第16話 防災訓練

 

BCPの策定により、当社では防災訓練にも力を入れるようになりました。

 

現在入居しているオペラシティビルでは、年に2回総合防災訓練が実施されます。この防災訓練では避難訓練もあって、毎回一斉に入居している会社から階段を降りて避難してきます。

 

54階建てのビルなので、入居している会社やテナントは100社以上、飲食店も50店舗あります。

 

約2万人の人がこのビルで働いているのです。もちろん全員が避難訓練に参加するわけではないですが、それでも毎回2千人くらいの人が4か所にある非常階段を使って避難してきます。

 

集合場所はビルの周り10か所くらいに分かれているのですが、やはり圧巻の人数になります。

 

当社が入居しているのはまだそんなに高くない所なのでいいですが、54階から降りてくる人は毎回とても大変だと思います。

 

 

各会社や事業所には、通常「自衛消防組織」というものが設置され「通報・連絡班」や「避難誘導班」「消火班」「安全防護・応急救護班」などがそれぞれ数名ずつ任命されます。

 

当社では独自にこの自衛消防組織を3ブロックごとに分け、各ブロックにブロック長を置き、それぞれの担当に各2名ずつ配置しています。

 

そうすると自衛消防組織の人数だけで、総勢30名の大所帯となります。

 

そして全員に自分は自衛消防班だとわかるように、赤い「ベーシックベスト」を着てもらいます。

 

ジャンバーの背中には会社のロゴも入っているので、集合場所ではとても目立ちます。

 

気合いの入っている企業だなと、周りからは思われていたことでしょう。

 

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そんなある年のことでした。

 

当社が防災に力を入れていることを知ったオペラシティ管理事務所から、オフイスの中での訓練の模様を消防署に視察させてくれないかという申し込みがありました。

 

この時はまだ総務部として訓練を仕切っていた私も、ここは腕の見せ所です。

 

防災訓練は、まず館内にアナウンスで地震が発生したという連絡が入り、それから各オフィスで火災も発生したという想定で個別の訓練を開始します。

 

私がその時行った訓練は、オフイスにいる従業員全員が参加できる訓練でした。

 

事前に各社員に訓練資料をメールで配信しておき、それに基づいてマイクでレクチャーを開始します。

 

地震が発生した際の注意事項とか、安否確認システムの使い方とかを、実際に画面をみてもらって携帯で操作も行ってもらいます。

 

その一部始終を見ていた新宿消防庁の署長が、オペラシティの各社の代表が集まった最後の講評で、当社の名前をあげてその訓練内容を称賛していたそうなのです。

 

「通常オフィスで行う訓練は、自衛消防班のみが訓練を行って、一般の社員は避難訓練にだけ参加するものです。ところがこの企業は、全社員がその場で訓練に参加できるように創意工夫をしているんですね。これは素晴らしいことだと思います。」

 

私は現在は親会社の総務部ではないですが、今でもこの年2回の防災訓練にはお呼びがかかり、毎回指揮を取らされているのです。

 

すでに10何年かこの防災訓練に携わっていますが、ありえない場面を想定した訓練を何回やっても意味はありません。

 

実際に起きることに対して、自分たちができることだけを繰り返し反復する方が、一番大切なことだと思います。

 

第17話「お引越し」へつづく。

 

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