お肉の中で一番好きなのは羊肉、それもマトンが好きなのです。

 

 世の中には、鶏肉と豚肉と牛肉があるということしか知らずに一人暮らしを始めたのが18歳、大学のキャンパスがあった長野県松本市でした。アパートの近くにあった松電ストア(在学中にアップルランドという小じゃれた名称になりました)というスーパーの精肉売り場には、知らない名前のお肉がいくつも並んでいて、千葉のディスカウントスーパーしか知らなかった小娘にはちょっとした衝撃でした。馬の刺身とか、かしわとかマトンとかいう謎のお肉を見て「ずいぶん遠いところに来てしまった」と感じたものです。

 学生のお財布にマトンの小間肉はお手頃で、何の肉かも知らずに買いました。固いけれど、うまいというのが第一印象。学部に上がって長野県伊那市に引っ越した後も、ローメンというこれまた謎の麺料理はマトンを使うのが定番で、これまた私の大好物となったのでした。

 

 あの頃には考えられないほど、大きなかたまり肉をハナマサで見つけてえいやっと買いました。ずっしりと重たい冷凍肉は2000円超えのちょっと贅沢な買い物です。圧力鍋で煮込んで、今夜はマトンカレーです。

 マトンを噛みしめるたび、私のルーツはモンゴルあたりではないかと妄想してしまいます(ハナマサの冷凍肉は豪州モノでしたが)。ソウルフードというか、学生時代への郷愁とは別の懐かしさがこみ上げてくるのです。