朝の激しい雨風も、長くは続かなかった。
昼過ぎに西宮北口に着くと、マルゲリータとフリードリンクで昼食にした。コーラ、十六茶、レギュラーコーヒー2杯。窓際から外の木々の緑がちょっとの安らぎを齎し、低い雲の下を飛行機が飛び、軈て雲に隠れた。
芸文センター大ホールは、9割位の入りだった。世界最古と言われているゲヴァントハウス弦楽四重奏団は1809年に誕生と言う歴史を持つ。
ハイドン:弦楽四重奏曲第77番ハ長調「皇帝」op.76-3Hob.Ⅲー77
第1楽章アレグロ
第2楽章ポーコ・アダージョ・カンタービレ
第3楽章メヌエット,アレグロ
第4楽章プレスト
美しい、端正な曲を聴いた。
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番へ短調「セリオーソ」op.95
第1楽章アレグロ・コン・プリオ
第2楽章アレグレット・マ・ノン・トロッポ
第3楽章アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ・マ・
セリオーソ
第4楽章ラルゲット・エスプレッシーヴォ
変化のある勢いのある曲だ。セリオーソとは、厳粛なとか真剣なとかの意味があるそうだ。
ハイドン(1732-1809)とベートーヴェン(1770-1827)の曲想の比較が出来、それは際立っていた。これの演奏者は、フランク=ミヒャエル・エルベン[第1ヴァイオリン]、チョ・ユンジン[第2ヴァイオリン]、アントン・ジヴァエフ[ヴィオラ]、ユルンヤーコプ・ティム[チェロ]。20分の休憩の後、第2ヴァイオリンの女性が抜け、コントラバスの加藤雄太が入った。そこに仲道郁代のピアノが加わった。これは流石に神業と言って良かった。
シューベルト:ピアノ五重奏曲イ長調「ます」D.667
第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェ
第2楽章アンダンテ
第3楽章スケルツオ,プレスト
第4楽章アンダンティーノ
第5楽章アレグロ・ジュスト
「ます」をここで初めて終わりまで聴いた。昔々学校で「ます」の曲や歌を教わったが、それが「ます」だと思って来た。第4楽章が正にその「ます」を見せつけた。何と素敵なのだろう。そんな気持ちになったのは、恐らく初めての事だったろう。コントラバスはお腹に響き、ピアノは圧巻だった。それは、第1楽章から第5楽章まですべてに言える事だった。仲道郁代のピアノはここまで心を華やかにしてくれた。4楽章の1部分でいいから、オカリナで吹きたいと思った。シューベルトの素晴らしさが窺える「ます」だった。
アンコールの拍手は演奏するまで続いた。アンコール曲は第3楽章のスケルツオ,プレストだった。今日の演奏者6人は、これが自分の人生を掛けたものなのだ。ここまで演奏出来たら、これは一生続く営みになるだろう。
第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピアノ。一人ひとりが違った楽器で、ここまでのスゴ技の演奏でハーモニーを奏でる。この2時間は、まるで1年位が集約されたような素敵なひと時となった。
仲道郁代さんのあのウスバカゲロウ色をしたステージ衣装が美しく、3階の遠くから俯瞰したのにも拘らず、あの譜面を立って捲る時しか動かぬ黒色の衣装で黒子に徹していた女性と共に、いつかまた思い出すだろう鮮明さが脳内を巡っていた。