覚悟 | rendiary

覚悟


「じゃあ、行くね」

そうニッコリと微笑んで、家を出ようとした彼女。


でも俺は、素直に見送ることが出来なかった。

いつもそう。


いつも
「離さないで」
なんて言う彼女に対し、

ニッコリと微笑んで
「離さない」
なんて言う俺も、

彼女の去り際を見ると
不安に感じるんだ。


きっと俺も、
「離さない」
じゃなく、

「離れないで」

そう思ってるに違いない。


特に今朝は
不甲斐なく、

涙が零れた。


「離れないで」

…が、言葉じゃなく

涙になって溢れた。


だから彼女の
ドアノブにかかる手の動きが止まったんだ。


「帰りたくないよ」


彼女の顔が
そう言った。


座り込む俺に
寄り添うように
しゃがみこんだ彼女は、

同じ目線で
不安げに俺を見つめた。

「これじゃ行けないよ」

そう言って
俺の気持ちを拭うように、瞳を潤ませた。

その目を見て、
ふと我に返った俺は
立ち上がって

渾身の笑顔で
彼女を見送った―…



一分一秒でも
長く一緒に居たいなんて

一分一秒でも
離れていたくないなんて


そう思えるのは
彼女が初めて。


全てを投げ打ってでも
彼女の笑顔と共に居たい。

自分を捨て去る覚悟なんてないけど…


でもそれでいい。

俺は自分自身の幸せの為に、

彼女と一緒に居たい。


そして彼女も

彼女の幸せの為に

俺と一緒に居ればいい。


互いに互いを
必要とした結果が

幸せであるならば

寄り添うべきだ。

より一層、
幸せを感じる為に。

覚悟は後からついてくる。


今は


精いっぱい
彼女を愛したい。