「YOSOMI好きなヤツ」とは、ブログで繋がっていた仲間の事だ。それが襖から飛び出して来て、旧知のように知り合いになった。そして、神戸で演奏し出して5年目が終わった。今年は、11月25日(日)13時30分から、生田文化会館で第6回目が予定されている。

今日(30日)も頗る寒い。どんな出で立ちでその仲間達と新年会で会おうかと、色々寒い部屋で脱いだり着たりしていた。ワイシャツを着てブレザーを着るのが一番いいが、下のTシャツの首回りが見える。どうも変だ。それで、最終的にはコンサートなどで演奏することにしているスタンドカラーのワイシャツにした。これだと、下に何を着ているかは分からない。

ズボンは渋い茶系にしようとそれを穿いてみたが、こりゃまたどうしたことだ。ズボンが小さくなったか私のお腹が大きくなったのか、前でボタンが止まらない。無理に止めると、お腹の肉が西瓜のように食み出る。それにTシャツやワイシャツを押し込むと、駄目だと言う事は誰にだって分かる。我慢より断念を選んだ。

下も演奏するときに穿く、黒いズボンにした。

靴はニューバランスのジョギングシューズを履いて出掛けようとしたが、この服装とはどうしても合わない。靴も、演奏会で専用に履く、革靴にした。そうこうしているうちに、4時半になった。オカリナを4本入れた鞄と譜面台を持って高速バスの停留所に向かった。

真っ白だったり灰色掛かっていたりした、それも大きな雲が、青空を埋めようとしている所だった。北側には、六甲山の山並みが続く。久し振りに見る山が、半分は懐かしく、半分は新鮮なものに見えた。

そごうデパートの北側に止まる筈のバスは、このバスに限って三宮東に止まった。ここから、余分に歩かないとJR三宮駅はやや遠い。西口は阪急電車の乗り場と繋がっている。今回は、阪急六甲駅で降りた。

MASSAと言うカフェで、10人が会う事になっている。PCで調べてはいたものの、すぐには分からない。6時半に集合だが、5時半には阪急六甲駅に着いていた。ずっと坂を上った。「六甲登山口」の標識が見える五叉路に来た。更に上に歩き、六甲学園まで来た。いくら何でもこれは遠すぎる。また、「六甲登山口」まで戻った。時間はたっぷりある。

店に電話をしてみた。周りの状況を伝えると、そこを南に下がった所にあると言う。

「6時30分が約束の時間ですね。もう少しお待ちください。すみません」

「いやいや、お店が分からないから早めに来て探す積もりだったのです。時間は幾らでも潰しますから」

そう言って、ゆっくり行ったり来たりした。余分な話だが、韓国語ではワッタガッタ(行ったり来たり)と言い、もう数十年前に関空で韓国人のおばちゃん達がハングルで話していた時、この言葉を聞いたのだ。その時はとても新鮮に響いた。今はハングルも薄らいではいるが、この言葉は忘れようにも余りにも強烈だった。

こんな風に話にも道にも逸れ乍ら、セブンイレブンでパウチに入ったビタミンなどの詰まったジェリーを口の中に押し込んだ。そしてまた、ワッタガッタ。その内に、阪急六甲駅に戻った。双六ではないけれど、振り出しに・・。

6時10分になっていた。すると、そらの陽さんと出会った。彼女は、スマホで場所を探している所だった。私は、

「任せなさい」

と言った。

誰かが駅から降りて来るだろうと思い、暫く待った。6時20分になり、もうよかろうかと歩き始めた。シマさんから携帯に・・。もう店にいると言う。待っていたのだが、奥さんとバスで来ていた。店に入るとその2人とオカリナママさん夫婦が来ていた。この2人も別ルートだった。

