むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがすんでいました。

 

いつのことなのだろう。どこに住んでいるのだろう。どんなおじいさんとおばあさんなのだろう。昔話は、こんな手法で事細かくなく大らかだ。私も、そんな気持ちでブログを書いてみようと思った。

 

まず19日は父の日だった。ある人から焼酎が送ってきた。私にも送って貰って感激もする。「せごどんはなたれ」と言う名の芋焼酎だが、初垂れ(はなたれ)だけを集めた贅沢で希少な焼酎だ。蒸留されタンクに溜まり、一番最初に滴り落ちる1~10

%の部分だ。

 

何度か飲んだ事はあるが、またこれは違った味がした。豊かな芳醇な味、深い味。これだけでわかるだろうか。早速に、一番のお勧めのロックで飲んだ。グラスに氷を沢山入れ、そこに初垂れを注いだ。ほんの少し口に入った途端に、普通の焼酎と味が違った。43度は、私にはぐいぐい飲めるものではなかった。少しずつ薄くはなったが、それでも濃い味だ。

 

そのうち顔や体が火照って、すぐにでも寝転んで、素敵な夢が見られそうだった。まわりも速い。勿体なくて、まだ少し先まであると言うか、少し先まで残している。

 

さて、書き残して置きたいメインは20日の事である。まず気の置けない竹馬の友3人が、ある所で夕方から集まる会の前に昼過ぎからミスタードーナツで会った。気の置けない仲間だから、好きな話が続きながら、肩も凝ることはなかった。

 

内容は省くとして、私は前以て冗談交じりに言っていたように、ドーナツを3個食べた。遅いランチの為のもので、滅多に食べない甘いものはこうして多めに食べる。コーヒーは何杯お替りしてもよく、私は3杯飲んだ。話は飛び交ったが、時はゆったり過ぎた。1人が3個のうちの2個を既に用意してくれていてびっくりした。

 

昔話のように分からない曖昧な部分も残しているが、その後、5時半からと言われている会場に、5時前に着いた。主と女将が帰って来て扉を開けた。この日は貸し切りとなっていた。4人ずつ座れる鉄板付きのテーブルが横1列に4つ並んでいる。パーテーションで2つの部屋紛いに区切る事も出来るが、オープンで16人座れる席となる。

 

今回はこのお好み焼きや焼きそばなど、鉄板で焼けるものを中心とした食べ物でのお祝い会だった。この店の娘さんを祝う会で、男は12人、女は3人集まることになっていた。

 

O君はラジカセの機器を持って来てくれており、それをKi君はCDの伴奏を動かしたり止めたりしてくれる。その為、私は横長い入り口から2つ目の席奥にKi君と並んで座った。オカリナを吹くように言われていたからだ。この位置からなら両側にウイング状に音が広がる気がすると思ったからだ。

 

そこの主と女将は娘さんの両親で、娘さんの小学生の息子も最初は姿を見せていた。会が始まると旦那さんの姿も現れた。

 

5時半になると、会が始まった。車で来ていた女性の1人はノンアルコールの瓶ビールを注文していた。後は先ずは生ビールだ。私も乾杯はしたが、舐めるようにするだけだった。ピクルスさえも食べなかった。私とKi君の前には娘さん以外の2人の女性が座っている。

 

私は舐めるだけで飲まないので、生ビールは減る事もなく酔う事もなかった。「ちょっと飲めば」などと言う人もいたが、それはしなかった。Ki君と彼の前の女性は、お互いにビールのお替りをするタイミングを同じにして、同時に注文していた。もう4杯目だった。彼の前の女性は、「ビールなら幾らでも飲める」と言った。そこまで言えるとは凄いだろうなと思った。

 

話したり、生ビールを舐めたりしながら時を過ごし、1時間が経った。遂に私の演奏する時が来たが、私が主役でも何でもない。立つ事は簡単ではなく、不自由な中腰で立ってお祝いの言葉を言った後、演奏は座ってする事にした。

 

私の演奏会ではなくお祝いの為に吹くオカリナだ。以前依頼の時リクエストがあった曲も含め、ゆったり目の曲を6曲、約20分を用意していた。今までアルコールを口にしてからなら少し酔った状態で楽に吹けると思いながら、何度もこれで演奏がおかしくなった事も屡だった。今回は、飲まないでしっかりした意識で吹いたオカリナを聴いて貰いたいと思った。

 

