多分、こんなタイトルを付けたら読みかけてくれる人も増えると思うが、それは読み手には何の成績か分からないので、分かるまでは気になるだろうから。そんな誘い水でタイトルを付けたのでは決してない。そこまで意地悪ではないと思っている。
「あんたは情けないねえ。ちゃんと脇を締めないと」
「あー、うー」
9時前のクリニックの待合室に響く声。80歳は越えていると思われる老夫婦だ。体温計を渡されて、体温をはかるのを指図しているのだ。まるで子供に感情をぶつけている母親のようだった。
「何、無い? 情けないねえ」
5人位の受診を待つ人が聞いている。私も、見ないようにしていたが顔を見てしまった。
「上を脱ぎなさい」
推測では、高齢で喋り難くなっていたり、その他の原因があったりしているのだろう。老婦人は、暑いと思って脱ぐのを促していたのだろう。何度言っても分からないようだ。
「これ。これを脱ぎなさい」
とうとうその服に掴みかからん程の勢いだった。大きな声だから、誰もがそちらを見た。
「体温計がない? あるでしょう。情けない」
そう言って2つの体温計を持って受付まで歩いて行った。2つの体温計を重ねて。
「私はこっちで、これはあっちのです」
細身の婦人は、かなり腰を曲げて戻って来た。
私の近い将来と重ねてみた。好きでこのようになる者はいないと思う。家ではもっと凄い言動が行われているだろう。想像するに難くはない。誰しも昔からそうだった訳ではない筈だ。老婦人にしては堪らない日々だろう。それが昂じて、もう人目を憚らない行動パターンが出来てしまっているのだろう。
2人の関係性までは分からないし、分かろうとも思っていない。この逆だってあるかも知れない。ただただ私には、この言葉が溜まらなく突き刺さる。
「あんたは、情けないねえ」
診察室からマイクで名前が呼ばれた。このマイク、ちょっと聴き辛い。私の前の元気そうな老婦人が、
「名前呼ばれませんでした。〇〇子さんて言ってましたよ」
「わたしじゃないでしょう。あんたでしょう」
ありがとうとも言わず、
「早くしなさい。あんたを呼んだんでしょう」
「こ」が付いているから女性だと思ったのだろうが、連れ合いに転嫁した。
また診察室から呼び返された。元気そうなこの老婦人と仲良く話していた目の前の痩せた男性の名前だったのだ。苗字の最後の文字が「こ」だったのか。その人が診察室に入ると、この元気そうな老婦人は誰に言うともなく言った。
「歳を取ると耳も聞こえ難くなるし、何を言ってるかわからない時もあるし、体も言う事をきかなくなるし」
情けなく、気も落ち込んで行く待合室。言葉から、マイナーな雰囲気が漂う。気分や運気は言葉や思いによって上下するものだと実感した。私は1ケ月に1度、薬の処方箋を貰う為に来ているが、戸が開く8時半には来た。既に1人の婦人が座っていた。
薬局で薬を貰って出たのが9時30分頃だったから、1時間で終わったのは早い方だった。
ああ、成績表の話。こんな所まで引っ張ってと思わないで欲しい。9月末に検査して貰った結果を、今日聞く事にしていた。
「神戸市国保(後期高齢者健診)成績表」
無料の検査の成績表を貰った。血液検査で分かる範囲ではあるが、無料なのは有り難い。オプションは受けなかった。
その簡易な結果ではあるが、よく分からない「平均赤血球血色素量」の測定値が34.1だった。基準値が28.0~34.0だから、これは0.1だけ高い事になる。それだけでマークが基準値の横の高い方になっている。
もう1つある。これは十分な自覚がある。中性脂肪だ。大分正常値に近くはなっているが、今までその数値が高くてもどこ吹く風と思っていた。有る時から。
30年は昔、同僚の女性が私の結果を見て他の人に言っている言葉を、今でもはっきり覚えている。
「あの人、死ぬよ」
今思えば、とてつもない結果だったと思う。それから、少しずつは気を付けるようにしての今である。「中世死亡」とはよく言った高脂肪には気を付けないといけない。
他にこの結果からは悪い所はないそうだが、自覚症状も結構ある。この検査で全てが大丈夫だと言う事はない。目安として、少なくともこの結果からだけでも気を付けなけれればならないと思う。氷山の一角の「成績表」だ。
こんな言葉、久し振りに見た。実際の体は、ガタガタと軋んだ音を立てている。