皆さん いつもごぶさたですみません。
ユマニテ会のゆにっちです。

長いこと更新しなかったのでユマニテ会がなくなったと心配されたかたもいらっしゃるかもしれませんが、
まだまだ存続してますよ=

6月で第56回を迎えます。
100回をめざしてがんばって参ります。
先生も元気に頑張っておられます。

じゃあ早速過去のお話をご紹介しますね。
韓非子から
=================

さて今日は『韓非子』について勉強しましょう。経営者が好む書です。経営者が好むのは一番が『孫子』、次が『韓非子』です、大経営者になると『論語』です。『韓非子』は、経営者には、人心把握の書として読まれています。これは紀元前3世紀、秦の始皇帝に捧げられたもので、読んで始皇帝は涙を流して喜んだそうです。韓非子は、孔子より250年位後の人です。彼は考えました、「人間の本性は悪であり、ほっておけば悪いことをする。だから法律でがんじがらめにして、違反するものは処刑する。でなければ社会秩序は保てない。」。実質的に、始皇帝の独裁を根拠付けた思想で、ユマニテ会とは趣旨が違うのですが、使えそうなところを選んできました。

『韓非子』は全部で55編ありますが、今日は、第12篇「説難(ぜいなん)」です。「説」は説得することです。我こそはという人たちが、各国を巡り歩いて、殿様、王様に、自分の考えをお話するのです、「こうすれば国は治まります、こうすれば国は強くなります」と。そうやって自分の説を相手に受け入れてもらおうとするが、それはとても難しいことなのだよということを言っています。じゃあ、行きます。

 

『韓非子』説難第12

【1、昔、鄭国の武公が、胡(異民族)国を討伐しようと思った。そこでまず自分の娘を胡国の王に妻(めあわ)せ、仲良くなってから、家来たちを集めて会議を開き、こう言った、「わしは今から戦争をしようと思っている、どの国を攻めようか」と。すると、武公の意図をパッと察した大夫の関其思(かんきし)が、「胡国を打つべきです」と言った。すると、武公は、「胡国は兄弟の国ではないか!それを討てとは何事だ!」と言って関其思を死刑にしてしまった。胡国の王は、これを聞いて、鄭国は本当に我が国と仲良くしようとしているんだなと思って、鄭国に対する一切の軍備を取り払ってしまった。鄭国は、その隙に乗じて胡国を襲い征服してしまった。

2、宋国にお金持ちがいた。雨がひどく降り、垣根の土塀に穴が開いてしまった。その家の息子が、「あの塀を修理しないと泥棒に入られるよ。」と言った。隣のおじさんも同じことを言った。日が暮れて案の定泥棒に入られて財産を失った。その家の人は、自分の息子を「賢い子だ」と褒めて、同じことを言った隣のおじさんを「あいつが泥棒したんじゃないか?」と疑った。

以上二つの話を例に取って韓非子は言う。この二人(1の関其思と2の隣のおじさん)の言うことはどちらも当たっていた。けれど関其思は殺され、隣のおじさんは泥棒と疑われた。知の難きに非ず。知を処すること則ち難きなり。(知る事が難しいのではない。知ったことをどう処理するかが難しいのである。)】

知ることももちろん難しいんだよ。そこそこ頭が良くなければ正しく認識することはできない。二人とも頭が良くて正しい認識をした。それなのに二人とも良いことはなかった。普通よりも頭が良くて、正しい認識を得たら、何か良いことがあってもいいはずでしょ。でも二人ともとんでもない目に遭ってしまった。なぜか?それは得た知識の使い方を誤ったからだね。これは二千三百年前の作品だけど、今でも通用しますよね。古典というものの良さがここにあります。

 次にもう一つ同じ「説難」からの話です。

【昔、彌子瑕(びしか)という若者が衛君に寵愛されていた。衛国の法では、こっそり王の馬車に乗った者は足切りの刑と決まっていた。彌子瑕の母が急病になり、或人が夜、彌子瑕にこれを告げた。すると彌子瑕は、こっそり王様の車に乗って母の許に駆け付けた。

後で、それを聞いた王は彌子瑕を褒めて言った、「母を思うあまり自分が足切りの刑になるのも忘れてしまったのだ」と。

また、他日、王と果樹園を散歩していたとき、彌子瑕が桃を取って食べたら美味しかったので、ひと噛みして、そのまま王に渡した。王は、「わしを大事に思ってくれているんだなぁ。自分が食べたいのを我慢して、わしにくれたよ。」と。

ところが彌子瑕が年を取り、王に可愛いがられなくなったとき、彼は罪を得てしまった。王は言った、「こいつは昔、こっそりわしの馬車に乗った。また、食べかけの桃をわしに食べさせた。」と。彌子瑕のしたことは同じなのに、最初は褒められ、後には罪された。これは、王の感情が愛から憎しみに変化したからである。王を説得するときは、可愛がられていれば聞き入れられるが、憎まれていれば聞いてもらえない。王を説得しようとする者は、その辺を見極めてからしなければならない。

さて、龍という動物は、飼いならせは、背中に乗って空を飛べるが、その喉の下に逆さ鱗が一枚あり、もし誤ってそれに触れたら、必ず食い殺される。王にも必ず逆鱗がある。王に意見をする者もその逆鱗に触れなければ理想の状態に近いだろう】

 どんな温厚な上司でも、それだけは絶対に触れてほしくないことがあるかもしれない。それは家庭の問題かもしれない。子供の問題かもしれない。奥さんのことかもしれない。その一点に触れられたら、さすがの優しかった上司も激怒して左遷させられたり、評価を下げられたりするかもしれない。意見をする時には気をつけましょうね。『韓非子』には他にも色々な話がありますが、今日はこのくらいにしておきましょう。

==================

韓非子いかがでしたか?
ユマニテ会は初めての方でも興味のある方は大歓迎です。
お問い合わせは humanite@live.jp まで