皆はそこそこに飲み食い、私はビールを舐め水を飲んでいた。人は飲んでいても私は私なりのきちんとした演奏がしたかった。

 

演奏曲は、

 

1.栄冠は君に輝く

2.坊がつる讃歌

3.夏は来ぬ

4.故郷の山や海

5.かあさんの歌

6.祝い酒

 

アンコールがあったらと3曲用意はしていたが、もしあっても1曲だけにしようと考えていた。寧ろ、祝い酒で終わりたかった。

 

1番と6番はリクエストがあった曲で、どちらもオカリナの伴奏としては、探してもなかった。しかし、何曲もの応援歌の入っているCDが見つかり、しかも「栄冠は君に輝く」には歌う為の伴奏も入っていた。すぐに購入する。

 

「祝い酒」は坂本冬美の歌3曲とそれぞれのカラオケが入ったCDがあった。演歌を好きで歌う人は絶対に欲しいCDだろう。これでリクエストに対して義理が立つ。丁寧にも坂本冬美と同じキーのカラオケと半音低いカラオケが入っている。

 

「栄冠は君に輝く」は、アルトC管で吹くとカラオケより音が高くなる。何とか息を殺して吹くと音にならないし、到底正しい音程では人の耳に聞こえない。それで考えたのが大沢トリプルオカリナの漆塗りのソロ用だった。息の強い人用で、それでは余計音が合わない。私が買ったのは、私の普通の息で吹いて綺麗な音だと思ったからで、本当はとても強い息で吹かなければ442Hzには合わない代物だった。

 

宝の持ち腐れになっているが、「ボレロ」の後半を吹く時だけはお見切り強く吹き音量も上げられて、それだけは役に立っている。勿体ない買い物だったが、知識も持たずに買うのは銭失いか箪笥の肥やしになるだけであると分かった。或る人には最高のものになるし或る人には最低のものになる。

 

がしかし、それこそ息を弱くして吹けば、この曲には合いそうだった。それで解決したかと喜んでいた。ほんの少しの違和感は否めなかったにしても。しかし、私の娘が何気なく聴いて、「音が合っていない」と指摘してくれた。確かに、気持ちよくは吹けていなかった。

 

その日は18日で、演奏する日は20日なのだ。これでは駄目だと自覚したが、いい加減な音で聴いては貰えない。再び無い知恵を絞った。そうだ、私はアルトC管に拘っていたが、アルトB♭管を持っている。そう閃いてすぐに試してみた。何とそれで普通に吹いて気持ちよく合う事が分かった。3コーラス目は1オクターブ上のソプラノB♭管で吹きたいが、そのオカリナも持っている。九死に一生を得た気分で、娘に感謝した。

 

私とKi君の間の座席の狭い空間に、持って行った9本のオカリナを所狭しと重ねながら並べた。

 

最初「栄冠は君に輝く」を吹き始めた時、音がおかしいと思った。アルトC管で吹いたのだ。すぐにアルトB♭管に替えて、初めから吹いた。とても気持ちよく吹けた。口ずさんでいる人もいて、幸先がいいと感じた。それは愛嬌に過ぎなかった。

 

私の心は、何一つ動揺していなかった。1日前に分かって修正出来たからだった。1コーラス済んでも拍手が飛んで来たのは意外だった。それは、情感を込めた独りよがりにならない演奏が出来たからだと思った。

 

「坊がつる讃歌」は、秋田のローズマリーさんたちのギター伴奏をしているU田さんに依頼した生伴奏を入れたCDで演奏した。2コーラスまではアルトC管、3コーラスはソプラノF管で演奏出来るように伴奏して貰っているが、素敵な伴奏に仕上がっている。

 

「夏は来ぬ」はアルトC管から3コーラス目はソプラノC管を使った。その方が、聴く人にとっても変化があっていい。皆よく知っている歌でこれも口ずさんでいるが、きっと童謡や唱歌は懐かしいのに違いない。夏が来たんだからこの曲にしたが、聴く人の望みや気持ちも垣間見た気がする。

 

14年位前に「イカロス」と言う3連のオカリナに魅力を感じて、お願いに漕ぎ着けてから、7か月経って入手出来た。その喜びは今も覚えているが、3連のオカリナの為に作った曲が「故郷の山や海」だった。最初は「出雲の山と川」だったが、限定し過ぎだと思い普遍的に近いこのタイトルにした。伴奏曲にしてくれたのは私の甥で、今はベースギターのプロとして活動している。一か月半オランダにいると言っていた。

