今年8作品目となる日本映画は『怪物』です。
昨年の第76回カンヌ国際映画祭において、脚本賞・クィア・パルム賞を受賞して話題となりました。
今年の日本アカデミー賞にもノミネートされましたが、残念ながら作品賞は取れなかったようです。
音楽は昨年3月にお亡くなりになった坂本龍一が担当し、本作が遺作となりました。
『怪物』
2023年6月2日 2時間6分
配給 東宝
監督 是枝裕和 脚本 坂元裕二
音楽 坂本龍一
出演 安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、中村獅童、田中裕子
評価 3.5
「怪物だーれだ!」がキャッチフレーズのこの映画、U-NEXTでポイントで視聴できるので見てみました。
安藤サクラに永山瑛太、中村獅童、田中裕子などが出演しています。
子役は黒川想矢と柊木陽太ですね。
今作は全編を通して、誰が何を考えているのか本当のところはわからないという描き方をしています。
小学生の子どもを持つ母親の視点、自分では子どもに親身になっていると思っている先生、そして事なかれ主義の校長。
一体誰が怪物なのか?
小説やドラマや映画は、正義と悪がわかりやすく描かれています。
そうした方がストーリーを楽しめるからです。
しかしこの映画ではそういった枠を取り払い、私たちの偏見に満ちた正義感に問題提起を与えています。
人は自分が見たものが全てであって、それで物事を判断しようとします。また、生きてきた経験が長い人ほどその物差しで人や物事を判断しようとします。
そういった視点の一方通行が、それぞれの怪物を生み出してしまうんですね。
小学生の湊と依里は、お互いのことを好きになります。そしてそれが自分たちは普通の人間ではない性的指向を持った豚だと判断してしまうのです。
そうした指向を持っていなくても、私にだって子供の頃に男子生徒を可愛いと思ったり、好きになった経験はあります。
ラストの少年たちの行方は、見る人に委ねられる形となっています。
おそらく死んでしまったのかと私には見えましたが、それだとあまりにも悲しい結末ですね。
是枝イズムを存分に楽しめる作品で、評価は3.5です。