第23話 フリーアドレス
皆さんは「フリーアドレス」という言葉をご存じでしょうか?
フリーアドレスとは「オフィスの中で固定席を持たずに、ノートパソコンなどを活用して自分の好きな席で働くワークスタイル」のことを言います。
普通の会社は部署単位で机が配置され、座る席も決まっているものです。もちろん私の会社もずっとそのスタイルを踏襲してきました。
そのためある部署で人員を増やそうものなら、机を増設したり、場合によってはレイアウトの変更さえする必要がありました。
昨年の9月にオフイスの3分の1をオペラシティに返却し、私たちの会社でもこのフリーアドレス制を導入することになったのです。
社長や役員、部長のみが固定席で、あとの社員は全員がフリーアドレスで自分専用のデスクがありません。
大きく管理部門と事業所部門にスペースは分類されていますが、後はどこの席に座ろうが自由です。
しかしコロナと共に今では時差出勤が当たり前となっており、早い人で7時、遅い人で10時なので、結局のところは早く出勤した人が端の良い席に座ってしまいます。
後から出勤してくる人は、人と人との間や、とにかく空いている席に座るしかなくなります。
これはやってみて初めてわかりましたが、電車に座る法則と一緒ですね。
早く来る人は、いきなり真ん中には座らずにまず端の席を埋めていきます。
電車の端の席と同じように、両サイドに人がいるよりは片側だけにいる方が落ち着きますからね。
両端が埋まると次に来る人は、端の人と1席空けて座ります。
そうすると最後の方に来る人は、当然のように人と人の間に割り込むようにして座るしかなくなるのです。
これを毎日繰り返していると、何が起きるか?
やはり自分が座る席は、ある程度固定化されてしまうということです。
私は会社に来る日は毎日8時20分くらいに出社するので、まだ席は空いている方です。
当然に端の席にも座れるので、自然と3パターンくらいの端の席をループして座っています。
そして意外と私よりも先に来た人でも、ここは〇〇さんがいつも座っている席だから、空けておこうと忖度されることもあります。
やはり人というものは、あまり変化を好まないものなんですね。
自分が安心できる場所が、一番落ち着くのです。
こういうことが想定できたので、毎日クジを引いて座る席を決めたらどうか?という意見も上がりました。
良い提案でしたが、毎日やるのはさすがに面倒くさいので結局却下となりました。
私の会社の部長は固定席なので、私はわざといつも遠くの見えない位置に座っていることは言うまでもありません(笑)。
第24話 最終話「本社監査」へつづく。