日本も乳癌のリスクに応じた検診を始めるべきだろうか? | 広島大学病院乳腺外科ブログ ~広島の乳がん医療に取り組みます~

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朝はヒンヤリ、昼はカンカン照りで蒸し暑く、寒暖差に振り回される今日この頃、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

外来の患者さんから、風邪を引いてなかなか治らなかったという報告を受ける事が多いなぁと思います。

 

「医師の働き方改革」の問題は当直に引き続く連続勤務の問題もありますが、普段の業務だけが医師の評価とならず、専門医資格取得の勉強や学会準備や論文作成などは「自己研鑽」といって業務時間外の時間にこなさなければならないことも挙げられるでしょう。

 

 

しかし、しかし、子育て中の医師としては、病院の勤務以外は殆ど家事や育児に費やさないといけないため、どうやったら自己研鑽の時間を作れるのでしょうか。

 

私の場合は、洗濯物を干している時にワイヤレスイヤホンで講義動画を聞いたり、家事の合間の隙間時間を縫って資料を読んだり子どもの寝かしつけの後や早起きしてパソコンに向かったり、細切れの自分の時間をつなげて「自己研鑽」している状態です。

 

子どもを寝かしつけて、さあ論文の続きを書こうとパソコンに向かっていると、泣きべそをかいている娘が後ろに…!!ほどなくベッドに引き戻され、気づいたら朝になっていた事が何度あったことか…

 

 

 

さてさて、話は変わって、乳癌検診について最近気になった事です。日本では一律に40歳以上の女性全員にすすめられています。無料クーポンや一部費用の助成などあっても、日本の乳癌検診の受診率は40%程度で、欧米諸国が70%程度ある事を考えると低い受診率で推移しています。

 

それでは40歳未満の女性はどうかというと、国策として行う対策型検診の対象外のため、検診は任意検診に限られます。自費でクリニックで検診を受けると軽く1万円は超える出費となり、、若い世代はハードルが高いですよね。

 

実際に40歳未満の乳癌の患者は乳癌全体の頻度として5%程度なので、若い世代の人全員に検診をすすめるメリットはないかもしれません。しかし、40歳未満の乳癌患者は40歳以上の患者と比べ進行した状態で見つかる事が多く、予後も悪い事も事実で、何とか早期に乳癌を見つけてあげられないかな…と思うのです。

 

若い人ほど高濃度乳腺(デンスブレスト)が多いとされ、乳腺に紛れてしこりが見つからない事が多いため、マンモグラフィは勧められない事はよく知られています。しかし40歳以上でもデンスブレストは4割くらいはあって、若年でもデンスブレストではない方もいます、、本当に検診って若い方に進められないのでしょうか?

 

若い人はブレスト・アウェアネスと言って、普段からの自分の乳房の状態を認識しておくことがとても大事と言われています。しかし、今の日本でブレスト・アウェアネスを若い世代がどれくらい認識しているのでしょう?

 

 

実は欧米では、ブレストアウェアネスも大事とされつつ、乳癌の家族歴から乳癌の発症リスク(オンライン上の選択式計算ツール)で計算して、そのリスクに応じて検診を始める時期を早めたり(身内の乳癌発症年齢の5-10歳前から)、検診間隔を調整する事を推奨しています。

 

日本人に有効な乳癌の発症リスクを計算するツールはないのですが、今後は日本人に適応するものができて、若い世代の乳癌の早期発見につながる事を願います。

 

「先生、うちの娘は早めに乳癌検診始めた方がいいですよね?」と若い娘さんを持つ乳癌患者さんに良く質問されます。若い世代の乳癌ほど遺伝性腫瘍の関りが深いので、リスクが高いと考えられるなら、自己検診でもいいので始めてもらったらいいのではと思います。

 

 

今日の担当は平岡でした。