美術作家 肥沼義幸の制作日記 -1001ページ目

リトグラフ

お久しぶりです。

スペイン旅行から帰ってきてから、油彩の作品は

しばらく置いておいて、ドローイング、版画、セラミックの

作品を本格的に作り始めました。


大学の時には、木版画しか経験したことがなかったので

ライクス・アカデミーに滞在できる二年間の間に、今まで

できなかった表現にチャレンジしてみようという訳です。


ライクスのグラフィック・スタジオにはシルクスクリーン、

リトグラフ、エッチング用の機材が常備揃えてあって

4月までの間に3枚のシルクスクリーンの作品にトライ

しました。僕は今まで木炭のドローイングをずっと描いて

きたせいか、線とトーンで絵を描くスタイルなのを知った

テクニシャンのゲフエイアンからリトグラフ(石版画)に

トライしてみたらとアドバイスをもらいました。



美術作家 肥沼義幸の制作日記

現在制作中のシルクスクリーン用の原画シート  



実のところ、2年半以上だれもリトグラフ用のプレス機を

使っていなかったようで、僕が久しぶりに使ってみようと

いう訳です。



美術作家 肥沼義幸の制作日記

   リトグラフ用のプレス機


リトグラフの制作工程は非常に長くて、まずは描くための

石を磨くところから始めて、その後、リトグラフ用の画材を

使い石の上に直接描いていきます。



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この石、半端じゃなく重くて、版画制作は絶対に一人では

できないということを改めて学びました。

ちなみに新たに磨けば、新しい絵が描けるので、この石

ぐらいの厚みがあれば200回は描けるそうです。

日本では、石が揃っている工房や大学は、あまりない

らしく、石自体も高価だそうです。

ゲフに、この石いくらなの?

と聞いたところ「20ユーロぐらいだよ。」とライトに言って

いました・・・200ユーロではないのですね。



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    リトグラフ用の絵の具



美術作家 肥沼義幸の制作日記

    リトグラフ用のローラー


さて、これからプレス機を使って刷るまでの工程は

非常に複雑で丸1日がかりです。正確に言うと2年半ぶりに

動かすプレス機にメンテナンスが必要で2日間に分けての

作業になりました。ゲフが1~10までの工程を英語で

丁寧に説明してくれたのですが、初めての経験の僕には

まったく覚えきれませんでした。これから1つ1つ学んで

いきます。



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翌日、プレス機のメンテナンスが終わり、いよいよ

待望の刷りです。シルクスクリーンを制作した後だった

ので、そのままの完成イメージで描き進めてしまった

僕はこの時点で初めて完成した作品が石に描いてある

原画と反転するという事実に気がつきました・・・

(石版の上に紙を置いてプレスして刷るので)。


画面中央に人物を描いたのであまり違和感がないの

がラッキーでしたが次回制作する時には気をつけな

ければなりません。



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     「 Untitled 」


木炭のドローイング作品と同じようにできるかなぁと

思っていたのですが、細かいトーンのニュアンスと

空間が表現できない反省点が残りました。



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同じテーマで描いた木炭のドローイング  


同じ白黒の作品ですが、木炭は非常にデリケートな

画材で定着液を吹きかけても、木炭は落ちてしまいます

がリトグラフの線は消えなかったり、複数の枚数を刷って

エディションがつけれるのも魅力的です。



美術作家 肥沼義幸の制作日記


スタジオに作品を持ち帰り、次回作のための研究中。