 

「かあさんの歌」は、ずっと吹き続けている小さな白いソプラノB♭管だけで吹くが、この曲でも涙ぐんでいる人がいた。この曲だけではなかったようだが、浸って聴いてくれている人がいるのはとても嬉しいものだ。

 

最初から私の右手のテーブルには斜交いに娘さんの旦那さんが座っているが、とても興味深く私を見ているのが朧げに分かった。隣の人に私の事を聞いているのだろうかと思える程に、その人と時々短い話をしているようだった。

 

「祝い酒」は、1曲を2度聴いて貰おうとずっと思っていた。最初か後かは別にして、歌だけとオカリナだけにして。しかしどう考えても同じ曲を2度聴くのは辛いだろうし、すっきりしない。それで考えたのは、3コーラス全部坂本冬美さんが歌って、私は2コーラス目だけオカリナで吹く事だった。これは自分ながらいい考えだと今も思っていて、結局何のストレスもなかった。

 

「坂本冬美さんをお連れしていますが」と言った時の微かな驚きと期待は面白かった。「CDで」と言った時に笑いが起きた。今回は、一切曲目は知らせていなかったので、曲名を聞く度に何らかのアクションがあったのも愉快だった。

 

終わった時はほっとした。やっと飲み食い出来ると思った時、何人かが「アンコール」と言った。自然体で演奏出来たし、気持ちをしっかり込められたと思った。また儀礼的なアンコールでもなかったように感じた。サン=サーンスの「白鳥」を、それしか吹かない3連の「イカロス」で吹いた。気持ちが緩んではいたが、これこそ美しく吹かなければならない。

 

ローズマリーさんを思い出した。彼女は「白鳥」は3連の大沢オカリナ「アニバーサリー」で吹く。「イカロス」と「アニバーサリー」は音色も吹き口の間隔も違う。私は「イカロス」でしか吹けない。だが、マリーさんの「アニバーサリー」で吹く「白鳥」は素晴らしく絶品だ。太刀打ちは出来ないが、その美しさを今も感動と共に思い出す。

 

終わった。気持ちは最高だった。こんな風にリラックスして吹けた事が今までにあっただろうか。私は今から何回か唇を湿らせていた生ビールを、グーッと飲んだ。幹事さんが気を利かせて「次も生ビールにしますか」と言った。「うーん」と言っていると「焼酎がいいですか」と聞く。彼の飲んでいるのを見て「それ何ですか」と聞いたら「赤ワインです。白ワインにします?」と言って赤ワインの入っている生ビールと同じジョッキを見せた。「赤ワインにします。半分で」と返答した。

 

お好み焼きや焼きそばを少しずつ皿に乗せて食べたが、それはとても美味かった。赤ワインが来た。何となみなみと一杯に注がれた赤ワインだった。これは素直に体に入って行った。

 

旦那さんが私に聞いて来た。「CDがありますか」「えっ? 作ってはいますが」「それ貰えますか」「ここにはないので、帰ったら送ります」と言って、実際にはもう21日に送っている。何が嬉しいと言って、初対面の旦那さんと初めて出会ったばかりでなく、初めて私のオカリナを聴いて、すぐにCDが貰いたいと言って貰えた事だ。

 

まあ未熟なオリジナル12曲で2013年11月28日に出来上がったものだ。事情があって2時間で12曲を一発録音したもので、拙いのは棚に置いて、満足出来ていない。今度作る機会があったら、出来るだけ満足の出来るCDを作りたいと思う。

 

旦那さんはこんな事も言った。「『故郷の山や海』のCDはないのですか。あれはよかったですね」と。他の人も何人かが「あれはいい曲でした」と言ってくれた。こんな嬉しい事はない。

 

左側のずっと奥に座っていた人が私のそばに来て、「オカリナは素人で初めてですが、どんなのがいいですか」と訊ねる。「アルトのC管がいいと思います」と言って、どこで購入したらいいかもお知らせした。その人は、オカリナは初めてでも音楽性に富み、トロンボーンを演奏して来た人だった。

 

色んな事が学べたし、嬉しい事があったし、爽やかな気持ちになれた1日だった。こんなオカリナ冥利に尽きる日があったなんて。指は痺れ穴も確実に抑えられない事もあっても、何だか自分がリセットされて、初心に帰ったような気になった。