まだ日は沈んでいない。鳥の群れか? そうではない。それは蚊の群れだった。飛蚊症である事を忘れていた。その時、悠々と、大きな黒い鳥が一羽、大空を飛んで行った。
ジョギングの途中だったが、一番遠いターンをする所にローソンがある。途中で店に入る事はないが、「北秋田」がどこのローソンにもあるかと言う疑問からだった。秋田の酒は吞んだ。新潟の酒も気になっていて、ジョギングの前に買ってある。値段はどちらも税込み998円だ。
このローソンにも、あっちのローソンと同じ720mlの酒がある。新潟の酒は数種類置いてある。税込みで1,008円のもある。998円と1,008円は見た目には開きがあるように見えるが、10円の差だ。新潟の酒でも、「久保田 千寿」は1,800円もしていた。
夕焼けの下方は海が焼けているように見え、その上は夕焼け空のようだった。やや薄くはあるが、焼けた空は美しい。これから起きる事が、待ち遠しい序曲となった。
最近4キロ弱走って30分を切る事はない。ジョギングを始めた1、2年は、大嫌いで不得手も不得手なジョギングが、最高26分で走れる事もあった。だが、走っていない数年が入り込むと、中国の春節祭から再び始めたジョギングで35分位だった。最近33分になったと思っていたら、今日はローソンで油を売っていたにも関わらず、31分で帰っていた。
半分も走っていると、Tシャツに長袖を着ただけなのに汗でびしょびしょになる。風呂に入ると汗を流した。上がると2本の瓶を炬燵板の上に並べた。ラベルがなかったら、どちらも緑色の同じ瓶だ。人生経験の第一歩を踏んだ幼い頃の私には、水が緑色なのだろうとしか思えなかっただろうような瓶だ。ガラスのお猪口を2つ並べる。
新潟のこの酒は「越後桜」と言う。越後桜酒造株式会社(新潟県阿賀野市山口町1-7-13)と書いてあった。毛筆の文字は矢張り上手いが、こちらの方がより行書になっている。墨はべたつく事もなく、普通の墨色だ。だが、私は楷書でべたつく前衛が好きなので、文字は「北秋田」に軍配を上げる。
どちらも美味かった。「北秋田」はさらっとした上善如水のようなフルーティーさが感じられた。「越後桜」は似たような味だが、ねっとりと口に絡んだ。だからどうだと言う話だが、結局は好みの差だろう。ご飯にしたりパンにしたり、私にはどちらも旨かった。
まだまだローソンには石川県や兵庫県の酒もある。我が「山田錦」もあるのだ。すると、秋田と新潟で終わらないだろう私の比較癖が頭を擡げるのである。
この720mlは皆大体1,000円だ。久保田も高いが、新潟と言えば最強の酒所と昔から記憶している。「雪中梅」もこの量で5,000円になるものもある。「越乃寒梅」となると8,000円にもなる。この酒造所(越乃寒梅)のものに焼酎もある。それが7,000円とは驚きだった。尤も、1升瓶で10万円とか上には上があるけれど、今は720mlでの話だ。
暫く、720mlを味わってみようと思っている。
だいぶ「越後桜」も減って来た。まるで生きているかのように、緑色の瓶を透かした表面は、炬燵板に与える私の振動で揺れている。お好み焼きが、今日のは量といい味といい、とても美味かった。やっぱりまたパンが食べたくなった。食パンしかない。太るのは丸分かりだが、それでも食べたい。私の食べ方で。
先ず食パンをオーブントースターで、美しい焦げ目が付くまで焼く。フライパンで目玉焼きを作る。4枚入りの薄切りハムを4枚軽く焼く。好みに依っては、生のままでも良い。食パンにマーガリンを塗って、4枚のハムをはみ出ても良いので四葉のクローバーのように乗せる。その上に軽く塩を振った目玉焼きを乗せる。そして、牛乳を飲みながら食べると言う訳だ。
前は焼いた食パンにマーガリンを塗り、蜂蜜も塗り、海苔の佃煮を塗り、フライパンに乗っている目玉焼きの上にその食パンを押し付け、それを底から掬って皿に乗せて食べるようにしていた。
これで止めれば体重も現状維持だろうが、私は思い出したら止められない。まるでかっぱエビセンやポテトチップスのようだ。もっと面白く書く積もりだったが、敬体で書いてみたいし、物語風にもなるし、何しろ長くなるのが一番困るので。
あっこの酒も、3回金賞は受賞しているが、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2015」では、最高金賞を獲っている。
しつこいようだけど、「越後桜」を飲んだ後「北秋田」を飲むと、おーっと声が出そうな覚醒されたような味になる。人間と一緒で、固定した見方は良くないと思う。懐を大きくして見ると、この2つの酒の振り子のように、大きな振り子となって、今迄分からなかった部分まで、振れ幅に拾われて行く。旨い! どちらも旨い!