突然声を上げそうになるほど心に移る事を感動と言ってもいいのではないか、と思った。
もう多分行ってしまったアトラス彗星。きっと感動が得られると疑いもしなかったその滞在期間のワクワク感は、彗星に遭えるどころではなく巨大な雲に阻まれて実現しなかった。何日も何日も日没後通い詰めた事実は、その大きな怪獣のような黒雲が毎回自ら幕引きをした。
何気なく11月4日の未明5時頃、引き戸を開けて外に出て見た。ただ星を眺めるだけの為にだった。普通は目が慣れるまで1、2分はかかるのだが、この時はオリオン座が大きな位置を占め、一瞬にして目と心に飛び込んで来た。
それに1等星と言われている星がそれ以上の明るさで輝いていた。牡牛座の牛の目玉アルデバランなど、まるで本が読めそうな位に美しく黄色だった。
スバルは場所さえ分かれば何とか気が付くが、そうでなければ肉眼ではどれか分からない。それは小さな固まりで、西の空の上に薄くチロチロ見えるだけだった。
暫く眺めて、布団に入った。目を閉じてもそれ以上の数の星が、まるでプラネタリウムのようになった頭の中で、暫くは消えなかった。それは紛れもない感動だった。
その翌日は、もう十数回も見ただろう宇宙ステーションが、朝見られる事になっていた。これも未明で、5時32分に北西に低く見え始め、南西のやや高めの空を飛び、5時38分ごろ南東の低い空に見えなくなる、と予想が立てられていた。
寒いだろうと思い長いパンツを履き上にはジャージを着て、3分前には外に出た。まだ暗かったが、昨日とは時間が30分ほど遅かったのか星や星座は心なしか薄れていた。それでも、感動は残っていた。
急に地球の影から現れる宇宙ステーション。前以て方角が知れていなかったら、全天を見回しても分からないだろう。況してや家屋が立ち並んでいて、全体は見渡せない。幸い西側から現れる事が多いので、この点は助かる。
朝方と寧ろ夕方に私は見る事が多かった。宇宙ステーションは1時間半で地球を1周するので、1日に16回は回っている。夕方や未明の方がよく見えるし、見える時間は私の経験では5分から7分までが余裕があっていい。尤も7分以上は見た事がないが、この日は6分だった。
最初のころは2分とか3分でも見ようとしたが、見え出す方角は分かっていても見る事能わずの時が何度もあった。だから、短い時間には苦手意識があるので、見る事はない。
現われた! 宇宙ステーションが。1等星のように明るく、軌道を滑るように向かって来る。宇宙飛行士までは見られなくても400km離れた位の上空を飛んでいるのなら双眼鏡なら形は見えるだろうと考え、スマホと持ち替えた。意外と足が速い。だが、何の変わりもなく、動く星に過ぎなかった。およそ100mの羽を広げて飛ぶ、野球場に入る位の大きさの物体であるのに拘わらず。
またスマホを手に取り、動画に撮り、写真に収めた。私の正面、目の上を通り越した。そして段々南東に抜けて行く。ずんずんと遠ざかり、もう1等星などの明かりではなく、あっと言う間に6等星位に暗くなり、さらに暗く、ある位置で消えてしまった。
地球の影に隠れるまで見送ったが、初めて見た時の感動を確かめながら、乗り組んでいる宇宙飛行士たちの事を思った。1日に16回も地球を回り、下りたくても下りられない。それを、何ケ月も乗っている。私には何もかにもがレベルを遥かに超えていてとても考え難い営みだが、こうして宇宙を人が飛んでいることにただ凄いと思う。そうして、地上から宇宙への感動を貰っている。