ビゼー:室内楽風小品「アダージェット」と「小さな旦那様、小さな奥様」 | 室内楽の聴譜奏ノート

室内楽の聴譜奏ノート

室内楽の歴史の中で忘れられた曲、埋もれた曲を見つけるのが趣味で、聴いて、楽譜を探して、できれば奏く機会を持ちたいと思いつつメモしています。

Bizet : Adagiette from “L’Arlésienne” Suite No.1 
Bizet : Petit mari, petite femme from the Suite “Jeux d’enfants”


 療養生活というものの毎日は、ほとんど変わり映えのしない行動の反復なので、月末に振り返ってみても取り立ててどうという記憶も残っていない。むしろ毎夜見る夢のほうが、奇妙な事態に遭遇してあれこれどうしようかと思い悩む内容が多く、記憶に鮮明に刻まれる。夢の日記を書いたら面白い記録になるようにも思うのだが、論理的につながらない狭い視野の視覚像だけでは文章になりにくいと思う。決して楽しい夢ではないし、かといって決定的に追い詰められる訳でもないので、自分で何とかしようと考えるところで目が覚める。おかしな夢によって平凡過ぎる現実の生活との精神の緊張バランスを取ろうと脳が勝手に働くためなのだろうか?
 

 

 フランス・ロマン派の作曲家ジョルジュ・ビゼー(Georges Bizet, 1838-1875) はオペラ作曲家として身を立てようと専念したが、フランス語オペラの傑作とされる『カルメン』を生み出した直後に36歳という若さで世を去った。彼は「アルルの女」や「カルメン」で名を残したが、室内楽曲については皆無に近かったのを常々残念に思っていた。しかしこの断章ならば室内楽になり得るだろうという曲は頭の引出しに入れていた。

☆「アダージェット」~『アルルの女』第1組曲から
MuCh Music Season - Artist Diploma Quatuor Arod - Bizet: L'Arlésienne (Adagietto)

                          Quatuor Arod

 組曲「アルルの女」の第3曲は弦四部合奏の静謐さに満ちた佳曲で、いつか弦楽四重奏で演奏してみたいと思っていた。最近の Youtubeでも2例ほど弦四版の演奏が見つかり、そうした気持を共有できたのが嬉しかった。特に音源引用のアロド四重奏団(Quatuor Arod) による真剣勝負のような張り詰めた緊張感には圧倒される。 第1ヴァイオリンのフレーズの3拍目から次の拍頭につなげる5連音符に特徴がある。

 楽譜は IMSLP にある「アルルの女」第1組曲の管弦楽スコアに含まれる。
L'Arlésienne Suite No.1 (Bizet, Georges)
 

☆「小さな旦那様、小さな奥様 !」~組曲『子供の遊び』から
Georges Bizet - Jeux d' enfants - Petit Mari Petite Femme !

                           Eusebius Trìo 

 この『子供の遊び』(Jeux d’Enfants) は「アルルの女」の1年前にピアノ連弾用の小品集として作曲された12曲の中の一つで、11番目の曲になる。その中の5曲( 2,3,6,11,12 )をビゼー自身が選んで管弦楽曲に編曲し、組曲に仕立てた。この組曲も親しまれている。この第11曲は日本で言えば「おままごと」のような「夫婦ごっこ」の遊びと思われるが、終始ヴァイオリンとチェロの楽しい対話が続けられる。それがそのまま20歳そこそこの若い恋人たちの対話にも通じる甘美さに満ちている。この曲にもピアノ・トリオ版の楽譜が見つかった。普通の概念ならばヴァイオリンが妻役、チェロが夫役と思うのだが、引用音源の演奏ではそのジェンダーが入れ替わっている。ここでも音楽はジェンダーを超越して存在するのだ。ピアノは完全に伴奏役に徹している。

 楽譜は IMSLP にある「子供の遊び」のアレンジ譜面で見ることができる。
Jeux d'enfants (Bizet, Georges)
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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