浜田廣介の「泣いた赤鬼」における侠の心
皆様 8月も残り少しになりましたね。いかがお過ごしですか。夏は満喫されましたか?今年も後半戦に入ってきましたね。9月のユマニテ会は9月11日(金曜)です。次回のメニューは劉向の「新序」か欧陽修「朋党論」ゼミ形式討論会はラッセルの人生における断章より「父親の影響」を予定しております。どなたでもご参加いただけます。では7月のユマニテ会より一部ご紹介しますね。==========浜田廣介「泣いた赤鬼」における侠の心幻灯ってわかりますか?静止画のスライドです。私も吉祥寺の小学校の頃ちょっとした広いところに100人位あつめて、芥川龍之介の蜘蛛の糸とか、泣いた赤鬼とかみました。良く覚えています。浜田廣介(1893~ 1973)早稲田の文学部出身です。童話を文学の領域まで高めたといわれています。「泣いた赤鬼」という作品です。みなさん読まれているかと思いますがざっと話すと赤鬼は心の優しい鬼だった。なんとか人間と仲よくしたいと思っていた。ある時立札を作って立てた「心の優しい鬼のうちです、どなたでもおいでください。おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます。」だけどだれもたずねてきてくれない。それで赤鬼さんはとても悲しくなって、その立札をひっこぬいて足でふんずけて壊してしまった。そこへ友人の青鬼が遊びにきて、どうしたんだと聞いた。事情をしった青鬼はある提案をする。「これから僕が村にいって乱暴するから、そこに君がきて僕をぽかぽか殴ってくれそうすれば村の人は君を信用してくれる。」赤鬼は青鬼君に悪いからと反対したが、青鬼に 何かいいことしようとしたら、誰かが犠牲にならなきゃいけないといってやろうといって説得される。それで決行することになる。その後、赤鬼の所には人間たちも遊びにきてくれるようになって、家は居心地のいいところで、お茶もお菓子もおいしくて、人間とも仲良くなっていき、淋しくなくなった。赤鬼はある日、青鬼のことを思い出して、どうしているのだろう病気とかしていないだろうかと心配になって青鬼をたずねる。入口が閉ざされていて、貼り紙がしてあって「赤鬼君、人間たちとはどこまでも仲よくまじめに付き合って楽しく暮らしていって下さい。僕はしばらく君にはお目にかかりません。このまま君と付き合いを続けていけば、人間は君を疑うことが無いとも限りません。薄気味わるく思わないでもありません。それでは誠につまらない。そう考えて僕は旅にでることにしました。長い長い旅になるかもしれません。けれども僕は君を忘れない。どこかでまた会う日があるかもしれません。さようなら 体を大事にしてください。どこまでも君の友達 青鬼 」それを見た赤鬼は、何度も何度もそれを読んで戸に手をあてて額を押し付けて涙を流して泣きましたという話さてこのお話の主人公は誰だ。そう青鬼 そうして主人公の名前は題名にもでてこない。これが日本なんだね。青鬼は赤鬼や村人を幸せしにてやって自分は幸せにはなれない。これ日本的タイプのヒーローだね。やくざ映画、任侠映画 のスタイルにはいくらでもある。高倉健とかでてくるあの任侠映画。人を幸せにして自分は幸せになれない。それが男の美しさであると日本人が思っているからで、これが日本的情緒なの。これはアメリカ人にはわからない。1953年私がちょうど小学校6年斉だった時アメリカ映画シェーンが上映され日本で一世を風靡した。その主題歌は何年もヒットチャートに上がっていた。日本人がすごく好きだった。アメリカでは全く流行らなかったそうです。そのスタイルは日本の任侠映画と同じで、人を幸せにして、自分は幸せになれない。アメリカ人はヒーローもハッピーエンドにならなければならない。ちなみに鳥越信という早稲田の教授ですが、この人は浜田廣介の童話を批判している。未来への展望がないと批判している。彼の思想的見地からかもしれないが、でも私は日本の古き良き伝統というものを大切にしないで何が未来への展望かと思います。我々はアメリカと違うよ。日本は日本で独自でいいじゃない。日本の気候風土それから歴史伝統、そういう中で培われた日本的情調そういったものは簡単に変わらないし、時代が変わっても大切にしたいと思います。私のいう侠という字の定義はね 「美にまで昇華した義」たんなる美しさだけではない。報いを求めないまったく見返りを求めない大きな愛情 通常の仁義の道徳を超えています。私がいつも自分の思想を儒学任侠派だといっているのはそのせいでもあります。孔子孟子の哲学、愛情を根底にするもの、この広い世の中にたった一人でも不幸な人間がいたらそれは俺の責任だというような人道主義、ヒューマニズム。それを超えるようなものが「侠の心」。通常の道徳ではそこまでしなくてもというようなもの、青鬼の行動はそこまでいってるね。それが日本的情緒にかかわってくるものであって、孔子孟子の義だけでは済まない、それを超えているものを我々日本人はもっているなあとそう思います。=============みなさんはどう思いますか。ユマニテ会で一緒に学びませんか?興味のある方はいつでもご参加いだけます。お問い合わせはhumanite@live.jp までご連絡下さい。