見る、見ない、無関心。

 

人の思考や感情や行動は、全て似通っていても、同じではない。不思議と絡まって、様々な状況を生み出す。今日(21日)の397年振りと言われている木星と土星の超最接近の姿を見る事にしても、先ず上の3つに分かれるだろう。

 

山陽電車で別府(べふ)駅に着くと、バス停で1人、私に手を振っているK君がいた。スタバでO君とコーヒーを飲んで待っていると言っていたので、私もその店に行こうと思っていた。O君は私を探しに行ってスタバから戻って来た所だった。まだ20分はあると言うのに。

 

普通のバスが半分になったような可愛いバスは、15時14分に発車した。バスストップで降りると、すぐ近くの「しのべクラブ」へと歩いた。2人は、関心を持っていた。3人の心は、見る事に決まった。

 

桜の間は、20人は入れる。そこは最高の部屋だ。午後5時半からなのでロビーで話していたらHさんがやって来て、

 

「部屋に入っていましょう」

 

と言った。すると三々五々、人が集まって来た。時間までにちゃんと集まって来るのが面白い。開会時間が迫っていた。私とK君とO君は外に出た。私は場所は分かるので、その姿に静かに感動していた。余りの接近に、誰が計算しているのだろうと思った。2人は、どこに見えているのか把握し難かったようなので、指で示した。まだそんなに暗くなっていないので、見え難かったのだろう。Okさんがやって来て、一緒に見た。

 

下が明るくて大きい方の木星。その上の少し右側の暗くて小さな方が土星だ。先ず私の中の第1ミッションは無事に終わった。

 

もう始まろうとしていた。13人集まる事になっていた。この時世に忘年会と言って騒ぐのは憚られた。宴会も言葉が派手だ。私は、密かにマスク忘年会と思って自制していた。

 

「乾杯」

 

以前の公民館長が音頭を取った。鍋は1人に1つのすき焼き鍋で、後は幾つかの皿に入れられた枝豆やポテトチップス、唐揚げ、鰯のフライ、玉子焼きなどが並んだ。遅くなると言っていた2人が入って来て、またまた

 

「乾杯」。

 

1人は女性。それからまた入って来たのが女性だった。

 

「乾杯」

 

これで13人が揃った。最後に入って来た女性は、何だか中島美嘉さんに似ていた。

 

K君と私はまた外に出たが、暗くなっていて、初めよりはよく見えた。ビールも喉を通っており、気分も良かった。部屋に戻って、

 

「今、よく見えますね」

 

と言ったら、数人が出て行った。それでも、見ない人や無関心な人はいた。どうしても見なくてはならないものではないから、それはどうでもいい事だ。

 

戻るとまた、ビールを飲んだり食べたりした。ビール、焼酎、ウイスキーがある。日本酒も後から出て来るそうだ。私は決して飲める口ではないので、後はウイスキーの水割りにした。一人ひとりにトングが置いてあり、それで皿から取るようになっていた。

 

やっぱり人は集まると楽しい。況して飲んだりするのは晩酌程度で、語りながらの機会が全くなかった。話が弾んでいた頃、Kiさんが、今から私がオカリナの演奏をすると言った。K君はO君が持って来たラジカセに、私の伴奏CDを入れて流す役目をしてくれた。

 

譜面台を立てて準備した。

 

最初は、プラスチックオカリナで無伴奏のクリスマスソングを吹いた。もうすぐクリスマスなので、そんな雰囲気も味わって貰おうと思った。「きよしこの夜」「ジングルベル」。そして「ホワイトクリスマス」を吹く前に、白い半透明のプラスチックオカリナのボタンを押した。赤、緑、青の明かりが目まぐるしく点滅した。これを見て貰う為のオカリナだった。私は飲んでいるので息が荒かったが、皆はその明かりをじっと見つめていた。

 

「そのプログラムに書いてある演奏をしますが、アンコール用の曲を4曲用意しています。アンコールがある場合は、声を上げて下さい」

 

そう言っておいた。

 

「飲んでしまったので、上手く吹けません。飲んだら吹くな、吹くなら飲むな、と言う言葉があるのに、飲んでしまいました」

 

と言ったら、皆が笑った。私の中では、もう間違いがあっても気にしないぞと、大きな心になっていた。

 

坊がつるは、Kiさんの故郷だ。大分県竹田市がそうで、「坊がつる讃歌」はそこで生まれた。Kiさんが好きな歌で、私は秋田のUさんにギター伴奏でCDを作って貰っていた。Kiさんの為にと言っても良かった。九州大学の学生が1952年に小屋番のアルバイトで暇に任せて9番まで作ったと言う。後に4番までを芹洋子が歌うようになり、1978年第29回紅白歌合戦に、この歌で初出場を果たしている。

 

2番まではC管なので皆に歌って貰い、3番はF管で吹くようにギター伴奏をして貰っているので、オカリナを持ち替えて私だけで吹いた。多分歌い難いと思ったので。

 

「皆に歌って貰って、嬉しかったです」

 

と、Kiさんは言った。

 

次の「虹の彼方に」は、知らない人もいたようだった。これはE♭管で、吹く方も音階面で変化があって面白い。ポポロ独特の、掠れた音のするのも面白い一因だ。

 

次は「シルクロード」をトリプルオカリナ「アニバーサリー」で吹いた。アルトC管だけでは、高音を1オクターブ下げて吹かなければならず、少なくとも私には面白くない。これは、喜太郎が作った曲だが、かつて「NHK特集 シルクロード」の番組で流されていた曲だ。この曲が大好きなHさんは、その事を頻りに、私に3回も話した。こんな時、吹いて良かったと思うのだ。選曲の大切さは、そんな所にもあるように思う。

