この機会を逃すと1年先になる。桜の花を観たかった。

近くの神社の横の桜の木の下で暫くじっと眺めていたいと思ったし、明石公園の桜のひとひらひとひらが散るのを目で追いたいと思った。だが、行ったのは加古川の中流近くの桜の小道だった。

3歳の娘と、昨日お食い初めをしたばかりの孫娘と、その母親、つまり私の娘と嫁さんの5人での鑑賞への旅であるが、35キロ位離れていたから、それも私には旅と言える。

3メートルばかりの道幅の両側に、染井吉野の並木が続く。それはそれは長い道で、桜の本数も最初は100本ばかりかと思ったが、帰りに車を走らせると、700本近くはあるように感じられた。

その1列に並んだ1本1本の桜の木と木の間には、何人かずつの塊が席を確保して花を楽しんでいた。我々も1ヶ所にビニールシートを敷いた。目の届く所に加古川は見えないが、すぐ横が土手になっているその斜面には、オオイヌノフグリやカラスノエンドウが咲いていた。下にはタンポポ、菜の花、ホトケノザが群生している。

早速正午を過ぎた昼食となった。大きなプラスチックの入れ物には、おにぎりが何個も。もう一つの入れ物には唐揚げ、卵焼き、キュウリを生ハムで巻いたものが入っていた。これに牛肉の甘辛煮が入っていたら私には完成形だったのだが、それは今回はない。

桜の花びらがひらりひらりと散る姿に、孫は好奇に満ちた奇声を挙げた。

食べ終わると、ちょっと斜面の急な土手に孫が下りてみたいと言う。転げ落ちると一大事なので手を繋いで慎重にずり降りる。バッタの子どもやテントウムシに興味津々だった。深い草叢にカエルが動いていると思い、それを追った。執拗に追っていてハッとした。尻尾が見えたからだった。向かって来る筈もないが、逃げてくれてホッとした。トカゲだったのである。

この土手の上の桜の種類は、江戸彼岸、大島桜、染井吉野、八重紅枝垂、思川であるが、八重紅枝垂と思川は4月の中頃が見頃だと言う。が、すっかり満開だった。

孫は、タンポポの綿帽子を口で吹いて飛ばそうとしたが、息が弱くて飛ばない。私が吹くと、途端に全部飛んでしまった。夢も何もあったものではないが、孫と歩く田舎の春の土手の下の道だった。

後は何処に行ったかは省略するが、桜の並木は頭に残っている。沢山の人で賑わっていたが、皆良い場所はよく知っていると感心した。ここは穴場の一つになった。