送って来た木の箱の中には、地味な金色の布に丁寧に寝かされた焼酎が紫の紙に包まれ、それは赤い紐で結ばれていた。

最高級本格芋焼酎。紫色に銀色で印刷された文字は動かすと不規則に光り、とても読み取り難い。すっぽりと焼酎の瓶を抜き出して、あちこちに角度を頻繁に変えながら、読み取ってみる。

特別限定品。杜氏蔵座幸一作。黒麹初垂れ。細かい文字は肝心な所だけ書き写す。使用米:熊本県産米。使用水:球磨川伏流水。蒸留:常圧蒸留。アルコール分:42度。内容量:720ml。醸造元:常楽酒造株式会社。

この初垂れ(ハナタレ)は醪を蒸留する過程で最初に取り出されるもので60度を越えていて、それを水を加えて42度にしてある。以前は杜氏などが飲む希少なものだった。今は、これを市販されたものを、私は受け取った。

720mlだから飲み出せばすぐに空っぽになってしまう危惧があった。何と言っても初垂れは気楽に飲める程安価なものではない。少なくとも、自分で買って飲める事能わぬ代物だ。

すぐになくなると言ってしまったが、それはとんでもない。同量の日本酒ならすぐになくなるとは思う。今温存している「出羽桜」はまだ飲まないでいる。アルコール分17度だから、すぐになくなるのが勿体ないからである。だが、さっき飲んだこの「黒麹初垂れ」は42度。途轍もない度数だ。

元来少ししか飲めない、私は所謂下戸なのだ。小さなグラスに注いで、口を付けた。口の中で、交響曲が響いた。今までの芋焼酎にはない、刺激的な味わいで、喉を過ぎる時に喉が焼けそうな感覚もある。独特な香りがあり、それは口の中でも、喉を通る時も、はっきりした濃さがある。飲んだ後、すぐに水を流し込んだ。

沢山飲めるものではない。これなら、きっと長く飲めると確信した。もう少し飲めるとは思ったが、昔の事が蘇った。あれは仲間と三宮に沖縄読谷村の姉弟が出した沖縄料理を食べさせてくれる店に行った時の事。少し値段が高かったが、10年ものの泡盛の古酒を飲んだ。初めての事だが、それは43度だった。フルーティーなものだから、私の飲酒能力を超えたのだろう。立とうとしたが、足がよろけて立ち上がれなかった。

ウインブルドン準決勝がナダルとジョコビッチの間で戦われている。拮抗している。が、もう少しで、決着が付く。それが終わると、今度は女子、アンゲリク・ケルバとセリーナ・ウィリアムズとの決勝戦が行われる。観るべきか観ざるべきか。寝る方が得策だろう。時間が微妙だし。明日は眠くては拙い。

ちょっとだけ、女子の戦いも観たい気もする。そして、もうちょっとだけ、この偉大な味の初垂れを口に含んでみようかと思う。そして、時間を見計らって、酔いの中で床に入ろう。「初垂れ」と道連れも良いではないだろうか。