光は、同じ風景やものを、その量や輝度に依って違ったものに変える。写真はその違いを、克明に映し出す。人間はそれを、敏感に感じるように出来ている。

昼過ぎ重い腰を上げ、ウオーキングに出掛けた。今はやっていないジョギングの、全く違わぬコースを歩く。4キロもない程の道のりだ。

昨日は出掛けて暫くすると雨が降り始め、それを感じるが早いか踵を返した。家に着く頃には既にポツリポツリだった雨滴は既に止んでいたが、再び歩く事はなかった。五月空はどんよりとして、周りの草木を目立たさなかった。

打って変わった今日の日和は五月晴れ。光が眩く、木々の葉が光に反射して、より若々しく、つるつるにして見せてくれていた。歩道側に植えられて続くシャリンバイの幅広の帯は、その葉っぱをも生き生きとさせ、今が盛りと白い可憐な花が咲き乱れていた。私は少し戻って、ガラケイを取り出すとその花を写した。こんな事をしたのは、ジョギングを始めてから7年になるこの時までなかった。

鶯の美しい声が聞こえた。ホーーーホケキョケキョ。えっ? 耳を疑った。もう練習の時は過ぎ、立派な声だったからだ。暫くして、また同じ流儀で鳴いた。仲間に自分を誇示する為に歌い方を変えたとは思えないが、私にはその可笑しさから、親しみを覚えた。姿は見えないが、またあの娘が鳴いている・・。

つるつるした楠木の葉も、アングルを決めて撮った。光と影が良い塩梅で、その状態を余計に若々しいものにしてくれたようだった。

陸上競技のトラックのようにスターバックスとローソンの距離までを2周して戻るのだが、2周目の時ローソンに寄って、ジャンボモナカのアイスを買った。それを食べ乍ら歩く。暫く行くと鳩のつがいが歩道の何かを忙しなく突いていた。もうジャンボも最後のモナカになっていて、この鳩に残りをやろうと思った。側を歩いても逃げなかったので、ほいと投げた。途端に2羽は逃げ去った。

またしても失敗だった。浅はかであった。両手を楽に振りながら歩いていたのだから、その指にあるモナカを揺れに任せて何気なく落としさえすればよかった。後の祭りではあるが、この年になって尚、こんな事の予測が立たなかったとは。情けなく、歩きながら2度も振り返った。モナカの残りも見えなければ、ハトの姿もなかった。

スウェーデンで行われている昨日の卓球世界団体選手権は、男子は準々決勝で韓国に敗れた。ほんの少しずつ負けた集積が、全体の敗北する事となった。韓国がやや強かった事だけはよく分かった。口惜しさが滲んでいた。

その反対に、女子も韓国と当たっていたが、急遽決められた韓国と北朝鮮が合同チームを組んだコリアと当たる事になった。韓国も北朝鮮も強いのに、その両国の合同である。それぞれの1位や2位だけが加われば、日本が不利に思えるのは自明の理だ。だが、日本の女子は、どうあれ精一杯やるだけだとその準決勝に臨んだ。

伊藤美誠は3-0で勝った。こうして数字だけ見ればかなり強くて勝ったのだと思ってしまうが、その中にはテレビを観ていればこその気力の勝利だった事が分かる。この戦いに勝てば決勝戦が待っている。日本の女子は、男子もその悲願を抱いていたが、何よりも金メダルを獲得する事を念頭に置いている。

次が石川佳純だった。相手は北朝鮮のキム・ソンイ。カットマンでありながらスマッシュなど技も巧みな選手で、石川選手も勝ったり負けたり、どちらかと言えば苦手な相手だった。5ゲームの試合で、3ゲーム先取だが、2-2となった。そこまでは流れだ。しかし、力は拮抗していた。勝つと負けるでは大違いだ。

11点先に取ったものがそのゲームをものにする。10-10でジュースになると、2点を先に取ったものが勝ちだ。その5ゲーム目で石川選手は9-10。相手が1点取れば万事休すだ。だが、観ている私も汗を握った。キム・ソンイのアウト。10-10となった。ここで石川選手にアンラッキーなエッジボールが返って来た。卓球台の角に当たって弾けるので、普通の軌道で戻らない。素早いイレギュラーな動きで落下する。殆ど取れないボールとなるのだ。それで10-11。マッチポイントを握られた。

そして13-12と、石川選手がマッチポイント。ここでまたキム・ソンイのエッジボールが。それで13-13。石川選手はここで失点し、13-14。絶体絶命のピンチ。それを撥ね退け、14-14とした。更に2点を先取して、この最難局をものにした。石川選手は普段はない程に飛び跳ねた。そして、その顔に涙があった。苦しさから脱却した思いからの解放された涙だっただろう。

壮絶なドラマを、この戦いに観た。平野美宇も3-1で勝ち、決勝進出となった。もうすぐ20時54分からテレビ大阪で世紀の一瞬と言ってもいい試合が観られる。相手は卓球の王者中国だ。銀メダルは確定しているが、日本女子には銀メダルは脳内にない。ここまで来たのは、金メダルを獲る為だ。長い長い道のりのすぐ先に、どんな結果が待ち構えているだろう。勿論簡単に金メダルをくれるような相手ではないが、確実に実力を縮めている事だけは確かだ。

まだまだ書きたい事は他にあるが、余りにも長くなり過ぎる。もうすぐ始まる中国との決勝戦を、しかと見届けたい。

ウオーキングの帰りにマルハチに立ち寄った。焼酎が切れているので、それを買う為だ。芋焼酎が1番好きなので、それを見ていた。すぐに買えばいいのだが、ずっと見ていた。1.8リットルのもの、900ミリリットルのもの、720ミリリットルのもの、180ミリリットルのものまである。1.8リットルより900ミリリットルや720ミリリットルのものが1.8リットルのものよりも高価だ。同量にすれば2倍以上高いのだ。

私はついに1.8リットルの「こくいも赤」に決めた。900円位の値段だったと思う。説明は卓球が始まるので避けるが、紙パックには「焼酎甲類乙類混和」と印刷されている。

ぶらぶら下げながら歩いていると、少し遠くで鶯が鳴いた。ホーホケキョケキョ。あ、あの鶯だ。

目には見えないが、正しくあの鶯に違いない。帰りにまた聞くとは。鶯に親しみを感じるなんて。1人でにやっとしながら、シャリンバイの花の咲く道をぶらりぶらりと歩いた。

画面は昨日のコリア戦を映し出している。まだ中国との試合は始まっていない。家に帰ってから「こくいも赤」を飲んだが、もうすっかり醒めてしまっている。さて、この芋焼酎を飲みながら、私は観戦しながら応援をする。夢を共有したい。

「頑張れ、日本!」