第15話 非常停止ボタン
電車にはホームにも車内にも「非常停止ボタン」というものが設置されています。
そもそもこの非常停止ボタンは、どういう時に使用するものなんでしょうか?
国土交通省の「鉄道の安全利用に関する手引き」によれば、「ホームから線路内に転落した人を見たとき、急いで列車を停止させる必要があるとき」と定義されています。
線路内に人が転落してしまった、線路内に大きな物を落としてしまいそれと電車が接触すると乗客に危険が及ぶ場合とかに限ります。
つまり人身に被害が及びそうな事態のときに押されるべきものなのです。
従って、ここには自分のスマホや財布を線路に落としてしまった場合などは当然含まれません。
スマホを線路に落とし、電車に潰されないよう慌てて非常停止ボタンを押す人がいますが、こういう人は駅員に厳しく注意されます。
この非常停止ボタンがホームに設置されるようになったのは、2001年の新大久保の転落事故があってからですね。
もう22年も前のことになりますが、転落した男性を助けようとした韓国人留学生、男性カメラマンの3人が電車にはねられて死亡した事故です。
非常停止ボタンがホームになかったため、誰も電車を止めることはできませんでした。
最近でこそ無くなりましたが、この非常停止ボタンが設置された直後は、誰かがいたずらで押して電車がよく止めていたことがありました。
いたずらの場合はボタンを押した原因がわからないので、電車が数分に渡って止まってしまうケースがしばしばでした。
そして今ではホームだけでなく、どの電車の車内にもこの非常停止ボタンが設置されています。
車内の非常停止ボタンを押す基準は以下の通りです。
- ドアに傘等を挟んだまま列車が動き出した時
- 車内で犯罪行為を目撃した時
- 救急手配が必要な時
- 上記の他、異常を乗務員に伝えたい時
これにより、車内で具合が悪くなるお客様は結構な数でいるので、その度に電車は止まることになります。
最近では電車を止めずにすむように、車内の非常停止ボタンには乗務員との通話機能が設けられています。
いちいち電車を止めずにすむように、配慮がなされているのですね。
これにより、車内で具合が悪くなったお客様を救護するために駅で止まることは頻繁にありますが、運行中に緊急停止することはなくなりました。
次回はまだその通話機能がなかった時代、一人の女性が緊急停止ボタンを使ったある出来事をご紹介します。
第16話「電車止めちゃった・・・」へつづく。