弊社で行っている研修は大きく2つのスタイルに分けることが出来ます。

 

1つは、受講者の方々を広く一般から募る公開セミナーです。

 

もう1つは、企業様からのご依頼を受けて1社毎に研修プログラムを作る企業内研修です。

 

創業時はお客様も少なかったため、広告宣伝活動を兼ねて公開セミナーをたくさん行っていました。

 

現在は逆で、ほぼ100%企業内研修で各社の人材育成のサポートを行っています。

 

 

今日の記事は、ある公開セミナーでの出来事です。

 

人里離れた山の中にある宿泊施設で4泊5日の合宿研修スタイルで公開セミナーを行いました。

 

公開セミナーのタイトルは「行動力強化訓練」です。

 

このタイトルだと、現在では集客はいろいろな意味で難しくなっています。

 

しかし、当時は毎回定員オーバーになるほどの人気のある公開セミナーでした。

 

そのため、口コミでいろいろな業界から受講者が集まりました。

 

トータルで5日間も社員さんを職場から外すので、一般社員さんより管理職や経営者の方が多く参加していました。

 

研修を担当する講師としても、5日間も受講者と寝食を共にしますので、性格や行動パターンや癖までも把握できるのでやりがいがとてもありました。

 

また、個人が自費で参加することもありましたがほとんどの場合、研修費用は会社が負担していました。

 

そのため、社長や受講者の直属上司から研修に対するご要望を文書で出してもらいました。

 

十人十色といわれるように、ご要望書の内容も「エッ」と思う無理難題から「要望事項なし」まで様々でした。

 

その中に「人前で話せるようにしてください」というものがありました。

 

ご要望を書かれた人の役職を見ると医療法人の理事長でした。

 

勝手に病院勤務の事務職か医師・看護師以外の医療従事者なんだろうなと思いました。

 

いざ研修を開始し、開講の挨拶をしながら参加者12名の中から該当者を探しました。

 

すぐにピンときました。

 

細身で色白で髪の毛がボサボサで人が話をしているのに下を向いている人が一人だけいました。

 

ただし、本人に普段行っている仕事を聞いてびっくりしました。

 

なんと、歯科医師だったんです。

 

子供の頃から勉強が大好きで、読書好きとのこと。

 

研修を進めていくと、他の受講者との違いが次々と浮き彫りになりました。

 

頭の回転はとても速く、掘り下げて考える思考力も抜群でした。

 

ただし、対人スキルに難ありでした。

 

目を見てコミュニケーションが図れません。

 

とても小さな声なので聴きとれません。

 

仲間内での討議の時間、一回も発表しません。

 

この状況を見て、理事長からのご要望を妙に納得してしまいました。

 

5日間も研修時間がありましたので、手を変え品を変え、アプローチしました。

 

すると、根本的な原因が見えてきました。

 

「吃音(きつおん)」だったんです。

 

わたし的にはとても安心しました。対処方法の一つを知っていたからです。

 

ある学会で知り合いになった臨床心理士、言語聴覚士の方々に対処の仕方を教えてもらっていました。

 

と言っても、わたしは臨床心理士などの専門家ではありません。

 

そのため、素人にも出来る「吃音(きつおん)」の人に出来るアドバイスを何点か習っていました。

 

今回のケースでは勇気を持って「吃音(きつおん)」であることを「カミングアウト」することでした。

 

初めに、個人面談の時間にミニカウンセリングを行い、その中で「カミングアウト」するようにアドバイスしました。

 

たまたま、順番で1分間スピーチを行う機会がありました。

 

「わたしは吃音(きつおん)で26年間苦しんできました」と本音を吐露しました。

 

何回も言葉に詰まりながらも顔を真っ赤にして一生懸命でした。

 

途中から

 

「頑張れ」

「大丈夫だ」

 

と聞いているメンバーから声が上がりました。

 

スピーチしている歯科医師も聞いている受講仲間もみんな号泣でした。

 

12名の一体感とともに若い歯科医師の意識改革が行われた瞬間でした。

 

研修の最後に皆さんに3分間の決意表明をしてもらいました。

 

この方がどんな決意をするのかと聞いていました。

 

「わたしはこれから臆することなく、気合を入れて歯科医師として治療に専念します」と周りがびっくりする声で決意を語っていました。

 

みんなから「治療する時は気合は入れなくていいよ」と突っ込まれ、爆笑の内に終了しました。

 

文字通り、涙あり笑いありの合宿研修でした。