 

「ウイスキーもある事だし、最後は『ウイスキーが、お好きでしょ』を演奏します」

 

と言った。伴奏が色っぽいので、こんな雰囲気の場では喜ばれるのではないかと思って選んだ。一つひとつ拍手をしてくれるのが演奏冥利なのだが、ちょこちょこ間違った所もあった。それでも、皆も酔っているだろうと思って、気は依然として大きかった。

 

アンコールの掛け声が、やっぱり掛かった。最初にあそこまで言っているので、掛けてもらえなかったら惨めだろう。

 

「それでは4曲用意していますが、アンコールで4曲も吹くのは皆さんも疲れます。1曲でいいと思いますが、4曲の中で2曲決めて下さい」

 

そう言って、曲目を伝えた。本当は吹きたかった「紅蓮華」だが、鬼滅の刃のテーマ曲だと言っても、反応しない人もいた。これは仕方なく止めにした。「花は咲く」は長い(5分)し変化に乏しいので、ここの今の状況では吹かない方がいいと判断して止めた。

 

「第九~歓喜の歌~」はすぐに決まった。1分で終わると言った所為もあるかも知れない。どうしても吹きたかったのが「東京ららばい」だった。最後は、これで締めたいと思っていた。1週間前に楽譜とCDが届いたが、練習し出したら、なんと楽しい曲だろうか。歌詞は寂しく、すねて諦め、それでも探す愛と幸せ。そんな事知ってか知らずか、これも決まった。

 

♪午前三時の東京湾(ベイ)は

  港の店のライトで揺れる

                 ・

        ・

        ・

  東京ララバイ 地下がある ビルがある 星に手が届くけど

  東京ララバイ ふれ合う愛がない だから朝まで

  ないものねだりの子守歌

 

  午前六時の山の手通り

  シャワーの水で涙を洗う

                ・

        ・

        ・

  東京ララバイ 夢がない 明日がない 人生は戻れない

  東京ララバイ あなたもついてない だからお互い

  ないものねだりの子守歌

 

  

   東京ララバイ 部屋がある 窓がある タワーも見えるけど

  東京ララバイ 倖せが見えない だから死ぬまで

  ないものねだりの子守歌

   

歌詞は悲しく曲は楽しい。だが、悲しさを楽しくは演奏出来ないから、私は歌詞は、♪午前三時の東京ベイは、と♪午前六時の山の手通り。そして♪東京ララバイ、だけを演奏の時に頭の中で歌うことにしている。

 

曲は踊るようなリズム感があり、伴奏にとてもパンチがある。歌う人も、果たして悲しい気持ちで歌うのだろうかと思ってしまう。オカリナ吹きの私にしてみれば、曲も伴奏も面白くて止められない止まらない「東京ららばい」だ。

 

この曲を知っている人が少なからずいたし、途中、間奏が始まる時に起きた拍手が半端ではなかった。これは、私が何処かで吹く時には、一番最後に入れようかと思った程だ。オカリナも喜んでくれると思う。

 

オカリナの音色が好きだと、何人もの人が言った。ざわざわと「鬼滅の刃」と言う声が上がっていたが、ここでしっかりと終わりにした。過ぎたるは及ばざるが如しだ。

 

嬉しかった事がある。トロンボーンを吹くと言うOkさんが、遠くの席からも、私の席に近く来た時にも、こう言った。

 

「音程がしっかりしていて、4百4十・・」

 

「442Hzですね」

 

「それが正確に合っていて、とても感動しました」

 

と言った。中島美嘉さん似のピアノをやっていると言うSさんも、Okさんの方を向いて頷いていた。音程の事には以前は余り関与しておらず、強過ぎて高いと言われていた事はあった。だが、今はとても関心がある。自分の音の高さを確認しながら練習する。それを今回音楽の分かる人に言われて嬉しかったのだ。

 

Okさんの言ったこの言葉がそれを証明してくれたし、褒めてくれたのもお世辞ではないと分かった。

 

「あの最初の曲は音程は合っていなかったですね」

 

それは初めから分かっていた。。プラスチックのオカリナは、余程強く吹かなければ442Hzには合わない。何度も、穴の全部を少し開けて半音は高くなるように、吹き易く調整しようかと思っていたからだ。アカペラなら、どんな音程でも、メロディーが確かなら聴いて貰えると思っていた。しかし、音楽をやっている人は、しっかりと音を聴いているのだと、飲んでいるにも拘らず耳はしっかりしているのだと思い知らされた。ピアノの出来るSさんも2人共絶対音感の持ち主かも知れないと思った。

 

8時半にはお開きとなった。私とK君は別府駅までバスに乗り、電車に乗った。話も尽きず喋っていると、山電垂水駅に着いた。K君は何処かで地下鉄に乗り換えて、名谷駅で降りなければならない。彼も、私のオカリナを喜んでくれた1人だ。

 

 

1晩寝て起きて、今日(22日)も午後5時半過ぎだったが、木星と土星のコンジャンクションを見た。ちゃんと見えたのはラッキーだったのかも知れない。木星は左。土星は右に並んでいた。晴れていたら暫くは毎日見てみたい。離れ具合や位置などを確認するだけでも、楽しさが増す。

 

2つの星のグレートコンジャンクションは、正にスケールの大きい、400年の夢の実現だった。