第2話 7人兄弟
私は茨城県の小さな田舎町で、7人兄弟の末っ子としてこの世に生を受けました。
7人兄弟の構成は、上から長男、次男、三男、長女、4男、5男、6男の順で、私は6男となります。
私は幼い頃からこの7人兄弟と両親の9人で暮らしてきたので、私はこの大家族に対して何の疑いも持っていませんでした。
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長男と一緒に暮らしていた思い出として、家の中に小さな納屋があって、私が何か粗相をしたのかどうかわかりませんが、長男が怒って私をそこへ閉じ込めたという記憶が残っています。
私の母は7人も子供を産んだのか!
さぞかし大変だったろうなあと、子供心にそう思っていました。
しかし、実はそうではなかったのです。
この7人は、本当の兄弟ではありませんでした!!
ガ、ガーン!です。
私がその真実を知ったのが、何と高校を卒業して東京に出てきた18歳の時でした。
実家にいた18年間は、本当の兄弟ではないと疑ったことなど一度もなかったのです。
それは10人兄弟の長男である私の父が関係しています。
毎年正月とお盆の時期になると、私の家は10人兄弟の実家なので、各方面に暮らしている父の弟や妹連中が集まってきます。
これだけ父親の兄弟が多いと、自分に7人の兄弟がいても何の違和感も持たないものです。
親戚が多いと、正月にはやはりそれ相応に結構な額のお年玉が集まります。
毎月のお小遣いなど貰える家庭ではなかったので、この正月で貯めたお年玉を、年間で調整して使っていくという技を必然的に覚えるようになりました。
私は高校を卒業すると同時に、俳優になることを志して東京に働きに来ました。
最初はお金もないので、上から3番目の兄が住んでいたマンションに間借りすることになったのです。
西日暮里にある2DKのマンションで、私は兄と二人暮らしを始めました。
2人で暮らしてみて初めてわかったことですが、この兄がものすごく几帳面な人で、常に整理整頓を心がけているのです。
O型特有の大胆さと、大雑把なところがどこにもありません。
私の両親は2人ともO型、もちろん息子の私もO型です。不思議に思った私は、兄にこう質問してみました。
「兄貴ってさあ~、O型なのに几帳面だよね。」
一瞬間があり、こう返答が返ってきました。
「俺はO型じゃない、A型だよ。」
「???」
「俺はお前と母親は一緒だけど、父親が違うんだ。」
「!!!」
私はこの時が、人生で一番驚いた瞬間だったかもしれません。
「上の兄貴2人はお前と父親は一緒だけど、母親が違うんだよ。」
またまた驚愕です。
私はそこで初めて、両親が再婚同士だったことを知りました。
つまり、私の父親は2人の男の子が生まれて奥さんを亡くし、私の母親と再婚したけれど、その時には母の方にも前の夫との子供がいたということです。
それがこの3番目の兄貴だったんですね。
「えっ?てことは、上の兄貴2人と兄貴は、全く血が繫がっていないってことだよね?」
「そうだよ、お前知らなかったのか?」
「だって、誰もそんなこと教えてくれないだろ。」
「あえて言う必要も、お前が知る必要もなかったんじゃないか。」
この言葉に私は妙に納得しました。
考えてみれば血など繋がっていなくても、兄弟であることには何の変わりもなかったからです。
その出来事があってから、私は劇団ひまわりに無事入所が決まり、届け出に必要な戸籍謄本を取得するため一旦帰省することにしました。
戸籍謄本を初めて見てわかったことですが、そこには私は6男ではなく、3男と大きく書かれているのが確認できたのです。
第3話「私を生んだ理由」へつづく。