろう。