第11話 大宮「きらきら惑星」点3のお店
私はいつしか「きらきら惑星(ぼし)」の点3のお店の常連になっていました。
ここで顔見知りも増えると、点5のお店にはなかなか足は向きません。
そんなある日のことでした。
私の対面がラストで席が空き、新規のお客さんが入ってきました。
その若者は、私の下家にいた方と顔見知りだったのか、こう言っていたのがハッキリ聞こえました。
「美味しい?」
おそらくその若者は相当腕に自信があったのでしょう。
私と上家の顔を見て言ったのかどうかはわかりませんが、「美味しい?」は「カモれそう?」の意味なのです。
その若者の失礼な発言に、下家の方が小声でこう返していました。
「・・・イヤ。」
それはそうです。その若者が入る前の半荘は、下家も帰った対面も私と私の上家にボコボコにされた後だったのです。
当然その若者もボコボコにしてあげました。
点3に来る人に強い人などいないと勘違いしている輩(やから)は、こういう風にいます。
私はその失礼な若者の、途中から引きつった顔を今でも忘れずに覚えています。
相手を怒らせるような、余計な発言は慎むべきですね。
それから点3のお店ではこういうこともありました。
私がメンバー入りで卓を囲んでいる時、一人のサラリーマン風のお客さんが入店してきました。
その時メンバーはその彼しかいなかったので、すぐに対応に向かいました。
その間私たちは中断して待たなくていけないのですが、そのお客さんとメンバーがこういう会話をしているのが耳に入ってきました。
「ここのレートはどのくらいなの?」
「点3です。」
「点3!マジ?」
「ハイ、点5のお店だったら別の場所にありますよ。」
「点3か~ちょっとな~・・・また来る。」
そう言ってそのお客さんはそのまま帰って行きました。
レートが低いと燃えるものがないんでしょうか?何か点3でもこんなに熱く麻雀を打っている私たちは、見下されたような気持になりました。
しかしそのメンバーが卓に戻ってきた時、こんなことを言っていたのを覚えています。
「レートにこだわる人こそ、案外弱い人が多いんですよね。」
あの頃の点3のお店に通う人は、確かに若い人が多い印象でしたが、みな真剣に麻雀と向き合っていたのです。
麻雀をする楽しさは、掛け金だけが全てではないからです。
今ではノーレートの雀荘が増え、そのことを証明しました。
私の麻雀サークルも、皆が燃えて取り組むのはお金のためではありません。自分の段級位を少しでも上げるという目標があるからなのです。
そんなことを懐かしく思い出しました。
第13話 大宮「きらきら惑星・点5のお店」につづく。