天候には恵まれなかった。
70年に1度しか出会う事のないポン・ブルックス彗星を見る事も送る事も出来なかった。ひと月位はいる筈だったが、雨や曇りや厚い雲などの為に、よく見える予想の日にも嫌われた。5等級辺りの明るさ、寧ろ暗さと言った方がピッタリ来るような話だが、どれがそうなのかが双眼鏡でも分からなかった。動いて見えるならまだしも、いちいち驚かされたのがヘリコプターか飛行機かだった。
双眼鏡をぶら下げた老人をどう思っているのだろう。90度曲がって上ったり下りたりする車が心なしかスピードが緩んでいるように背後に感じられた。
すぐにコンクリートの低い壁があり、そこからは西側の見晴らしが気に入っていた。ただ残念なのは、周囲の灯りの1つが眩く空の1部を見え難くして、星を見るのが簡単ではなかった。左手を左目に近づけて灯りを遮ると星は見えて来る。夜8時を過ぎると明かりが消されて行くが、車は駐車場から出なければならない。そうなると空一面星の輝く世界になるのだが。
4月20日は悪天候。21日には太陽の周りを回っていたその彗星は、惹きつけられるようにして消えて行き、もう会う事はない。その最後の日も悪天候だった。
その間、晴れた日にもカインズの2階に当たる駐車場の壁に行って空を見上げたが、彗星は見る事が出来なかった。何の収穫もなかったが、最近「すばる」を観ていない。肉眼では真っ暗でなければ見えないので、位置がはっきりしない。オリオン座の真ん中辺のベルトのような3つの星。因みに名前が付いていて、見上げて左からアラビア語でアルニタク、アルニラム、ミンタカと言う。それを右になぞって行くとおうし座の赤いアルデバランに目が行く。そこから緩やかに少し下りると星が6つ固まった「すばる」が双眼鏡の中に捉えられた。場所確認が出来たのは収穫だろう。
双眼鏡を覗きながら動かしていくと、突然点線のような紐が見えた。何だろうと一瞬には思い出せなかったが、追っているうちに思い出した。偶然にもこんな時があるのだ。それはスターリンク衛星だった。1基ずつの間隔が狭いのか25個位の衛星が縦に並んで、短く切った凧紐のように進んで行った。目を双眼鏡から離すと、どこに行ったか分からなくなった。7時40分頃から突然に見え始めた驚きだった。これもここまで何度も足を運んだ為の連鎖だったのだろう。
今日(25日)、夜明け前の朝5時頃かと思って時計を見るとまだ2時過ぎだった。ラジオ深夜便は眠っていても流れている。ふと昨日(24日)の朝8時49分が満月の全くまん丸の予定時刻だった事を思い出した。ピンクムーンと名付けられている満月で、24日の晩に見た月が普通は満月と呼ばれるのだが、私もそれでいいと思っている。でも、その晩は雨だった。正確には満月前の23日も雨なのだった。
2時過ぎでも、外に出てみた。目が慣れないから明るい星が1つ見えたが、天気予報では最近の唯一の晴れだった筈だ。だんだんに見え始め、右の低い位置に北斗七星が見えた。玄関先で見ただけだから月は見えず、頭が覚醒する前に布団に入るとすぐに寝落ちした。
3時半頃だっただろうか。3時過ぎからは日本の歌が流れるのだが、懐かしい曲が流れていた。伊東ゆかりの歌が流れる時間だったから「恋のしずく」と「小指の想い出」が流れ、この2曲はメロディーも歌も歌い方も惹かれるように好きだったから、よく聴いたものだ。彼女の歌ではそれ以外は余り聴いた覚えがない。
4時前には各地の天気状況が流れ、4時になると5分間のニュースの後、さまざまな成功者の話が聞けた。今日は小林照子氏(コーセー)の芯のある話が聴けた。かなりのお歳だが、声も若く、語り口調も飽きさせなかった。
それからは眠る事もなくずっと聴き続けた。5時になった時、「満月がとっても綺麗に見えています。南東の空に」と言った途端外に起き上がった。すぐ横の通りから南東の方を見たが、満月は見えなかった。どうなってるんだろうとがっかりしながら道の反対側を見た。それは南西の方角だった。なんと大きな綺麗な月が低い電線の間に堂々と収まっているではないか。すぐにスマホで撮ったが、いつも大きくは写らず、どんな月でも同じ大きさだった。
確かに大きく綺麗に見えているから大きく写るかもしれないと期待はするが、このピンクムーンが一番地球に近づいているらしい。地球から月までの距離は約38万km
だが、この時は約35万kmまで近づいていると言う。
すぐに服を着替えてカインズの駐車場を目指した。入り口は鎖で車は入れないようになっている。車を車道の端に止めて、だだっ広い駐車場の真っ直ぐな短い坂を歩いて上がって行った。西の方の南寄りに明るい満月が輝いている。1台だけ軽自動車が置いてある。どう言う状況の車だろう。
1枚スマホで撮り、すぐに端から端へ西側に向かって走った。すると横に長く広い大きな雲に少し隠れ、恐るべき速さで完全に隠れてしまった。
24日が満月でも、25日も満月と言ってもいいのではないかと思える程、私の目には煌々とまん丸く見えていた。。
家の近くで撮ったのは2枚。カインズで撮れたのは1枚。家の近くでの2枚は真っ白で何の変哲もないが、雲に隠れるなど想像もしなかった東の端から撮った1枚は不思議なほど黄色で、うさぎがお餅を搗いているのまで見える。