健二、50歳。

 
毎朝同じ時間に家を出て、満員電車に揺られ、会社では上司の小言を聞き流す。
週末は家で動画を見てでぼんやり。
 
そんな冴えないサラリーマン生活を送っていた。

 

ある日、健二は昔買った革のノートを見つけた。

使い込まれた革の質感、紙の匂い。

学生時代、夢や希望を書き連ねていたノートだった。

 

ふと、胸の奥がチクリと痛んだ。

 

その夜、その古いノートを開いた。

 

過去の自分が描いた夢は、今の自分とはかけ離れていた。

ノートの表紙に目を向けると、そのシンプルな革の表紙は、使い込むほどに味が出ていた。

 

そうだ、このノートのように、自分も何かを作り出せるのではないか?

 

健二は閃いた。

ノートを加工して、世界に一つだけのオリジナルノートを作って売ろう!

 

翌日から、健二の生活は一変した。

仕事が終わってから、近所の文房具店や革専門店を巡り、材料を集め始めた。

ノートの表紙に革を貼り付けたり、金具を取り付けたり、様々な加工を試した。

 

最初は失敗の連続だった。

革がうまく貼れなかったり、金具が歪んでしまったり…。

 

それでも健二は諦めなかった。

インターネットでハンドメイドの技術を調べたり、ワークショップに参加したりして、技術を磨いていった。

 

数ヶ月後、健二は自信作と呼べるノートを作り上げた。

 

革の質感、金具の輝き、紙の質、全てにこだわった、まさに世界に一つだけのノート。

 

健二は思い切って、ネットのハンドメイドマーケットに出品してみることにした。

しかし最初は全く売れなかった。

 

不安がよぎったが、健二は諦めなかった。商品の写真を綺麗に撮り直したり、説明文を丁寧に書いたり、SNSで宣伝したりと、地道な努力を続けた。

 

ある日、初めての注文が入った。健二は飛び上がるほど喜んだ。

丁寧に梱包し、感謝のメッセージを添えて発送した。

数日後、購入者からメッセージが届いた。

 

「素敵なノートをありがとうございます。大切に使わせていただきます。」

 

その言葉に、健二は胸が熱くなった。

自分の作ったものが、誰かの役に立っている。それが何より嬉しかった。

 

その後も、少しずつ注文が入るようになった。健二は仕事が終わってから、ノート作りに励む日々を送っていた。

忙しくなったが、充実感で満たされていた。

 

ある日、健二のノートがネットニュースに取り上げられた。

 

それをきっかけに、注文が殺到するようになった。

健二は会社を辞め、ノート作りに専念することを決意した。

 

数年後、健二は小さな工房を構え、数人の従業員を雇っていた。

 

彼の作るノートは、その質の高さとデザイン性で、多くの人に愛されるようになっていた。

 

健二は、かつての冴えないサラリーマンではなく、自分の手で夢を叶えた、誇り高い職人になっていた。