徐々に集まり出して、6人はテーブルに、4人はカウンターに座った。カウンターも6人座れるので、この店のキャパシティーは12人と睨んだ。メンバーはシマさん夫婦、Sさん夫婦、オカリナママさん夫婦とその仲間のNさんと、よく知っているのに名前を忘れてしまっているXさん、そらの陽さんに私の筈だった。

そして最後に入って来た11人目は、後からメールで増えた旨聞いたMKさん(女性)だった。私より若く、還暦を迎えたばかりのNさんよりは年配の女性だった。背に背負ったヴァイオリンのケースが素敵で恰好良かった。ヴァイオリンを弾く人だとは聞いていた。

これで貸し切りとなった。食べ物は各自の大きな仕切りのあるプラスチックの皿に取り分けた。MKさんが来る前に生ビールで乾杯していた。MKさんはその後だったので、もう1度乾杯をした。皆よく食べているのに、私は一向に入らない。昔はこんな筈ではなかったのに・・。それで、意を決して一気に食べた。

後は私は赤霧島のお湯割りにした。それを3杯飲む頃には、赤い顔も普通に引いていた。・・と思う。最初は何故か必ず赤く火照るのだ。

「えっ? 大阪フィルですか。夢のような人がこんな所に。MKさんですね」

「MKタクシーね」

「頭の回転がいいですね」

私は、驚いてそう言った。

「こんな方と一緒にいるなんて驚きです」

「私はハイだから。能天気ですよ」

「ハイは見るからに分かるけど、能天気は違いますよ」

大阪フィルハーモニーでヴァイオリンを弾いている人だったのだ。

以前にS.SさんはMKさんとコラボをし、その会場では所長さんはコントラバス、奥さんはビオラを一緒に弾いたそうだ。そんな関係や、オカリナママさん達のバンドが「ラ・クンパルシータ」を演奏した時、後からMKさんが入って、一緒に演奏を楽しんだらしい。そんな繋がりがあったとは。

「演奏は、楽しむ事よ」

とMKさんは言ったが、誰もがそう言うのだけれど、MKさんが言うと当たり前に思える事でも、凄い重みがある。独演会をして貰ってもいい程だった。東京フィルハーモニーのコンサートマスターのあの女性とも友達だと言う。私が以前友達関係で家まで連れて行って貰った、大阪フィルの第1ヴァイオリン奏者TIさんも勿論よく知っていると言った。

誰かが言ったが、まるで神様みたいな人がここにいる。オカリナママさんは、ヴァイオリンの音を聴いた時、鳥肌が立ったと言った。今、1メートルも離れていない所で、そんな人の音が聴けるとは思わなかった。

少し経って、MKさんはS.Sさんのピアノ伴奏で「チャールダーシュ」を弾いた。次すぐに「タイスの瞑想曲」が始まった。どんどん弾いて行く。それから、オカリナママさん達の「ラ・クンパルシータ」が始まった。ヴァイオリンが途中から切ない音を入れる。これがヴァイオリンなのだと思った。次から次へと楽団の演奏は続く。ヴァイオリン、ピアノ、ピアニカ、ギター、オカリナ。私はじっと聴いては拍手をした。

その内そらの陽さんが加わり、「ふるさと」を一緒に演奏して欲しいと言った。彼女は、オカリナではなくタケリーナで吹いた。私は気取っている訳ではないが、殆どソロでしか吹かないので、そのまま聴いていた。感動しながら、拍手をしながら・・。

それでも、ここで行動を起こさなければ、オカリナも譜面台も持って来ているのに、オカリナも持つ事すらせずに帰る事になる。

「あのぉ、一緒にやって貰えませんか」

とMKさんに言った。気楽に、何でもすぐに演奏して貰える人だった。つまり、大阪フィルで指揮者の指揮棒を見ながら演奏している人だ。そんな人が、S.Sさんの伴奏でオカリナとのデュオをしてくれるのだ。すぐに、ピアノが鳴り出した。「白鳥」。

