昨日読んだ本の、私が感じた部分を抜粋して、その証として残しておこうと思った。

2012年10月25日第一刷発行

私が読んだのは、11月19日第4刷発行のものだった。

「世界から猫が消えたなら」川村元気著

目次

月曜日 悪魔がやってきた

火曜日 世界から電話が消えたなら

水曜日 世界から映画が消えたなら

木曜日 世界から時計が消えたなら

金曜日 世界から猫が消えたなら

土曜日 世界から僕が消えたなら

日曜日 さようならこの世界

 家に帰るとアロハがニコニコしながら待っていた。そしてウィンク(といってもやはり両目をつぶっているのだが)をして、映画を消した。
 アロハが映画を消すそのときに、僕は母さんのことを思い出していた。いや母さんというよりは、母さんが好きだったイタリア映画のことを思い出していた。
『道』という古いイタリア映画だ。
 ザンパノという粗野な旅芸人と、その男に買われて共に旅する気弱な女の子の物語だった。
 ザンパノはジェルソミーナのことを大切に想いながらも、うまく接することができず、ひどい仕打ちを続ける。それでもジェルソミーナを捨ててしまう。
 数年後、海辺の街にたどりついたザンパノは、そこでかつてジェルソミーナが歌っていた歌を口ずさむ女に出会う。そこで彼はジェルソミーナが死んだことを知る。ジェルソミーナは死んだ。でも彼女の歌が残った。ザンパノは彼女の歌を聴くことで、彼女を愛していたことに気付くのだ。そして浜辺で彼は泣く。泣いても彼女は戻らない。彼女のことを愛していた。なのに大切にすることができなかった。
 気付くのが遅すぎる、と僕はいつもその映画を観ながら腹立たしく思った。
「ほとんどの大切なことは、失われた後に気付くものよ」
 母さんはその映画を観ながらよく言っていた。(116~117ページ)


‘死ぬまでにしたい10のこと’

 便せんの2枚目には大きく(でもとても美しい字で)そう書かれていた。
 思わず拍子抜けする。親子でおんなじことしてら。僕は笑いながら、2枚目を見る。

もう私の命は、あとわずかだと思います。
だから、私が死ぬまでにしたい10のことを考えてみることにしました。
旅行に行きたい、おいしいものを食べたい、オシャレしたい・・いろいろ書き出していくうちに、私は思いました。
私が死ぬまでにしたいことは、本当にそういうことなのかと。
それで改めてゆっくりと考えてみたら、気付いたことがありました。
私が死ぬまでにしたいことは、全部あなたのためにしたいことだったのです。
あなたの人生はこれから何年も続くでしょう。
辛いことや、悲しいこともたくさんあると思います。
だから、私はあなたがこれから生きていく上で、辛くなったり、悲しくなったりしたときに、それでも前を向いて明日を生きていけるように、あなたの素敵なところを10個伝えておきたいと思います。
そしてこれをもって、私の‘死ぬまでにしたい10のこと’に代えさせてもらいます。

あなたの素敵なところ。

あなたは人が悲しいときに、一緒に泣くことができる
あなたは人が嬉しいときに、一緒に喜ぶことができる
そのかわいらしい寝顔
笑うとできる、小さなえくぼ
不安なときに、ついつい鼻をさわってしまう、その癖
必要以上に周りに気をつかってしまう、その性格
私が風邪を引くと、いつも家事を張りきってしてくれたあなた
私が作った料理を、本当に美味しそうに食べてくれたあなた
いつもすぐに悩んで、考え込んでしまうあなた
でも悩んで、悩んで、最後には正しい答えを出すことができるあなた

あなたの素敵なところ、これだけを忘れずに生きてください。
それさえあればあなたも幸せだし、あなたのまわりの人もきっと幸せだと思うから。
いままでありがとう。そしてさようなら。
いつまでもあなたの素敵なところが、そのままでありますように。

涙が、手紙の上にポタポタと零れた。
大切な手紙を濡らしてはいけない。そう思って必死に涙をぬぐったが、次から次へと涙が溢れてきて手紙を濡らす。母さんとの思い出が、涙と一緒に溢れ出てくる。(183~185ページ)


朝起きると、キャベツが隣で眠っていた。
フーカフーカとした感触。トクトクという心臓の音。
世界から猫は消えていなかった。
つまりそれは、僕がこの世界から消えることを意味している。

世界から僕が消えたなら。
想像してみる。それが、どれほど不幸なことなのだろうか。
人である以上、誰もがやがては死ぬ。致死率は100パーセントだ。そう考えると死がイコール不幸だとは言えない。その死が幸せか不幸せかということは、どう生きたかということと関連するのだ。
「何かを得るためには、何かを失わなくてはね」
 母さんの言葉を思い出す。
 僕は自分の命と引き換えに、世界から電話と映画と時計を消してみた。
 でも猫は消せなかった。
 猫の代わりに自分の命を諦めるなんて、馬鹿げた男だと思われるかもしれない。
 その通りだ。なんともバカバカしい。でも僕は誰かから何かを奪って、生き延びることが幸せだとは思えなかった。それが太陽だって、海だって、空気だって、猫となんら変わりなく思えた。だから僕は世界から何かを消すのをやめた。僕は僕なりに、自分に与えられた他人よりも少し短い寿命を受け入れることにしたのだ。そして間もなく、僕は死ぬ。(196~197ページ)


世界から、もし猫が突然消えたとしたら。
この世界はどう変化し、僕の人生はどう変わるのだろうか。
世界から、もし僕が突然消えたとしたら。
この世界は何も変わらずに、いつもと同じような明日を迎えるのだろうか。

くだらない妄想だ、とあなたは思うかもしれない。
でも信じて欲しい。
これから書くことは僕に起きたこの7日間の出来事だ。
とても不思議な7日間だった。

そして間もなく、僕は死にます。

なぜこうなったのか。
その理由について、これから書いていこうと思う。
きっと長い手紙になるだろう。でも最後まで付き合って欲しい。

そしてこれは、僕があなたに宛てた最初で最後の手紙になります。
そう、これは僕の遺書なのです。(4~5ページ)


感想は書かない。いや、書けない。1979年に生まれたまだ若い著者が記した感性豊かなこの一冊の本が、私に自分の生と死を執拗に考えさせたからである。