回転すしや焼き肉店をチェーン展開している企業の研修を担当している時、「店舗で食中毒発生」の第一報が入りました。

 

食品衛生の面は弊社の直接的な指導領域ではありません。

 

外食産業専門のコンサルタントの担当領域でした。

 

ただし、スタッフ研修を担当していた関係もあり早速原因究明と対策策定の会議に呼ばれ議論を行いました。

 

会議室に入ると状況が見えてきました。

 

勝手に食中毒なんだから回転すしの店舗で発生したものと思い込んでいました。

 

違ったんです。

 

驚くことに、焼き肉チェーンの店舗で食中毒が発生していました。

 

トングなどの取り扱いはお客様にも徹底してご説明していました。

 

原因はユッケでした。

 

当然、保健所から行政指導が入りました。

 

社長は事態を大変重く受け止めていました。

 

行政指導で命令された営業停止期間をはるかに超える二か月間の営業自粛を指示しました。

 

そして、その期間を使って業務マニュアルの再点検とスタッフ教育の再徹底を行うことになりました。

 

早速、教育プログラムの策定に取り掛かりました。

 

該当店舗の店長・副店長と膝を突き合わせて現状分析を行いました。

 

二人の話を聞いてみても、傲慢不遜な姿勢態度は見られません。

 

逆に発症してしまったお客様に対するお詫びの気持ちと自分たちの行動に慢心がなかったか猛省していました。

 

当然真剣そのものです。

 

気分転換をしてもらうために、冗談を言っても耳に入っていない様子でした。

 

再教育の中で徹底して指導した内容は「お客様の存在」でした。

 

どちらかというと、接客の「形」ではなく「心」に照準を絞りました。

 

スタッフとして、お客様に対する

 

「心」

 

「心得」

 

「心構え」

 

「ハート」

 

「マインド」

 

を手を変え品を変え、徹底して指導しました。

 

そして、ようやく再営業日がやってきました。

 

たまたま、研修の報告に本社に伺っていた日と重なりました。

 

せっかくなので、開店時間に合わせて様子を見に行きました。

 

午前11時からランチ営業開始です。

 

該当店舗には広大な駐車場が確保されている郊外型の国道沿線に位置しています。

 

また、敷地内には焼き肉チェーンの店舗と回転すしの店舗が隣り合わせて立っています。

 

回転すしの店舗は開店前からすでに行列ができていました。

 

焼き肉チェーン店はガラガラでした。

 

まあ、無理もない状況でした。

 

誰が好き好んで食中毒が発生した店舗に食事に行くか、お客様の心理を考えれば仕方のない状況でした。

 

午前11時の開店時お客様ゼロ。

 

午前11時30分お客様ゼロ。

 

スタッフに動揺が見え始めました。

 

ここで副店長が「二か月も店舗を閉めていたから、営業再開をしたことを気づいてもらえないんだよ、駐車場に出て旗振りをしよう」と提案しました。

 

数人ずつ交代で旗振り活動を行いました。

 

正午お客様ゼロ。

 

12時30分、午後1時、午後1時30分と時間が経過しても一向にお客様が現れません。

 

ランチ営業の時間は午後2時までです。

 

午後1時50分、玄関の自動ドア前に老夫婦が立っていました。古くからの常連さまでした。

 

一斉に「いらっしゃいませ」の挨拶の声が店内に響きました。

 

副店長もパートリーダーも学生のアルバイトスタッフも皆、涙を流していました。

 

「今日はダメか」と皆が諦めかけた時のご来店でした。

 

営業後にミーティングを実施しました。

 

参加していたスタッフが口々に

 

「いらっしゃいませの意味が分かりました」

 

「今まで形だけの挨拶をしていた事に気が付きました」

 

「お客様に心を込める本当の意味が分かりました」

 

と皆が高揚感と達成感を語り、今後の決意をしていました。

 

副店長は号泣していました。

 

食中毒という最悪の事態から、大きなことを学んだ瞬間でした。