ははっ、真実年金暮らしの私が、こんなタイトルを書く事さえ、夢のまた夢だ。
私の仲間に、私の自作のオカリナを気に入ってくれた友がいる。こんな事、書く必要も何もない。仲間と言っても、私がオカリナを演奏していなかったら、ここまで親しくはなっていなかっただろう。
私の、オリジナルのオカリナCDの2、3曲を聴いて、すぐに電話があった。同期として退職した人物だ。もっと親しい仲間はいるが、彼が電話して来るなんて、初めての事だった。
「感動した。誰でも知っている曲ではなく、オリジナルの曲でここまで演奏するなんて、あと聴くのが勿体なくて電話した」
はっきり言って、大したCDでも何でもない。タイトルは「望郷」と名付けている。一発勝負で演奏するのは、かなり緊張する。時間が勝負だったからだ。エンジニアとの約束時間は2時間だった。12曲録音出来たら、それでCDの制作となる。今では欠陥が耳に付くが、制限があるから仕方がなかった。その前に、実力がないのが問題ではあった。
彼は、そんな私を驚いてくれたのだ。私が、オカリナを演奏するなんて思ってもいなかったからだろう。彼は、年金暮らしの私の比ではない。誘われて、彼のオーディオルームに1度だけ行った。彼はオーディオマニアで、年に何度か彼の仲間とCDを聴く会を持っている位だ。
壁面のCDの数には驚いた。彼が手掛けたオーディオの費用は凡そ3,500万円だ。私の自慢出来るラジカセは、15,000円位だ。彼は、私のCDをこのオーディオで聴いても、何の歪みもないと言った。エンジニアは私に言っていた。NHKで流されても、音響は通用する、と。それが、ここで実証された。私の実力ではなく、音の再現がである。防音の部屋で、私は思いがけない私を聴いた。
退職以来、10数人の同期の仲間は年に3度は会って来た。その帰りに、彼は私に近付いた。
「オリジナルが良い。早く次のCDを出して欲しい。幾ら位で出来るの」
と。
「お金は有り余るほどあるから、僕が出すから」
と言った。そして、その日だけではなく、何度彼は会う度にそんな事を言ったか。私は、言った。
「30万円あったら出来ると思うけど」
「いつでも言って。そんなもんでいいの?」
私は、彼の気持ちは嬉しかったが、「では、作るから30万頂戴」なんて言える訳がない。まだ、更に12曲入りのCDは作れるが、また自分で作るだろう。彼が仲間でなかったら、スポンサーと見做して出して貰ったかも知れない。けれど、売れる筈もないCDに、スポンサーなんている筈もない。私は、プロではないし、自分で作るのが当たり前だろう。
下らない前置きがまた長くなった。
メルローはご存知だろうか。フランスのブルゴーニュで作られるワイン。タイトルの「シャトー・ル・パン」は、1.9ヘクタールの小さな農園で作られる上質のワインだ。これは、流通価格で大体1本30万円だ。年間7,000本しか出来ないと言う。年金暮らしの私が、無関係な超高価なワインの話をするのも、自分でも疑問がある。無理にくっ付けるなら、このワイン1本と、CD制作の値段が一緒だと言う、それだけの事だ。
さてさて、これからが私が書きたい事である。22日の夕方から1日2回飲むピロリ菌退治の薬の服用が、今日29日の朝で終わった。1週間の服役。
ボブサップじゃなくてボノサップパック400。長かった。朝飲んだ時は、感動すらあった。1週間守るのは、そんなに楽ではない。1回抜けたら、ピロリ菌に効かなくなるのだから、飲んだかどうかに緊張もした。
何が嬉しいかって、飲酒が解禁となる。昨日(28日)スーパーで選びに選んで買った葡萄酒が、メルローだった。安いと言えば「シャトー・ル・パン」の300分の1の値段である。3桁の値段だ。それでもワクワクした。明日は飲める、と。
今、750mlのボトルが、半分になっている。また注ぐ。少し前に夕陽に照らして見た。そのワイングラスに透けた透明の深紅。 美しい。 美味い。 このまま飲めば、1本は開いてしまう。でも、1週間断って来た結果の芳醇な至福の時。 美しい。 美味い。
まだ検査があるが、1ケ月後だ。それから1週間後に裁断が下される。
それより、フランスブルゴーニュのワインがここにある。「シャトー・ル・パン」の、幾ら安くてもひ孫のようなワイン。十分。これで十分だ。自分の丈に合わせて満足する事が、幸せの極意である。
私が今、万一可能と言うことさえも絶対にないが、今飲んでいる3桁のワインと、6ケタのワインをほんの少しでも、比べて飲めたら、と言うアホな希望を持つ自分が可笑しい。
4月は明日で終わる。今日の丑三つ時、ラジオ深夜便を聴いた。ポルトガルのパド、「ポルトガルの4月」と言う曲を。何故か懐かしく、楽譜があればオカリナで吹きたい。パドの切ない音を、オカリナで奏でられるように。
1週間も断酒した私を褒めてあげたい。