午前中はオカリナの練習日。去年の12月の発表会では、私はその1つ、「SAKURA」をトリプルオカリナで吹いた。私にその楽譜を提供してくれた女性の為に、喜んで貰おうと思って吹いた。今日の練習日に、その彼女は、「今年の発表会では、『SAKURA』が吹けるようにしたい」と、決意を会報(Kaさんが毎月発行し、この会報で56回目)に書いていた。
発表会と言うが、それは今年の12月だから、約1年を掛けての気合いの程が知れる。皆の今年に掛ける思いが、それぞれに綴られている。
もう1人の女性が、昨年「北の旅人」の楽譜と音源を皆にくれていた。どうしても、私に吹いて欲しいと言っていて、年が代わったら必ず吹くと公言していた。きっと、その言葉を忘れてはいなかっただろうと思う。「SAKURA」を吹いて「北の旅人」を吹かなかったら、きっと叱られるだろう。
基本練習を、今日は沢山やった。4分の4拍子で、スラー、テヌート、スタッカートと来て、その後は三連符、16分音符のブロックが4つずつ。結構、タンギングも、変化も、難しい。これらを含む曲と言えば「アランフェス協奏曲」がある。納得して貰う為に、楽譜をローソンに人数分コピーしに行った。
「この曲に、皆さんが今練習した基本が入っています。この曲は私は好きですが、私の実力では、すぐに吹ける訳ではありませんでした。1ケ月で出来なかったら3ケ月。それでも駄目なら6ケ月。まだ出来なかったら1年掛かっても挑戦してみて下さい。値打ちのある曲ですよ」
と。
「一度にやろうと思わなくていいです。難しいと思って放棄したら、二度と演奏出来るようにはなりません。1小節、2小節と言う風に少しずつやっていたら、いつしか吹けるようになっている自分を発見出来るでしょう」
「ボレロ」や「春の海」を練習し出した頃の自分を思い出しながら、そう言った。いつか、「聴いて下さい」と言って来る人がいるのではないかと、楽しみにしている。村治佳織のギターから「アランフェス協奏曲」が聴こえて来る。
「北の旅人」を提供してくれた女性は、「とても満足した」と返した。何故か、私が吹くのを聴きたいと言った。
私は音楽の専門家でもなく、音楽をやって来た者でもない。人に教えるなんて更々出来ない。単にオカリナが好きで、オカリナ吹きに過ぎない。それが、Kaさんに「教えて貰えないか」と言われ考えた。それで現況に至っている。もう4年を数える。こんな爺さんでいいのかと、古稀を越えた爺さんは、ゆっくり首を回してみる。
さて、時間は過ぎ、4時半に家を出た。元町の大丸デパートの北側に、割烹三ツ輪はある。ここの料理を楽しみにして来た。最後はメインの牛肉が4切れ、一人ひとりに小さな平べったい、縁は皿のように反った鉄板で焼くようにと出される。焼肉屋さんのように決して豪快ではない。だがその4切れが、無性に愛しいと感じられるのだ。最後ばかり書いたが、最後のデザートは、これがまたすっきりと料理全体を終えられる合図。丸いアイスクリームが絶妙だ。
最初に終わりを書くのは、それが印象的だったからである。この会はもう数十年続くが、最初は「新年を祝う旅」と名付け、大先輩からそういう会をするように言われた。数台の車を連ね、色々な地を訪ねた。それも、必ず神社仏閣があった。大先輩Nさんの薀蓄に耳を傾けながら、そんな旅が楽しみだった。
そしていつ頃からか、それは「新年を寿ぐ会」と誰かが名称を変えて、このような会になった。人数も随分減って、今日(13日)は11人の出席。その大先輩も、点滴が最後の日に当たり、今回の出席は叶わなかった。
この会では、もう1人大先輩のTさんがいて、人脈教養話術も並の人ではない。私達は、この2人の良き先達に恵まれた。
再会を楽しみ、傘寿となるこのもう1人のTさんの変わらぬ元気な姿に勇気付けられる。ビール、酒、焼酎で和みは続く。6時からの会は、8時を回った。店の人に終わりの時間を告げられ、皆重い腰を上げた。
外は寒く、冷える。東へ西へ北へと散った。北と言えば、もっと寒い所に住んでいるシマさんも一緒である。
三宮のJR西口の改札を潜ると、ここでは2人は東へ、2人は西へと電車に乗った。Tさんと私は、西へと向かった。
2人は垂水駅で降りた。改札を出た所でもう1軒行く事になった。Tさんはここからタクシーで帰るのだが、行ったのは東口側にある「王将」だった。私が案内した。生ビールに餃子を抓み乍ら、一番奥の席で話しは止まらない。久し振りに懐かしい語らいをした。と言うよりも、色んな話を聞いた。
バスの最終は10時30分頃。村田英雄ではないが、「王将」を出たのが10時10分だった。バス停でTさんと別れ、大先輩は西口のタクシー乗り場へと歩いて行った。
見上げた明度は限りなく黒に近い空に、何故か星はたった1つ見えるだけで、それも輝きはなく暗く、瞬かなかった。だが、心の中にも空があり、その空は真っ黒な帳で、多くの星が輝きの光は変わらねど、まるでクリスマスの電飾のようにチカチカと瞬いている。