トリプルオカリナのイカロスで吹いた。「白鳥」だけはこのオカリナでなければ私は吹けない。他のトリプルでは吹きたくない程、イカロスで吹き続けて来たからだった。MKさんと並んで、至近距離で吹いた。大阪フィルと並んで吹いている、そんな気持ちだった。

ヴァイオリンが安定したクオリティの高さで奏で、私はその音に魅せられて吹く。ピッチなど、余り考えなかった。きっと揃っているだろうと信じながら、ピアノの伴奏にも耳を傾ける余裕が何故かあった。隣りは日本の代表的交響曲楽団大阪フィルのヴァイオリニストだ。

緊張もしなければ、時々目を見つめ合いながら吹く。これは決して私の余裕ではないが、そんな演奏が出来るようにMKさんが仕組んでいると思った。大船に乗ったような感覚だった。安心して吹く事が出来たMKさんの力量に驚く。

「もう1曲、私が作った拙い曲ですがお願いします」

と言って、すぐに譜面台を組み立てた。

「『モンゴルの少女』です」

自分の作曲だが、それでも間違ってはつまらない。MKさんに楽譜を見て貰う事に重きを置いた積もりはなかった。これは、黄緑色のアルトC管で吹いた。このオカリナでなければ、何故か気分が出ないのだ。自分勝手な拘りと言うものなのだろうか。

ヴァイオリンが加わっただけで、厚みと幅が出て来た。何て素敵なのだろう。全体のテンポがやや遅かったのか酒の所為か、最後は息切れがした。それでも満足だった。握手をして、お礼を言った。こんな事があっていいのだろうか。こんな日があっていいのだろうか。今日は、予期せぬ、こんな日だったのである。MKさんは、「モンゴルの少女」が演奏し終わってから、最初の部分を正確に耳コピで弾いていた。

するとすぐに、「悲しい酒」を弾き出した。おっと、私も三連のオオサワオカリナを取り出して、途中から勝手に、一緒に吹いた。それも酒の力か。演歌も吹く事が出来て、今日は何て日だ。暫くすると豚汁が出て、よく考えられた量のご飯が出て、その頃になると食べない人も出て来るからだろう。

S.Sさんに言われていて、「アメージング・グレイス」で、ピアノ伴奏も付いているのを選んで皆の分を用意していた。それを配って演奏した。

そろそろお仕舞いとなり、誰も帰りたくはなかったかも知れないが、店の都合もあったのだろう。それでも、3時間も楽しめたのだ。そんなに居たのに、あっと言う間とはこの事か。美味しい食べ物。綺麗な女主人。我々が楽しかったのは、この女将さんの支えがあった事も十分に感じられる。女将さんのお母様が聴いて下さっていたとは、これも嬉しいハプニングだった。

上に行く者、下に降りる者、MKさんとも皆名残惜しそうに話しながら、店の前で別れた。私達数人は阪急六甲駅に向かって歩いた。三宮に着くと、無性に粒餡の入った御座候が食べたくなってそれを買った。そらの陽さんはJRに乗り、私は高速バスに乗るべく、道を大きく隔てたそごうの前のバス停へと歩いた。

大きかった月も空高く小さな姿を皓皓と輝かせていた。明日は見事な皆既月食のショーが見られる事になっている。スーパームーンの月食とは、どれ位感動するものなのだろう。今日の大阪フィルMKさんとの出会いとヴァイオリンの感動を、この皆既月食と重ねて感動してみようと思う。

感動は、胸が打ち震える事であり、その中に異物を迎え入れる事がない。明日は幸いにして、今の所晴れる見通しとなっている。

今年の「YOSOMI好きなヤツ」の演奏会の日時はブログの頭に書いた。今日の話で、大阪フィルのこのMKさんに演奏して貰える事が実現しそうなのだ。まだまだ先の事なので、予定は未定だが、その時は更に沢山の人に聴きに来て貰いたく、今から、そんな予告をさせて頂きたいと思う。