私の母は
神様信仰の
強い人だった
わけのわからない
体の痛みがあって
病院や整骨院で
治らない場合は
決まって
最終的に
拝み屋と言われる
霊能者に走っては
悪霊退散をしていた
昔は
病院が少なかったから
尚更それが普通だった
私は幼い頃から
そういう所に
連れ回されていたので
私も
神様という存在を
信じて
母の隣で
手を合わせた
当時は
そういう拝み屋と
呼ばれる人は
地元には
沢山いた
確かに
不思議と
治ったりもして
ますます
彼らの力を信じた
なぜ信じたのかというと
ずっとある
自己否定の苦しみと
失敗への恐れ
とにかく
解放されたい
失敗したくない
という
無自覚な欲求が
あったからだった
でも
それが一体何なのか
どこからくるものか
全くわからなかったので
そういう不思議な力
というものに
興味を持ち
すがったのだった
その中でも
ある霊能者と
親しくなった
母と同じ年で
裏表が無くて
ハッキリと
物申す人だった
その人は
私を見て
体の弱い人ね
血の巡りが
良くないんだね
と霊視した
当時は若かったので
体のことを言われても
問題が無かったので
さらりと受け流した
ある日
あなたは
私の跡継ぎの
Yさんがいる
北に行けばいいのよ
突然言われたが
私は
その言葉に
ピンときて
北を目指すことを決めた
これが
私が海を超えた
理由だった
それからは
そのYさんと
電話で話すようになって
繋がるようになった
顔も知らない
その女性の声は
上品で
綺麗で
私の耳には
優しかった
当時の私は優しさにも
とても飢えていたので
まるで
神の声のように
聞こえて
きっとこの人なら
絶対に間違いなく
私を幸せに導いてくれる人だ
と盲目的に
その声を信じた
引っ越す前に
私はその霊能者と
Yさんのいる町に訪れた
顔合わせだった
Yさんは
お菓子屋さんで
働いていたので
店に向かった
電話でしか知らない
あの声の人に会える
そう思うと
ワクワクして
嬉しい気持ちと
期待する気持ちが
混じった
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